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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(2)
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どうしてこんなことに。男はそんな思考を繰り返していた。
どうして私達を襲う? そんな思いも時折まじっていた。
港にある倉庫の中で男は身を震わせながらそんな言葉を繰り返していた。
しかし答えは浮かばない。何の声も返ってもこない。
この倉庫にに逃げ込んだばかりの時は外は悲鳴でうるさいほどだったが、今はとても静かだ。
不気味なほどに静か。
この静けさはおかしい。
悲鳴が途絶えないほどのことが起きたばかりなのに、なぜこうも静かになる?
この静けさはまるで――
その先を男はあえて言葉にしないようにしていた。
考えれば恐怖が強くなるからだ。
しかしそれは脳の奥から這い上がるように湧き上がってきた。
まるで――
(まるで、生存者を探すために息をひそませているかのような――)
そんなことを思ってしまった直後、
「――っ!!」
その恐怖は現実のものになった。
足音が聞こえる。
倉庫の外。近づいてきている。
直前まで人の気配など感じられなかった。
やはり、物音を立てずに探していた?
しかしなぜ?!
彼らは教会の兵士。そう見えた。そのはずだ。
教会の者がなぜ私達を襲う?!
私達は、いや、私は特に教会に尽くしてきた!
なのになぜ?!
……
やはり息子が正しかったのだろう。
息子は、アルフレッドはたしかこう言っていた。
あいつらの頭の中は怪物に乗っ取られている、と。
私は信じなかった。
ベアトリスが少し変わってしまっても信じなかった。
あいつらは乗っ取った記憶を頼りに上手く真似をする、アルフレッドが言ったその言葉を私は信じなかった。
信じたくなかった。
商売は上手くいっていた。
教会はなぜか海の商売に強く、私達はその強みに助けられていた。
だから信じなかった。目を背けた。
そして今日、真実が突き付けられたのだ。
私達はいいように使われていただけなのだ。
教会からの頼みでよくわからない仕事をやったこともある。
しかしもう用済み、そういうことなのだろう。
だが、誰がこんな展開を予想できる?! 港町の住人を全滅させるなんて、そんなこと、誰が考える?! なんのために?! 何の得がある!?
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「!!」
その感情は即座に消えた。
足音が倉庫の中に入ってきたからだ。
そして間も無く、アルフレッドの父親も同じような悲鳴を上げた。抵抗の音は倉庫の外にまで響いたが、意味は無かった。
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