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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十話 母なる海の悪夢(5)
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フレディの叫び声に同船している兵士達は銃声で応えた。
数瞬遅れてフレディも引き金を引く。
が、
(外した!?)
自分の射撃も味方の銃撃もほとんど当たらなかった。
相手が回避行動をとらなければ当たる、その自信と共に放たれた弾丸であったが、フレディはその予想が外れたことに驚いた。
弾道がなぜか上に傾き、敵の頭上をかすめたことが感じ取れた。
なぜか、その理由はすぐに分かった。少し考えればわかることだった。
だからフレディは「俺は馬鹿か!」と、心の中で自分を叱りつけた。
要は、走りながらの射撃と同じなのだ。射手の揺れなどが慣性として銃弾に乗るのだ。
フレディは即座にそれを声を上げた。
「船の揺れが弾道に影響を与えているぞ! 注意しろ!」
その言葉に兵士達は即座に応じた。
揺れを意識しながら一斉射撃。
半分が命中。オールを動かしていた手の多くが止まる。
しかし敵の船の勢いは止まらず。
明らかな体当たり狙いで突撃してくる。
ぶどう弾の装填は揺れで中断されてから遅れている。間に合わない。
だからフレディは声を上げた。
「乗り込まれるぞ! 抜剣しろ!」
場に剣を抜く音が連続で響き、フレディは義手の刃を輝かせた。
直後に船は正面からぶつかり合った。
「「「っ!」」」
木が砕ける音と共に、衝撃が船体を揺らす。
この衝突は敵側が一方的に勝っていた。
この小型船は突撃用に改造されていたからだ。
船首から先端部までが金属板で補強されており、鋭く加工されていた。その鋭く輝く先端部がフレディ達の船に深々と突き刺さっていた。
そして直後に狂人達は飛び出し、船に乗り移ってきた。
その狂人らしい無防備な飛び込みをいくつかの銃声が撃ち落とす。
だが銃声の数はまばら。ほとんどに乗り込まれる。
そして場は乱戦と化した。
剣と狂人の爪がぶつかり合う音が幾重にも重なって響き始める。
その中でもフレディの剣は目立っていた。
乱戦であるにもかかわらず隙は無い。感知能力者特有の動きであった。
攻撃においても同様。
フレディは乱戦であるにもかかわらず、
「おらぁっ!」
積極的に刃から小さな三日月を放った。
だが、味方への被害は無い。的確に敵の首だけを切り飛ばしていく。
味方の中にもフレディと同じような動きをしている者がいた。
ゆえに、乱戦であっても時折銃声が響いていた。
数の差もあり、乱戦の状況は終始優勢で進んだ。
そして、間も無く乗り込んできた敵を一掃できるという場面になった瞬間、
「おいやばいぞ! あれを見ろ!」
兵士の一人が声を上げた。
兵士の思念が示す方向に目を向けると、そこには大砲を積んだ敵の小型船があった。
その砲口はフレディ達のほうに向いていた。
数瞬遅れてフレディも引き金を引く。
が、
(外した!?)
自分の射撃も味方の銃撃もほとんど当たらなかった。
相手が回避行動をとらなければ当たる、その自信と共に放たれた弾丸であったが、フレディはその予想が外れたことに驚いた。
弾道がなぜか上に傾き、敵の頭上をかすめたことが感じ取れた。
なぜか、その理由はすぐに分かった。少し考えればわかることだった。
だからフレディは「俺は馬鹿か!」と、心の中で自分を叱りつけた。
要は、走りながらの射撃と同じなのだ。射手の揺れなどが慣性として銃弾に乗るのだ。
フレディは即座にそれを声を上げた。
「船の揺れが弾道に影響を与えているぞ! 注意しろ!」
その言葉に兵士達は即座に応じた。
揺れを意識しながら一斉射撃。
半分が命中。オールを動かしていた手の多くが止まる。
しかし敵の船の勢いは止まらず。
明らかな体当たり狙いで突撃してくる。
ぶどう弾の装填は揺れで中断されてから遅れている。間に合わない。
だからフレディは声を上げた。
「乗り込まれるぞ! 抜剣しろ!」
場に剣を抜く音が連続で響き、フレディは義手の刃を輝かせた。
直後に船は正面からぶつかり合った。
「「「っ!」」」
木が砕ける音と共に、衝撃が船体を揺らす。
この衝突は敵側が一方的に勝っていた。
この小型船は突撃用に改造されていたからだ。
船首から先端部までが金属板で補強されており、鋭く加工されていた。その鋭く輝く先端部がフレディ達の船に深々と突き刺さっていた。
そして直後に狂人達は飛び出し、船に乗り移ってきた。
その狂人らしい無防備な飛び込みをいくつかの銃声が撃ち落とす。
だが銃声の数はまばら。ほとんどに乗り込まれる。
そして場は乱戦と化した。
剣と狂人の爪がぶつかり合う音が幾重にも重なって響き始める。
その中でもフレディの剣は目立っていた。
乱戦であるにもかかわらず隙は無い。感知能力者特有の動きであった。
攻撃においても同様。
フレディは乱戦であるにもかかわらず、
「おらぁっ!」
積極的に刃から小さな三日月を放った。
だが、味方への被害は無い。的確に敵の首だけを切り飛ばしていく。
味方の中にもフレディと同じような動きをしている者がいた。
ゆえに、乱戦であっても時折銃声が響いていた。
数の差もあり、乱戦の状況は終始優勢で進んだ。
そして、間も無く乗り込んできた敵を一掃できるという場面になった瞬間、
「おいやばいぞ! あれを見ろ!」
兵士の一人が声を上げた。
兵士の思念が示す方向に目を向けると、そこには大砲を積んだ敵の小型船があった。
その砲口はフレディ達のほうに向いていた。
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