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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十九話 黄金の林檎(30)
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◆◆◆
翌日から、いや、深夜からソレらは行動を開始した。
その動きはすぐに成果となって表れた。
船乗りの経験がある者、またはやってみたい者の募集が開始された。
人はすぐに集まり、未経験者には教育が実施され始めた。
同時に船の改造作業も始まった。
その様子はまるで皆が船で行くことを望んでいるかのようであった。
船で行くのだろうという共通認識が広まり、雰囲気が出来上がっていった。
だが、ルイスはその雰囲気に呑まれることは無かった。
いくら盛り上がろうとも、戦力が増えたわけでは無い。ルイスは数字しか見ていなかった。
だからルイスはその数字を増やすために動いていた。
そして船を改造する音が朝から夜まで響き続けるようになった頃、その成果の一つがルイスのもとに届いた。
◆◆◆
荷物を受け取った直後にルイスはシャロンを自室に呼び出した。
「突然呼び出すなんて、一体どうしたの?」
予定に無かった呼び出しに、何事かとシャロンは尋ねた。
その声の調子はいつも通りであったが、ルイスはシャロンが疲れていることと、ちょっと不機嫌になっていることを感じ取った。
仕方が無い。シャロンは連日働き詰めだ。最近は海軍の編成についての話し合いであちこち動き回っている。
だからルイスはシャロンが喜ぶように最初の言葉を選び、口を開いた。
「君に贈り物があるんだ」
予想していなかったその言葉に、シャロンは興味を示す言葉を返した。
「贈り物? それは嬉しいけど、どうして私に?」
ルイスはその「どうして」という部分には答えず、机の上にその贈り物を置いて見せた。
「……?」
が、それを見たシャロンの反応はイマイチなものであった。
そしてシャロンはその感情のままに、イマイチな言葉を返した。
「ええっと……ルイス? 気持ちは嬉しいんだけど、私はお金には困って無いわよ?」
その反応をルイスは予想できていた。
それは美しい光を放っており、豪華なショーケースの中に展示されていそうな代物であったからだ。
だからルイスは口を開いた。
「これは金持ちの趣向品でも儀礼用でも無い。これは武器だ。次の戦いから使ってもらう」
その言葉はシャロンには信じられなかった。
だから思わず確認してしまった。
「これが武器なの?」
ルイスは淡々と答えた。
「そうだ」
答えながらルイスは引き出しからもう一つの贈り物を取り出して見せた。
それも武器には見えなかった。
だからシャロンは確認した。
「……やっぱりこれも武器なの?」
ルイスは自信満々に答えた。
「ああ、そうだ。既に試験は済ませてある。すぐにでも試してみるといい。使い方と原理をこれから説明しよう」
そしてルイスは語りだした。
しかしそれはあまりにも技術的すぎる話であり、疲れているシャロンには眠くなる話であった。
翌日から、いや、深夜からソレらは行動を開始した。
その動きはすぐに成果となって表れた。
船乗りの経験がある者、またはやってみたい者の募集が開始された。
人はすぐに集まり、未経験者には教育が実施され始めた。
同時に船の改造作業も始まった。
その様子はまるで皆が船で行くことを望んでいるかのようであった。
船で行くのだろうという共通認識が広まり、雰囲気が出来上がっていった。
だが、ルイスはその雰囲気に呑まれることは無かった。
いくら盛り上がろうとも、戦力が増えたわけでは無い。ルイスは数字しか見ていなかった。
だからルイスはその数字を増やすために動いていた。
そして船を改造する音が朝から夜まで響き続けるようになった頃、その成果の一つがルイスのもとに届いた。
◆◆◆
荷物を受け取った直後にルイスはシャロンを自室に呼び出した。
「突然呼び出すなんて、一体どうしたの?」
予定に無かった呼び出しに、何事かとシャロンは尋ねた。
その声の調子はいつも通りであったが、ルイスはシャロンが疲れていることと、ちょっと不機嫌になっていることを感じ取った。
仕方が無い。シャロンは連日働き詰めだ。最近は海軍の編成についての話し合いであちこち動き回っている。
だからルイスはシャロンが喜ぶように最初の言葉を選び、口を開いた。
「君に贈り物があるんだ」
予想していなかったその言葉に、シャロンは興味を示す言葉を返した。
「贈り物? それは嬉しいけど、どうして私に?」
ルイスはその「どうして」という部分には答えず、机の上にその贈り物を置いて見せた。
「……?」
が、それを見たシャロンの反応はイマイチなものであった。
そしてシャロンはその感情のままに、イマイチな言葉を返した。
「ええっと……ルイス? 気持ちは嬉しいんだけど、私はお金には困って無いわよ?」
その反応をルイスは予想できていた。
それは美しい光を放っており、豪華なショーケースの中に展示されていそうな代物であったからだ。
だからルイスは口を開いた。
「これは金持ちの趣向品でも儀礼用でも無い。これは武器だ。次の戦いから使ってもらう」
その言葉はシャロンには信じられなかった。
だから思わず確認してしまった。
「これが武器なの?」
ルイスは淡々と答えた。
「そうだ」
答えながらルイスは引き出しからもう一つの贈り物を取り出して見せた。
それも武器には見えなかった。
だからシャロンは確認した。
「……やっぱりこれも武器なの?」
ルイスは自信満々に答えた。
「ああ、そうだ。既に試験は済ませてある。すぐにでも試してみるといい。使い方と原理をこれから説明しよう」
そしてルイスは語りだした。
しかしそれはあまりにも技術的すぎる話であり、疲れているシャロンには眠くなる話であった。
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