Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか

第十九話 黄金の林檎(29)

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   ◆◆◆

 その夜――
 闇の中で何かが話し合っていた。

「上手くいった」
「そうだろうか?」
「戦力を残しすぎだ。彼らが全滅する可能性があった」
「アルフレッドまで死なせたら元も子も無い」
「それはもっともな意見だが、今は過ぎたことについて話している場合では無い」
「本体のほうにはもう伝えてあるんだよな?」
「ああ、それは私がやった」
「ならば一安心というところか」
「いや、安心するにはまだ早い」
「彼らがこちらの領域に入ってくれるまでは油断してはいけない」
「森よりも南側に入ってくれさえすれば、やつらは迂闊には手出しできなくなる」
「そうだろうか?」
「事前に交わした約束は既に何度も破られているぞ」
「それはお互い様という感じだがな。たぶん、こちら側からの介入もバレている」
「約束と言えば、アレはどうなった?」
「どの約束のことだ?」
「こちらから人材を提供するかわりに、戦いで得た魂を受け取る話だ」
「ああ、それなら最近終わったと聞いた。回収した魂は輸送中とのことだ」
「話がそれすぎだぞ」
「こんな大人数を場に集めたのは間違いだったな」
「そうは言っても、現状報告以外に話し合うべきことがあるのか?」
「それは油断しすぎだ。彼らが船という選択肢を捨てる可能性はまだ残っている。出発するまで注視するべきだ」
「もしも彼らが心変わりをしたら、仕掛けるのか?」
「ルイスなどの重要人物にはナチャの分身が常にはりついているぞ」
「それは最後の手段だ」
「まずは手軽なところから攻める」
「というと?」
「また同じやり方でいくということだ」
「我々で船出の準備を手伝ってやるのさ」
「船乗り達にやる気を出させるんだよ。全身全霊を注ぐ勢いでね」
「なるほど。それは良い考えだ」
「それでは、早速始めよう」
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