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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(43)
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「……っ!」
やはり来たか。出来れば的中してほしくない予想が当たったゆえに、フレディの表情は強張った。
自分は弱い。しかも負傷している。でも今は指揮官だ。
ならば狙わないはずが無い。わかりきっていた。
だからフレディには覚悟ができていた。
ゆえに、
(……上等だ、来い!)
フレディは受けて立った。
どのみち、今の足では逃げ切れない。
だが踏み込むことは出来る。
直後にフレディはそうしていた。
二人の視線が交わる。
女は勝利の美酒を既に飲んだような顔をしていた。
それもそのはず。今のフレディの足では高速の回りこみは難しいからだ。
懐に潜り込ませもしない。一撃で終わらせる、そんな思いが伝わってきた。
その思いと同時に槍は振るわれた。
まともに受ければあの時と同じように剣が砕ける、そのように見える一撃であった。
にもかかわらず、フレディの選択は防御であった。
折れて短くなった剣を盾にするように前に構えていた。
だから女の表情は少し変わった。薄い笑みを浮かべるように。
が、
「!?」
瞬間、女の表情は完成せずに固まった。
フレディの思考が切り替わったのを、封印が解けたのを感じ取ったからだ。
フレディはすべて承知だった。
できればナンティ達だけで終わらせたかった。しかし突破された。
だから覚悟を決めておく必要があった。
直後にフレディはその覚悟の意味を見せた。
それは折れた右腕。
フレディにはそれしか思いつかなかった。
剣だけでは『受け止められない』、ならば、と。
そして次の瞬間、その覚悟の結末は明らかになった。
剣から火花が散り、槍先が右腕に食い込む。
刃が深々と二の腕を切り裂き、赤く染める。
しかしそこで槍は止まった。
折れて関節が増えた腕が槍にからみついていた。
その刹那の硬直を延長するために、左手も剣を捨てて握り締めた。
だがその延長時間はわずか。
女には拘束を解く手段が複数ある。
そのうちの一つを女は即座に実行しようとしたが、
「うっ?!」
直後、女の体に光弾が炸裂した。
どこから?! 『全ての敵を』警戒していたはずだ! そんな心の叫び響かせながら、女は方向から射手を探った。
それはすぐに見つかり、
「!?」
女は再び驚いた。
それはデュランだったからだ。
やはり来たか。出来れば的中してほしくない予想が当たったゆえに、フレディの表情は強張った。
自分は弱い。しかも負傷している。でも今は指揮官だ。
ならば狙わないはずが無い。わかりきっていた。
だからフレディには覚悟ができていた。
ゆえに、
(……上等だ、来い!)
フレディは受けて立った。
どのみち、今の足では逃げ切れない。
だが踏み込むことは出来る。
直後にフレディはそうしていた。
二人の視線が交わる。
女は勝利の美酒を既に飲んだような顔をしていた。
それもそのはず。今のフレディの足では高速の回りこみは難しいからだ。
懐に潜り込ませもしない。一撃で終わらせる、そんな思いが伝わってきた。
その思いと同時に槍は振るわれた。
まともに受ければあの時と同じように剣が砕ける、そのように見える一撃であった。
にもかかわらず、フレディの選択は防御であった。
折れて短くなった剣を盾にするように前に構えていた。
だから女の表情は少し変わった。薄い笑みを浮かべるように。
が、
「!?」
瞬間、女の表情は完成せずに固まった。
フレディの思考が切り替わったのを、封印が解けたのを感じ取ったからだ。
フレディはすべて承知だった。
できればナンティ達だけで終わらせたかった。しかし突破された。
だから覚悟を決めておく必要があった。
直後にフレディはその覚悟の意味を見せた。
それは折れた右腕。
フレディにはそれしか思いつかなかった。
剣だけでは『受け止められない』、ならば、と。
そして次の瞬間、その覚悟の結末は明らかになった。
剣から火花が散り、槍先が右腕に食い込む。
刃が深々と二の腕を切り裂き、赤く染める。
しかしそこで槍は止まった。
折れて関節が増えた腕が槍にからみついていた。
その刹那の硬直を延長するために、左手も剣を捨てて握り締めた。
だがその延長時間はわずか。
女には拘束を解く手段が複数ある。
そのうちの一つを女は即座に実行しようとしたが、
「うっ?!」
直後、女の体に光弾が炸裂した。
どこから?! 『全ての敵を』警戒していたはずだ! そんな心の叫び響かせながら、女は方向から射手を探った。
それはすぐに見つかり、
「!?」
女は再び驚いた。
それはデュランだったからだ。
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