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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか

第十八話 凶獣協奏曲(4)

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 されど、その惨状に対して怖気づく者はいないようであった。
 次々と群がるように迫ってきていた。
 特に左右から来ていた連中は、

「「「蛇ァァッ!」」」

 既に真横であった。
 影達は気勢を響かせながら最後の一歩を踏み込み、爪を振るった。
 この接近にアルフレッドとベアトリスは当然のように気付いていた。
 だから二人は互いの背後をかばいあうために背中を合わせた。
 同時に、迫る爪に向かって二刀と槍を繰り出す。
 双方の銀色の軌跡がぶつかり合い、火花が散る。
 息もつかせぬ爪の連撃。
 このまま押さえ込めば嵐は撃てない。
 しかしそれはベアトリスのような防御魔法を利用する場合の話。
 アルフレッドは違う。
 直後にアルフレッドはそれを見せた。狙っていた。
 待ち望んでいたそれは直後に来た。
 甘い軌道の爪。
 アルフレッドはそれを弾き飛ばし、即座に切り返して二刀を二閃。
 十字が描かれ、交差点から歪んで小さな嵐に変わる。
 それは光る旋風とでも呼ぶべき小規模の嵐であったが、隙をさらした目の前の敵を倒すには十分であった。
 アルフレッドは一つの動作だけで光る旋風を繰り出せる。
 それは影達もわかっていた。だからアルフレッドのほうにより多くまとわりついていた。
 しかしこの一手で欠員が出来た。アルフレッドの自由度が増す。
 それを補うために、ベアトリスに攻撃を仕掛けていた影の一人はアルフレッドのほうに回り込もうとした。
 だが、それをまんまと許すベアトリスでは無かった。

(やらせない!)

 心の声と共に一閃。

「っ!」

 目にも止まらぬなぎ払いが炸裂。
 そのまま振り抜き、力任せに吹き飛ばす。
 その振り抜きの隙を突く形で別の影がベアトリスに向かって踏み込む。
 だがその動きも予想済み。なぎ払いの時点で小回りが利くように握り手の位置を中心に変えている。
 即座に切り返して石突きを叩き付け、

「ぐぅあっ!」

 同じように吹き飛ばす。
 そのベアトリスの活躍の間に、アルフレッドは光る旋風を連発。
 近寄ってくる敵を次々と蹴散らす。
 その激しさゆえに、光弾という飛び道具を主軸にして立ち回る敵が増え始める。
 しかし弾幕の密度が薄い。それではアルフレッドの行動を阻害できない。自由度が増すだけ。
 ゆえに、

“重ね大十文字十三連!”

 大技を繰り出す余裕すら生まれた。
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