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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(7)

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“……”

 その巨大すぎるイメージと言葉に、ナイアーラトテップは沈黙しか返せなかった。
 その沈黙の中で、一つの感情が大きく湧き上がってふくらんでいた。
 それは怒り。
 馬鹿にされている気がした。『この世界の頂点』という言葉と比較して見下すために、そうとしか思えなかった。
 ならば――と、ナイアーラトテップは思った。
 そしてナイアーラトテップはそれを直後に叫んだ。

“ならば、貴様を倒してその巨大な地位もなにもかも、全て奪う! いま、ここでッ!!!”

 その叫びと共にそれはついに始まった。
 未知の怪物同士の戦いがついに始まった。
 先に動いたのはやはりナイアーラトテップ。
 叫びと共に両手を前に突き出す。
 花の形を作るように、両手の平を開いたまま手首の部分を合わせる。
 しかしその指は触手。花のようでもおぞましい。
 間も無く、そのおぞましい花は色を変え始めた。
 光の魔力がみなぎり、白く輝き始める。
 直後、その白の中に新たな色が混じり始めた。
 それは赤。そして薄い青と黄色。
 赤は炎の魔力。薄い青と黄色は電撃魔法の色。
 血管が浮き出るように、赤と青と黄色の線が手の平を埋め尽くす。
 その色とりどりの輝きの中で、巨大な赤白い光の球が巨人の両手の平の中に生み出された。
 球は繭に包まれていた。大量の糸が巻き付いていた。
 繭は激しく波打っているように見えた。
 しかし違った。波打っているように見えたのは錯覚。それはほとばしる雷であった。
 大量の電撃魔法の糸が何重もの輪を作り、球を拘束しつつ、手の平との間に強い反発力を生み出していた。
 電撃魔法特有の炸裂音が
 そして巨人はその拘束を直後に解いた。
 手の平の上でぶつかり合い、押し合っていた反発力によって球が前に進み始める。
 その反発力には電撃魔法の力だけでは無く、光魔法同士の力も利用している。人間が光弾を発射する時もそうしている。
 そして球の後方には小さな穴がいくつも開いており、そこから漏れ出す魔力が空気と反応した時に生じる衝撃波で推進する。
 しかし、これだけ巨大であるとそれらの力だけではぜんぜん足りない。空気抵抗に勝てない。
 だから大量の精霊を使って前から引っ張る。
 その役を担う精霊はドラゴン。
 指のような触手の中から皮膚を割いて生まれたドラゴン達が、馬車馬のように光弾を引いて運び始める。
 一方、アザトースも同じように脳みその真ん中にある口から巨大な光弾を生み出し、発射していた。
 発射技術はほぼ同じ。違いは引いている精霊が巨大サメになっているだけだ。
 そして二つの巨大な光弾は双方を結ぶ線上の中心でぶつかり合った。
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