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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十一話 そして聖域は地獄に変わる(2)
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◆◆◆
かつての神の残骸は逃げていた。
追っ手の追跡は激しく、休む暇は無かった。
適度に攻撃用の精霊をばらまいて迎撃しているが、追っ手が止まる気配は無い。
休む暇が無いゆえに補給が出来ていない。消耗する一方。
盗んだこの魂を使えば強力な反撃が出来るが、これは出来るだけ温存しておきたい――そんな思いは迷いと葛藤に変わりつつあった。
この状況をなんとかする策は思いついていた。
逃げながら、または戦いながら補給出来るようにすればいいのだ。
つまり、人間の体を奪うということ。
その策はこの状況下では最善に思えた。
「……」
が、残骸はあまり気が乗らなかった。
過去の私達はそれが原因で失敗した気がするのだ。
しかし今の状況が続けば危ない。
少しずつだが手段を選べる状況では無くなってきている、そんな意識が残骸の中に芽生え始めていた。
ゆえに残骸の意識は都合の良いほうに傾き始めた。
少し借りるだけ。そう、ほんの少し借りるだけ。それくらいならきっと許されるし大丈夫。
残骸がそう思い始めてから間も無く、
「……!」
前方からただならぬ気配が感じ取れた。
明らかに戦いの気配。
残骸は警戒し、それを避けるべきかと悩んだが、そこに人間がいることは間違い無かった。
だから少し様子を見てみよう、そう思った。
もしかしたら出来たての死体が手に入るかもしれない。
それならば罪悪感は一切生じない。
そう考えた残骸は速度を上げ、気配の方向に向かった。
かつての神の残骸は逃げていた。
追っ手の追跡は激しく、休む暇は無かった。
適度に攻撃用の精霊をばらまいて迎撃しているが、追っ手が止まる気配は無い。
休む暇が無いゆえに補給が出来ていない。消耗する一方。
盗んだこの魂を使えば強力な反撃が出来るが、これは出来るだけ温存しておきたい――そんな思いは迷いと葛藤に変わりつつあった。
この状況をなんとかする策は思いついていた。
逃げながら、または戦いながら補給出来るようにすればいいのだ。
つまり、人間の体を奪うということ。
その策はこの状況下では最善に思えた。
「……」
が、残骸はあまり気が乗らなかった。
過去の私達はそれが原因で失敗した気がするのだ。
しかし今の状況が続けば危ない。
少しずつだが手段を選べる状況では無くなってきている、そんな意識が残骸の中に芽生え始めていた。
ゆえに残骸の意識は都合の良いほうに傾き始めた。
少し借りるだけ。そう、ほんの少し借りるだけ。それくらいならきっと許されるし大丈夫。
残骸がそう思い始めてから間も無く、
「……!」
前方からただならぬ気配が感じ取れた。
明らかに戦いの気配。
残骸は警戒し、それを避けるべきかと悩んだが、そこに人間がいることは間違い無かった。
だから少し様子を見てみよう、そう思った。
もしかしたら出来たての死体が手に入るかもしれない。
それならば罪悪感は一切生じない。
そう考えた残骸は速度を上げ、気配の方向に向かった。
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