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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十話 母なる海の悪夢(20)
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ならばマズい! ルイスはそう思った。
推察が正しければ、海を戦場に選んだのは完全に失敗だ。
目の前の敵を倒してもすぐに次が来る可能性が高い。
ならば陸地に避難しないと。そう考えたルイスはそれを声に出そうとしたが、
「逃げろ!」「潰されるぞ!」
そんな声が周囲から次々と上がり始めた。
潰されるなんてことはありえない。いくら巨大とはいえ、これは魂の集合体。重さはほとんど無い。
しかし、兵士達はそんな簡単な判断すら出来ないほどに恐怖に汚染されていた。
さらに、逃げ方もめちゃくちゃだ。
出来るだけ早く、我先に、そんな感情しか読み取れない。陣形を勝手に崩し始めている。統率が失われている。
しかも、最寄りの海岸のほうにでは無く、来た航路を戻ろうとしている者達がいる。
だからルイスはサイラスに向かって叫んだ。
「サイラス! 精霊を使って兵士達の恐怖を抑えこめ! 一時的に脳を乗っ取ってもかまわない!」
サイラスは既にそのように動いていた。
得意の死神を大量生産し、全方位に解き放つ。
放たれた死神は恐怖に染まっている兵士を選び、その頭に取り憑いた。
恐怖の波を相殺する波を放つ。
だが、敵の波が大きすぎる。効果は緩和という程度。
その緩和で回復しない場合は頭の中を直接いじる。
やや手間のかかる作業。
そんな一手間を敵が黙って見過ごすはずが無かった。
「!」
それは突如、海中から飛び出してきた。
クラゲ型の精霊だ。
しかしそれは見た目の造形が似ているだけ。
小型船ほどもある巨体の上、触手は気持ちの悪いトゲと針だらけだ。
それはサイラスを包囲するように海中から湧き出し、一斉に襲い掛かってきた。
これをサイラスは同じもので迎え討った。
トゲと針まみれになった異形の剣を振るう。
死神と、シャロンとキーラが置いて行った爆弾持ちの精霊も使って迎撃する。
しかしそれで精一杯。
兵士達を回復させる余裕など無い。
だからサイラスは他者の手を借りようと思った。
が、ナチャは下の巨大な何かと戦闘中。
ドラゴンはイカの足と戦っている。
デュランもこっちと同じ状況。クラゲに襲われている。
他者に手を回す余裕がある者は近くにはいないようであった。
だからサイラスは前方に意識を向けた。
が、前も似たような状況であった。
推察が正しければ、海を戦場に選んだのは完全に失敗だ。
目の前の敵を倒してもすぐに次が来る可能性が高い。
ならば陸地に避難しないと。そう考えたルイスはそれを声に出そうとしたが、
「逃げろ!」「潰されるぞ!」
そんな声が周囲から次々と上がり始めた。
潰されるなんてことはありえない。いくら巨大とはいえ、これは魂の集合体。重さはほとんど無い。
しかし、兵士達はそんな簡単な判断すら出来ないほどに恐怖に汚染されていた。
さらに、逃げ方もめちゃくちゃだ。
出来るだけ早く、我先に、そんな感情しか読み取れない。陣形を勝手に崩し始めている。統率が失われている。
しかも、最寄りの海岸のほうにでは無く、来た航路を戻ろうとしている者達がいる。
だからルイスはサイラスに向かって叫んだ。
「サイラス! 精霊を使って兵士達の恐怖を抑えこめ! 一時的に脳を乗っ取ってもかまわない!」
サイラスは既にそのように動いていた。
得意の死神を大量生産し、全方位に解き放つ。
放たれた死神は恐怖に染まっている兵士を選び、その頭に取り憑いた。
恐怖の波を相殺する波を放つ。
だが、敵の波が大きすぎる。効果は緩和という程度。
その緩和で回復しない場合は頭の中を直接いじる。
やや手間のかかる作業。
そんな一手間を敵が黙って見過ごすはずが無かった。
「!」
それは突如、海中から飛び出してきた。
クラゲ型の精霊だ。
しかしそれは見た目の造形が似ているだけ。
小型船ほどもある巨体の上、触手は気持ちの悪いトゲと針だらけだ。
それはサイラスを包囲するように海中から湧き出し、一斉に襲い掛かってきた。
これをサイラスは同じもので迎え討った。
トゲと針まみれになった異形の剣を振るう。
死神と、シャロンとキーラが置いて行った爆弾持ちの精霊も使って迎撃する。
しかしそれで精一杯。
兵士達を回復させる余裕など無い。
だからサイラスは他者の手を借りようと思った。
が、ナチャは下の巨大な何かと戦闘中。
ドラゴンはイカの足と戦っている。
デュランもこっちと同じ状況。クラゲに襲われている。
他者に手を回す余裕がある者は近くにはいないようであった。
だからサイラスは前方に意識を向けた。
が、前も似たような状況であった。
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