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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十話 母なる海の悪夢(12)

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 そして鉄と魔法はぶつかり合った。
 赤い槍によって生まれた衝撃波が砲弾の勢いを弱め、直後に光の刃が食らいつく。
 砲弾の中にある炭素と反応し、中からかきまわす。
 だが、勢いを完全に殺せたのは赤い槍が直撃した部分だけであった。
 他は軌道を曲げた程度。殺傷力は消えていない。
 ゆえに、あとは祈るしか無かった。

「「「っ!」」」

 巨大な鉄の雨がシャロン達に降り注ぐ。
 波が砕け、木片が舞い上がったのが目を閉じていてもわかる。
 悲鳴は無い。
 声を出すことすらできなかったのかもしれない。
 だからシャロンは即座に被害を確認した。

(何隻残った?!)

 見回すよりも早く、シャロンの感知能力は「二隻完全に破壊されている」と答えた。
 その結果にシャロンは奥歯をかみしめた。
 自分の全力をもってしても防ぎきることは不可能だと明らかになったからだ。
 しかも一隻からの攻撃でこれだ。複数から同時射撃されればひとたまりも無いだろう。
 そして直後、シャロンの感知能力はさらに悪い情報を見つけ出した。

(この船も?!)

 自分が乗っている船にも穴が開いていた。
 だが、沈没するほどでは無い。
 しかし浸水するゆえに航行速度は遅くなる。撃たれ放題である。
 船を乗り換えるべきだ、シャロンは最初そう考えたが、

(いや、)

 あの手が使えるかもしれないと思った。
 しかしこの技は練度が低い。
 地形も良くない。爆発魔法の連打で海は荒れている。
 もし失敗すればそのまま海の藻屑にされる可能性がある。

(でも――)

 成功すれば一気に状況を変えることが出来る!
 ならば悪くない賭け!
 そう思ったのと同時にシャロンは飛び出していた。
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