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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十一話 そして聖域は地獄に変わる(8)
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バークにはわかっていた。
呼んでも声は返ってこないことが。
よく知っている二人の気配を感じ取れなかったのがその証拠。
もう別人なのだ。中身が違うのだ。乗っ取られているのだ。
それでもバークはかすかな希望に望みをかけていた。
が、返事は返ってくることは無く、送られてきたのは純粋な殺意だけであった。
「……っ」
かすかな希望すら残っていない事実にバークの表情が悲しく歪む。
その悲しみにベアトリスは共感していた。
あれは助けられない、もう手遅れ、ベアトリスはそう思っていた。
なぜなら、二人とも死体同然の状態だからだ。
アーティットの体にはあちこちに深い傷がある。その多くが重要な臓器に達してしまっている。
クラリスも似たようなものだ。防具の下から贓物がたれているのが見える。
二人とも力尽きる寸前まで戦っていたことがわかる。
そんな二人を敵は乗っ取って無理矢理動かしているのだ。
ゆえにベアトリスの心には怒りが沸き上がり始めていた。
その怒りがバークに伝わり、彼の心に火をつけた。
表情が力強いものに戻り、その手が青く輝き始める。
ならばせめて自分の炎で弔う、そんな思いがベアトリスに伝わった直後、
「あの二人を倒すぞ! ベアトリス!」
バークはその怒りを声に変えて吐き出した。
その叫びにベアトリスは即座に応えた。
左手から防御魔法を展開し、嵐の構えを取る。
防御魔法の中心に槍の切っ先を向け、狙いを定める。
直後、バークがベアトリスの真横に立ち並び、ベアトリスの左手に自身の右手を添えた。
二人の防御魔法が混じり、巨大な光の傘となる。
そしてベアトリスはその中心に槍を突き立てた。
同時にナチャがムカデを放出。
槍を軸に回転し始めた光の傘の中にムカデの群れが飛び込んでいく。
すなわち、これはムカデ版の墨流し。
これにバークがさらに一工夫を加えた。
添えた右手を輝かせ、青い炎を放つ。
ムカデと青い炎が回転しながら収束する傘の中に吸い込まれていく。
そしてその収束が限界に達した瞬間、
「破ッ!!」
ベアトリスは槍から魔力を一気に放出し、その収束した力を解き放った。
呼んでも声は返ってこないことが。
よく知っている二人の気配を感じ取れなかったのがその証拠。
もう別人なのだ。中身が違うのだ。乗っ取られているのだ。
それでもバークはかすかな希望に望みをかけていた。
が、返事は返ってくることは無く、送られてきたのは純粋な殺意だけであった。
「……っ」
かすかな希望すら残っていない事実にバークの表情が悲しく歪む。
その悲しみにベアトリスは共感していた。
あれは助けられない、もう手遅れ、ベアトリスはそう思っていた。
なぜなら、二人とも死体同然の状態だからだ。
アーティットの体にはあちこちに深い傷がある。その多くが重要な臓器に達してしまっている。
クラリスも似たようなものだ。防具の下から贓物がたれているのが見える。
二人とも力尽きる寸前まで戦っていたことがわかる。
そんな二人を敵は乗っ取って無理矢理動かしているのだ。
ゆえにベアトリスの心には怒りが沸き上がり始めていた。
その怒りがバークに伝わり、彼の心に火をつけた。
表情が力強いものに戻り、その手が青く輝き始める。
ならばせめて自分の炎で弔う、そんな思いがベアトリスに伝わった直後、
「あの二人を倒すぞ! ベアトリス!」
バークはその怒りを声に変えて吐き出した。
その叫びにベアトリスは即座に応えた。
左手から防御魔法を展開し、嵐の構えを取る。
防御魔法の中心に槍の切っ先を向け、狙いを定める。
直後、バークがベアトリスの真横に立ち並び、ベアトリスの左手に自身の右手を添えた。
二人の防御魔法が混じり、巨大な光の傘となる。
そしてベアトリスはその中心に槍を突き立てた。
同時にナチャがムカデを放出。
槍を軸に回転し始めた光の傘の中にムカデの群れが飛び込んでいく。
すなわち、これはムカデ版の墨流し。
これにバークがさらに一工夫を加えた。
添えた右手を輝かせ、青い炎を放つ。
ムカデと青い炎が回転しながら収束する傘の中に吸い込まれていく。
そしてその収束が限界に達した瞬間、
「破ッ!!」
ベアトリスは槍から魔力を一気に放出し、その収束した力を解き放った。
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