325 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十話 母なる海の悪夢(23)
しおりを挟む
だが、アルフレッドを守る気持ちは失われていなかった。
庇うようにアルフレッドの前に立つ。
自分に何が出来るのか? 出来ることなどあるのか? そんなさらなる絶望を呼ぶ意識はベアトリスには無かった。
何とかしないと、そんな思いでベアトリスの心は埋め尽くされていた。
だが、いくら考えてもこの状況を打破する一手は見つからない。
答えが出ないままに目の前の足が再び動き始め、周囲の足が近づいてくる。
何も出来ないのであれば、せめて盾に――
そう考えたベアトリスが振り下ろされ始めた眼前の足に突撃しようとした瞬間、
「っ!?」
ベアトリスの背中に衝撃が走った。
ベアトリスの体が浮遊感に包まれ、視界の中の景色が流れ始める。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
すぐに気付いた。
後ろからアルフレッドに突き飛ばされたのだ。
しかも防御魔法を使った突き飛ばし。
その衝撃はベアトリスの体を船外まで運ぶのに十分であった。
そしてベアトリスはその浮遊感の中で思い出した。
いまだにどうやっているのか分からないが、アルフレッドが心を隠せることを。思考が遅れてくることがあることを。
だからわからなかった。反応が遅れた。
その後悔と共にベアトリスは海に落ちた。
すぐに浮上し、海面から顔を出すと同時に叫ぶ。
「アルフレッド!」
見上げると、船は大変なことになっていた。
イカの足が船に巻き付き、つつみこんでいる。
まるで船を締め上げて潰そうとしているかのように。
隙間がまったく無い。逃げ場が無い。
その包囲の中から光が何度もあふれている。
アルフレッドが抵抗している。それが感じ取れる。
が、直後、
「!」
アルフレッドの抵抗は止まり、苦悶の感覚が伝わってきた。
「アルフレッド!」
再び名を呼ぶ。
だが、何も返って来ない。苦悶の感覚すらすぐに消えた。
意識が完全に途絶えた?! その確信を否定するためにベアトリスはさらに声を上げた。
「返事をして! アルフレッド!」
庇うようにアルフレッドの前に立つ。
自分に何が出来るのか? 出来ることなどあるのか? そんなさらなる絶望を呼ぶ意識はベアトリスには無かった。
何とかしないと、そんな思いでベアトリスの心は埋め尽くされていた。
だが、いくら考えてもこの状況を打破する一手は見つからない。
答えが出ないままに目の前の足が再び動き始め、周囲の足が近づいてくる。
何も出来ないのであれば、せめて盾に――
そう考えたベアトリスが振り下ろされ始めた眼前の足に突撃しようとした瞬間、
「っ!?」
ベアトリスの背中に衝撃が走った。
ベアトリスの体が浮遊感に包まれ、視界の中の景色が流れ始める。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
すぐに気付いた。
後ろからアルフレッドに突き飛ばされたのだ。
しかも防御魔法を使った突き飛ばし。
その衝撃はベアトリスの体を船外まで運ぶのに十分であった。
そしてベアトリスはその浮遊感の中で思い出した。
いまだにどうやっているのか分からないが、アルフレッドが心を隠せることを。思考が遅れてくることがあることを。
だからわからなかった。反応が遅れた。
その後悔と共にベアトリスは海に落ちた。
すぐに浮上し、海面から顔を出すと同時に叫ぶ。
「アルフレッド!」
見上げると、船は大変なことになっていた。
イカの足が船に巻き付き、つつみこんでいる。
まるで船を締め上げて潰そうとしているかのように。
隙間がまったく無い。逃げ場が無い。
その包囲の中から光が何度もあふれている。
アルフレッドが抵抗している。それが感じ取れる。
が、直後、
「!」
アルフレッドの抵抗は止まり、苦悶の感覚が伝わってきた。
「アルフレッド!」
再び名を呼ぶ。
だが、何も返って来ない。苦悶の感覚すらすぐに消えた。
意識が完全に途絶えた?! その確信を否定するためにベアトリスはさらに声を上げた。
「返事をして! アルフレッド!」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
『神様がくれたロボット』世界最強は誰か分からせます。
cyanP
大衆娯楽
現実にアニメロボットが現れたらどうなるか? それがアメリカ軍と対決したらどうなるか?
という、ふたつの妄想を「世間の反応」を中心に考察した小説です。
(残酷描写は無いと思うが一応保険)
『この物語はフィクションであり、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
実在の人物・団体とは一切関係ありません』
【物語の都合上、アメリカ合衆国等に辛辣ですが、私個人の思想ではなく、ただのネタです。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる