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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(42)
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フレディがそう叫ぶと同時に全員の心はますます強く繋がった。
だから全員がその思いに対して同時に応えた。
「「「雄応ッ!」」」
ナンティは応えると同時に女に向かって踏み込んだ。
迎撃で繰り出された突きを受け流しながら、炎を発射。
これに対し女は防御魔法を展開しながら後退。
しかし距離は離れない。ナンティも同時に地を蹴りなおしている。
これはフレディの指示だった。
炎魔法と光魔法の両方が使えるナンティは女に対して相性が良い、フレディはそう確信していた。
密着に近い距離であるほど良い、そう指示していた。
防御魔法は炎の進行を止めることができるが、左右から回り込んで伝わってくる熱は防ぎようが無いからだ。
近距離で防御魔法を展開されたら同じ手で返せる。光の盾をぶつけ合いながら片手で炎を浴びせればいい。自分のように一方的に押し返されることは無い。
近距離での体術戦闘で圧倒されなければ有利を取り続けられる! フレディはそう叫び、ナンティはその叫びに応えていた。
だが、
「……!」
フレディの表情は緊張で張り詰めていた。
ナンティが女に対して接近戦で有利、それは確信している。
が、それはあくまで一対一の話。
その裏を突く手があることをフレディはわかっていた。
直後、
「……っ!」
フレディの眉間のしわはさらに深くなった。
女はそこを突いてくる、という予想が的中してしまったからだ。
同じ表情をナンティも浮かべていた。
その手から炎が撃てなくなっていたからだ。
女がこちらの仲間を背にしたからだ。
乱戦を利用した単純な手、同士討ち狙い。
利用されている、女の背後にいる兵士はすぐに気付いた。
だから兵士は、
「このぉっ!」
俺を利用するな、という思いを叫びながらその背に斬りかかった。
が、
「ごぇっ!」
その刃は一閃すらさせてもらえなかった。
後ろ回し蹴りの型で放たれた光る足裏が刃を蹴り払い、同時に繰り出された石突きが兵士のみぞおちに打ち込まれていた。
ほぼ同時に、ナンティも兵士の動きに合わせて光る刃を繰り出していたが、その斬撃は槍先で器用に払われていた。
兵士のみぞおちに石突きを突き刺したままでの受け流し。
その曲芸のような技を披露しながら、女は石突きに体重を乗せるように兵士に向かって軽く跳躍。
何を――その答えは直後に痛みと共に明らかになった。
「ぅげっ!」
心臓を踏み抜くような蹴りが兵士の胸に炸裂。
女はその反動を利用して跳躍。
この動きをナンティは読んでいた。
跳躍の真下にもぐりこむように地を蹴る。
女もその動きを読んでいた。間違い無く追いかけてくると予想していた。
だから女は兵士を踏み台にすると同時に迎撃動作に入っていた。
体を横に回転させて繰り出すなぎ払い。
それはムチのようにしなってみえる一撃であったが、ナンティもその迎撃は読んでいた。
炎を纏ったナンティの刃と白い槍先がぶつかり合い、火の粉と火花が散る。
女は着地直前にさらに一閃。刃が再び交差する。
直後に放たれた炎と援護射撃の光弾を屋台の影に隠れて防ぐ。
その屋台に向かってナンティは踏み込み、前蹴りを叩き込んだ。
蹴り飛ばす勢いで倒れた屋台を避けつつ、ナンティから逃げるように女が地を蹴る。
その女の行く手を塞ぐように三人の兵士が立ちはだかる。
ナンティに対しても同じ。敵の二つの影がナンティの背後にまとわりつく。
状況は即座に変化。ナンティと女それぞれに迫った影と兵士に対し、別の兵士と影が「やらせるか」と突っ込む。
乱戦に一変したその状況に対して最初に変化の一石を投じたのは女であった。
影にけん制を指示して動きを制限させつつ、槍を三閃。
障害物が多いことを意識させぬ高速の連撃。
さらに影の追撃によって三人の兵士が三つの赤い華と散る。
三つの影は女の次の指示を受けてナンティのほうに足先を向けた。
対し、女は違っていた。
女の足先が示す方向、そこにはフレディの姿があった。
だから全員がその思いに対して同時に応えた。
「「「雄応ッ!」」」
ナンティは応えると同時に女に向かって踏み込んだ。
迎撃で繰り出された突きを受け流しながら、炎を発射。
これに対し女は防御魔法を展開しながら後退。
しかし距離は離れない。ナンティも同時に地を蹴りなおしている。
これはフレディの指示だった。
炎魔法と光魔法の両方が使えるナンティは女に対して相性が良い、フレディはそう確信していた。
密着に近い距離であるほど良い、そう指示していた。
防御魔法は炎の進行を止めることができるが、左右から回り込んで伝わってくる熱は防ぎようが無いからだ。
近距離で防御魔法を展開されたら同じ手で返せる。光の盾をぶつけ合いながら片手で炎を浴びせればいい。自分のように一方的に押し返されることは無い。
近距離での体術戦闘で圧倒されなければ有利を取り続けられる! フレディはそう叫び、ナンティはその叫びに応えていた。
だが、
「……!」
フレディの表情は緊張で張り詰めていた。
ナンティが女に対して接近戦で有利、それは確信している。
が、それはあくまで一対一の話。
その裏を突く手があることをフレディはわかっていた。
直後、
「……っ!」
フレディの眉間のしわはさらに深くなった。
女はそこを突いてくる、という予想が的中してしまったからだ。
同じ表情をナンティも浮かべていた。
その手から炎が撃てなくなっていたからだ。
女がこちらの仲間を背にしたからだ。
乱戦を利用した単純な手、同士討ち狙い。
利用されている、女の背後にいる兵士はすぐに気付いた。
だから兵士は、
「このぉっ!」
俺を利用するな、という思いを叫びながらその背に斬りかかった。
が、
「ごぇっ!」
その刃は一閃すらさせてもらえなかった。
後ろ回し蹴りの型で放たれた光る足裏が刃を蹴り払い、同時に繰り出された石突きが兵士のみぞおちに打ち込まれていた。
ほぼ同時に、ナンティも兵士の動きに合わせて光る刃を繰り出していたが、その斬撃は槍先で器用に払われていた。
兵士のみぞおちに石突きを突き刺したままでの受け流し。
その曲芸のような技を披露しながら、女は石突きに体重を乗せるように兵士に向かって軽く跳躍。
何を――その答えは直後に痛みと共に明らかになった。
「ぅげっ!」
心臓を踏み抜くような蹴りが兵士の胸に炸裂。
女はその反動を利用して跳躍。
この動きをナンティは読んでいた。
跳躍の真下にもぐりこむように地を蹴る。
女もその動きを読んでいた。間違い無く追いかけてくると予想していた。
だから女は兵士を踏み台にすると同時に迎撃動作に入っていた。
体を横に回転させて繰り出すなぎ払い。
それはムチのようにしなってみえる一撃であったが、ナンティもその迎撃は読んでいた。
炎を纏ったナンティの刃と白い槍先がぶつかり合い、火の粉と火花が散る。
女は着地直前にさらに一閃。刃が再び交差する。
直後に放たれた炎と援護射撃の光弾を屋台の影に隠れて防ぐ。
その屋台に向かってナンティは踏み込み、前蹴りを叩き込んだ。
蹴り飛ばす勢いで倒れた屋台を避けつつ、ナンティから逃げるように女が地を蹴る。
その女の行く手を塞ぐように三人の兵士が立ちはだかる。
ナンティに対しても同じ。敵の二つの影がナンティの背後にまとわりつく。
状況は即座に変化。ナンティと女それぞれに迫った影と兵士に対し、別の兵士と影が「やらせるか」と突っ込む。
乱戦に一変したその状況に対して最初に変化の一石を投じたのは女であった。
影にけん制を指示して動きを制限させつつ、槍を三閃。
障害物が多いことを意識させぬ高速の連撃。
さらに影の追撃によって三人の兵士が三つの赤い華と散る。
三つの影は女の次の指示を受けてナンティのほうに足先を向けた。
対し、女は違っていた。
女の足先が示す方向、そこにはフレディの姿があった。
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