Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか

第十八話 凶獣協奏曲(6)

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 女を守るように集まっていた銃兵達が、彼女のそばを離れてこちらに近づき始めたのだ。
 それだけでは無かった。
 フレディ達を攻撃している銃兵の一部もこちらに狙いを定めたようであった。
 だからベアトリスは叫んだ。

「アルフレッド!」

 情報の思念を含んだその叫びに、アルフレッドは心の中で「わかった」と返した。
 二人は直後に、同じように動いた。
 地を蹴り、同じ遮蔽物に身を隠す。
 商店街のある屋台の裏の家屋。
 屋台の持ち主がそのまま住んでいたと思われるその家屋のドアを開け、二人は中に忍んだ。
 だが、敵も感知能力者。二人の位置は正確にバレている。
 屋根の上から狙いを定められている、アルフレッドとベアトリスはそれを感じ取った。
 さらに、照準を二人に合わせているのは銃兵だけでは無かった。
 ベアトリスの写し人形達も同様に攻撃意識を向けていた。
 何をするつもりなのか、それも二人は感じ取れていた。
 だから二人は直後に再び同じように動いた。
 裏口から脱出するように同時に床を蹴る。
 瞬間、上にいる人形達は二人が感じ取った通りに動いた。
 一斉に槍を突き出し、防御魔法を貫いて嵐を放つ。
 家屋という遮蔽物そのものを破壊する一斉攻撃。
 五方向から同時に放たれた光の濁流が屋根を食い破り、柱を削り砕き、家屋をなぎ倒す。
 その崩壊の音を真後ろに聞きながら、二人は裏口から飛び出した。
 ベアトリスは防御魔法を後方では無く前に構えながら飛び出してきた。
 銃兵達が出待ちしているからだ。
 だからベアトリスは飛び出した直後に槍を突き出し、斜め上に向かって嵐を放った。
 同時にアルフレッドも十字を描く。
 直後に二人の耳に銃声が響く。
 その銃声から数瞬の後、新たな音が耳を打った。
 電気の放電炸裂と酷似した音。光魔法の炸裂音。
 銃弾が白い濁流とぶつかり合う音。
 しかし止めてはいない。弾き返してはいない。軌道を変えているだけだ。音だけでそれがわかる。
 その変化も大きくは無い。その証拠に二人の足元に着弾している。
 まるで爆竹のように炸裂音が連なる。
 その音を絶やさぬようにしているかのように、アルフレッドが走りながら十字を描き続ける。
 間も無く、別の家屋の裏口が二人の近くに迫ってきた。
 どうする? 入る? 入ったほうがいいのでは? ベアトリスはそう提案しようとしたが、

(やるわよ! ベアトリス!)

 直後、アルフレッドの中にいるアリスの声が響いた。
 何を、その内容までその声の中には含まれていた。
 一瞬、ベアトリスは迷った。
 安全では無いからだ。
 だが、成功すれば敵の手数を減らせる。
 そしてどうやら、アルフレッドは既にやる気のようだ。
 ならばベアトリスも乗るしかなかった。

(わかった! やろう!)
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