329 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十一話 そして聖域は地獄に変わる(3)
しおりを挟む
◆◆◆
近づいて気配が大きくなったことで、残骸は気づいた。
その気配の異常性に。
大きな一つの気配に複数の小さな気配が攻撃を仕掛けている。
いや、逆か? 小さなほうが襲われている?
さらに近づき、その姿形が明らかになったことで真実ははっきりとした。
感じ取った異常性は正解であった。
一人の男と複数の狂人が戦っている。
狂人自体が異常だが、男のほうがより異常であった。
頭から木が生えている、そう見えた。
しかしその印象は一瞬。
枝は触手のようにやわらかくうごめき、狂人達に襲い掛かった。
触手に捕まらないように距離を取ろうとする狂人。
しかし離れない。むしろ詰まる。あっという間に至近距離。
触手を操る本体の動きの速さも異常であった。
あれでは関節や筋肉がもたないのでは? そう思える急加速。
間も無く触手は狂人を捕まえた。
「……!」
頭に巻き付いた触手が耳から、鼻から、目から脳に入り込む。
触手の全面にびっしりと生えているトゲが皮膚の下に深々と刺し込まれ、中で根を張るように枝分かれして食い込んでいく。
抵抗しようにも、もう動けない。
既に体にも巻き付いている。
出来ることはただ痙攣するだけ。
その有様を見て、
「……っ!」
残骸は同じように戦慄した。
なんとおぞましい。
しかしなんと凄まじい。
神話の時代に比べ、人ははるかに強くなった。
だがその強くなった人類の中に、さらに「特別」と賞賛される怪物がいる。
あれは間違い無くその一人だ。
されどやっていることはかつての神となんら変わらない。
乗っ取り、自分の眷属として使役する。
間も無く、その作業は滞りなく終わった。
全ての狂人が捕まり、男の前にひざまずく。
そう、男は捕まえた狂人達をわざわざひざまずかせた。
まるで自分が王であることを確認するかのように。
だが、
「……?」
残骸は感じ取った。
男の中から意識や自我のようなものがほとんど感じられないからだ。
近づいて気配が大きくなったことで、残骸は気づいた。
その気配の異常性に。
大きな一つの気配に複数の小さな気配が攻撃を仕掛けている。
いや、逆か? 小さなほうが襲われている?
さらに近づき、その姿形が明らかになったことで真実ははっきりとした。
感じ取った異常性は正解であった。
一人の男と複数の狂人が戦っている。
狂人自体が異常だが、男のほうがより異常であった。
頭から木が生えている、そう見えた。
しかしその印象は一瞬。
枝は触手のようにやわらかくうごめき、狂人達に襲い掛かった。
触手に捕まらないように距離を取ろうとする狂人。
しかし離れない。むしろ詰まる。あっという間に至近距離。
触手を操る本体の動きの速さも異常であった。
あれでは関節や筋肉がもたないのでは? そう思える急加速。
間も無く触手は狂人を捕まえた。
「……!」
頭に巻き付いた触手が耳から、鼻から、目から脳に入り込む。
触手の全面にびっしりと生えているトゲが皮膚の下に深々と刺し込まれ、中で根を張るように枝分かれして食い込んでいく。
抵抗しようにも、もう動けない。
既に体にも巻き付いている。
出来ることはただ痙攣するだけ。
その有様を見て、
「……っ!」
残骸は同じように戦慄した。
なんとおぞましい。
しかしなんと凄まじい。
神話の時代に比べ、人ははるかに強くなった。
だがその強くなった人類の中に、さらに「特別」と賞賛される怪物がいる。
あれは間違い無くその一人だ。
されどやっていることはかつての神となんら変わらない。
乗っ取り、自分の眷属として使役する。
間も無く、その作業は滞りなく終わった。
全ての狂人が捕まり、男の前にひざまずく。
そう、男は捕まえた狂人達をわざわざひざまずかせた。
まるで自分が王であることを確認するかのように。
だが、
「……?」
残骸は感じ取った。
男の中から意識や自我のようなものがほとんど感じられないからだ。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる