348 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(7)
しおりを挟む
“……”
その巨大すぎるイメージと言葉に、ナイアーラトテップは沈黙しか返せなかった。
その沈黙の中で、一つの感情が大きく湧き上がってふくらんでいた。
それは怒り。
馬鹿にされている気がした。『この世界の頂点』という言葉と比較して見下すために、そうとしか思えなかった。
ならば――と、ナイアーラトテップは思った。
そしてナイアーラトテップはそれを直後に叫んだ。
“ならば、貴様を倒してその巨大な地位もなにもかも、全て奪う! いま、ここでッ!!!”
その叫びと共にそれはついに始まった。
未知の怪物同士の戦いがついに始まった。
先に動いたのはやはりナイアーラトテップ。
叫びと共に両手を前に突き出す。
花の形を作るように、両手の平を開いたまま手首の部分を合わせる。
しかしその指は触手。花のようでもおぞましい。
間も無く、そのおぞましい花は色を変え始めた。
光の魔力がみなぎり、白く輝き始める。
直後、その白の中に新たな色が混じり始めた。
それは赤。そして薄い青と黄色。
赤は炎の魔力。薄い青と黄色は電撃魔法の色。
血管が浮き出るように、赤と青と黄色の線が手の平を埋め尽くす。
その色とりどりの輝きの中で、巨大な赤白い光の球が巨人の両手の平の中に生み出された。
球は繭に包まれていた。大量の糸が巻き付いていた。
繭は激しく波打っているように見えた。
しかし違った。波打っているように見えたのは錯覚。それはほとばしる雷であった。
大量の電撃魔法の糸が何重もの輪を作り、球を拘束しつつ、手の平との間に強い反発力を生み出していた。
電撃魔法特有の炸裂音が
そして巨人はその拘束を直後に解いた。
手の平の上でぶつかり合い、押し合っていた反発力によって球が前に進み始める。
その反発力には電撃魔法の力だけでは無く、光魔法同士の力も利用している。人間が光弾を発射する時もそうしている。
そして球の後方には小さな穴がいくつも開いており、そこから漏れ出す魔力が空気と反応した時に生じる衝撃波で推進する。
しかし、これだけ巨大であるとそれらの力だけではぜんぜん足りない。空気抵抗に勝てない。
だから大量の精霊を使って前から引っ張る。
その役を担う精霊はドラゴン。
指のような触手の中から皮膚を割いて生まれたドラゴン達が、馬車馬のように光弾を引いて運び始める。
一方、アザトースも同じように脳みその真ん中にある口から巨大な光弾を生み出し、発射していた。
発射技術はほぼ同じ。違いは引いている精霊が巨大サメになっているだけだ。
そして二つの巨大な光弾は双方を結ぶ線上の中心でぶつかり合った。
その巨大すぎるイメージと言葉に、ナイアーラトテップは沈黙しか返せなかった。
その沈黙の中で、一つの感情が大きく湧き上がってふくらんでいた。
それは怒り。
馬鹿にされている気がした。『この世界の頂点』という言葉と比較して見下すために、そうとしか思えなかった。
ならば――と、ナイアーラトテップは思った。
そしてナイアーラトテップはそれを直後に叫んだ。
“ならば、貴様を倒してその巨大な地位もなにもかも、全て奪う! いま、ここでッ!!!”
その叫びと共にそれはついに始まった。
未知の怪物同士の戦いがついに始まった。
先に動いたのはやはりナイアーラトテップ。
叫びと共に両手を前に突き出す。
花の形を作るように、両手の平を開いたまま手首の部分を合わせる。
しかしその指は触手。花のようでもおぞましい。
間も無く、そのおぞましい花は色を変え始めた。
光の魔力がみなぎり、白く輝き始める。
直後、その白の中に新たな色が混じり始めた。
それは赤。そして薄い青と黄色。
赤は炎の魔力。薄い青と黄色は電撃魔法の色。
血管が浮き出るように、赤と青と黄色の線が手の平を埋め尽くす。
その色とりどりの輝きの中で、巨大な赤白い光の球が巨人の両手の平の中に生み出された。
球は繭に包まれていた。大量の糸が巻き付いていた。
繭は激しく波打っているように見えた。
しかし違った。波打っているように見えたのは錯覚。それはほとばしる雷であった。
大量の電撃魔法の糸が何重もの輪を作り、球を拘束しつつ、手の平との間に強い反発力を生み出していた。
電撃魔法特有の炸裂音が
そして巨人はその拘束を直後に解いた。
手の平の上でぶつかり合い、押し合っていた反発力によって球が前に進み始める。
その反発力には電撃魔法の力だけでは無く、光魔法同士の力も利用している。人間が光弾を発射する時もそうしている。
そして球の後方には小さな穴がいくつも開いており、そこから漏れ出す魔力が空気と反応した時に生じる衝撃波で推進する。
しかし、これだけ巨大であるとそれらの力だけではぜんぜん足りない。空気抵抗に勝てない。
だから大量の精霊を使って前から引っ張る。
その役を担う精霊はドラゴン。
指のような触手の中から皮膚を割いて生まれたドラゴン達が、馬車馬のように光弾を引いて運び始める。
一方、アザトースも同じように脳みその真ん中にある口から巨大な光弾を生み出し、発射していた。
発射技術はほぼ同じ。違いは引いている精霊が巨大サメになっているだけだ。
そして二つの巨大な光弾は双方を結ぶ線上の中心でぶつかり合った。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件
九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。
勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。
S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。
そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。
五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。
魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。
S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!?
「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」
落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ラグナ・リインカーネイション
九条 蓮
ファンタジー
高校二年生の海堂翼は、夏休みに幼馴染と彼女の姉と共に江の島に遊びに行く途中、トラックの事故に巻き込まれてしまい命を落としてしまう。
だが彼は異世界ルナティールに転生し、ロベルト・エルヴェシウスとして生を受け騎士団員として第二の人生を歩んでいた。
やがてロベルトは18歳の誕生日を迎え、父から貰ったプレゼントの力に導かれてこの世界の女神アリシアと出会う。
彼女曰く、自分は邪悪なる者に力を奪われてしまい、このままでは厄災が訪れてしまうとのこと。
そしてアリシアはロベルトに「ラグナ」と呼ばれる力を最期に託し、邪悪なる者から力を取り戻してほしいとお願いして力尽きた。
「邪悪なる者」とは何者か、「厄災」とは何か。
今ここに、ラグナと呼ばれる神の力を持つ転生者たちの、旅路の記録をここに残そう。
現在なろうにおいても掲載中です。
ある程度したら不定期更新に切り替えます。
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。
Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。
そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。
しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。
世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。
そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。
そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。
「イシュド、学園に通ってくれねぇか」
「へ?」
そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。
※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。
神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる