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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十話 母なる海の悪夢(22)
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明らかに他よりも多い。攻撃が集中している。
アルフレッドを狙っていたのはこいつなの?!
シャロンがそう思いながら目を凝らして意識を集中させると、二人の葛藤が感じ取れた。
俺が守る、わたしが守る、そんな二人の意識がぶつかり合い、せめぎ合っていた。
そのせめぎ合いの中で最初に動いたのは敵であった。
太いその身をくねらせ、しならせる。
勢いをつけて振り下ろす、その初動に見えた。
これに対し、感情のせめぎ合いを先に制したのはベアトリス。
アルフレッドを庇うように、前に立とうと動き出す。
いや、ほぼ同時であった。アルフレッドも一瞬遅れて前に飛び出した。
ゆえに二人は並んで前に距離を詰める形になった。
そして直後の動作も同じであり、同時だった。
蝶の精霊を生み出しながら防護魔法を展開。
二人の手から開いた光の傘は繋がり、一枚の大きな盾になった。
二人はその中心に狙いを定め、
““白中・墨流蝶!(はくちゅう・すみながし)””
同じ心の叫びを重ねて響かせながら、得物を振るった。
アルフレッドの二刀が描いた十字が防御魔法に叩きつけられ、直後にベアトリスの槍先が十字の交差点に突き刺さる。
二人で生み出した光の傘が槍を軸として回転し始める。
間も無く傘は歪み、回転の加速と共に原型を失っていった。
ただの光の渦に変わり、蝶を巻き込みながら縮むように槍に収束していく。
その収束が限界に達した直後、ベアトリスはその力を解き放った。
そして放たれたのは巨大な光の嵐と、その嵐の中を流されながら舞う蝶の群れ。
放電炸裂のような音を幾重にも響かせながら襲い掛かる。
間も無く、嵐と蝶がイカの足に炸裂。
イカの足は回避行動も防御行動も何もしなかった。
ただの棒立ちでの直撃。
であったが、
「「っ!」」
ほとんど効果は無かった。
振動する光の刃は炸裂音と共に衝撃波を撒き散らしながらイカの足に食い込んだが、その巨体を両断するには力と物量が足りなさ過ぎた。
少しひっかき傷のようなものがついた、という程度。
そして同時に炸裂した蝶に至っては悲惨の一言。
蝶は逆に食われていた。
足にびっしりと張り巡らされた吸盤が真っ二つに割れ、蝶を挟んだのだ。
いや、噛みついたのだ。この吸盤は全てが口の機能を備え、牙を持っているのだ。
アルフレッドを狙っていたのはこいつなの?!
シャロンがそう思いながら目を凝らして意識を集中させると、二人の葛藤が感じ取れた。
俺が守る、わたしが守る、そんな二人の意識がぶつかり合い、せめぎ合っていた。
そのせめぎ合いの中で最初に動いたのは敵であった。
太いその身をくねらせ、しならせる。
勢いをつけて振り下ろす、その初動に見えた。
これに対し、感情のせめぎ合いを先に制したのはベアトリス。
アルフレッドを庇うように、前に立とうと動き出す。
いや、ほぼ同時であった。アルフレッドも一瞬遅れて前に飛び出した。
ゆえに二人は並んで前に距離を詰める形になった。
そして直後の動作も同じであり、同時だった。
蝶の精霊を生み出しながら防護魔法を展開。
二人の手から開いた光の傘は繋がり、一枚の大きな盾になった。
二人はその中心に狙いを定め、
““白中・墨流蝶!(はくちゅう・すみながし)””
同じ心の叫びを重ねて響かせながら、得物を振るった。
アルフレッドの二刀が描いた十字が防御魔法に叩きつけられ、直後にベアトリスの槍先が十字の交差点に突き刺さる。
二人で生み出した光の傘が槍を軸として回転し始める。
間も無く傘は歪み、回転の加速と共に原型を失っていった。
ただの光の渦に変わり、蝶を巻き込みながら縮むように槍に収束していく。
その収束が限界に達した直後、ベアトリスはその力を解き放った。
そして放たれたのは巨大な光の嵐と、その嵐の中を流されながら舞う蝶の群れ。
放電炸裂のような音を幾重にも響かせながら襲い掛かる。
間も無く、嵐と蝶がイカの足に炸裂。
イカの足は回避行動も防御行動も何もしなかった。
ただの棒立ちでの直撃。
であったが、
「「っ!」」
ほとんど効果は無かった。
振動する光の刃は炸裂音と共に衝撃波を撒き散らしながらイカの足に食い込んだが、その巨体を両断するには力と物量が足りなさ過ぎた。
少しひっかき傷のようなものがついた、という程度。
そして同時に炸裂した蝶に至っては悲惨の一言。
蝶は逆に食われていた。
足にびっしりと張り巡らされた吸盤が真っ二つに割れ、蝶を挟んだのだ。
いや、噛みついたのだ。この吸盤は全てが口の機能を備え、牙を持っているのだ。
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