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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十話 母なる海の悪夢(4)

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 安堵すること無く、次弾となる石炭棒を装填。
 が、

「!」

 フレディは感じ取った。
 次の攻撃は止められないことを。
 その白サメの動きは、明らかに、

(船底狙いか!)

 であった。
 思わず焦りの感情を漏らす。
 海中からの直接攻撃に対しては迎撃手段が無い。
 だからフレディは叫んだ。

「衝撃に備えろ!」

 その叫びに、兵士達はそれぞれのやり方で備えた。
 ある者は手すりにしがみつき、またある者は帆柱にしがみついた。
 直後、

「「「!!」」」

 船を振動が襲った。
 が、

「!」

 フレディは違うことに驚いていた。
 フレディは感じ取っていた。白サメは船底に攻撃できなかったのを。
 邪魔が入ったのだ。
 それは先に展開された太いヘビのようなあの精霊であった。
 空から舞い降りて海中に潜行し、腹に抱えた爆発魔法を白サメに炸裂させたのだ。
 見回すと、同じことがそこら中で起きていた。
 空から降ってきた精霊たちが次々と飛び込んでいる。
 その精霊は、後方から送られてきたものだけでは無かった。
 遊撃船に乗っているルイスとサイラス、そしてデュラン達が精霊を絶やすことなく生み出し続けていた。
 三人とも既に魂で作り出された異形の装備に身を包んでいる。
 そして直後、サイラスは飛び掛かってくるサメを異形の剣で切り裂きながら声を上げた。

「海中の敵は任せろ! 砲兵は接近してくる敵の船を狙え!」

 その声が心に響いた直後、別の思念が心に届いた。

(ボクも海中にいる。だから君たちは出来る限り海上の敵に専念してくれ)

 それはナチャの声であった。
 その声と共にフレディは感じ取った。
 海中の戦いが凄まじい様相になっていることを。 
 ナチャが生み出したムカデがからみついてサメの動きを止め、そこにルイス達が生み出した精霊が食らいついている。
 後方のシャロン達が生み出した精霊も次々と爆発している。
 その激しさに海は荒れ始めた。
 高波に、船が激しく揺れ始める。
 その上下に往復する視界の中で、フレディは叫んだ。

「小型船が突っ込んで来るぞ! 撃て!」
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