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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(31)
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剣と槍がぶつかり合い、火花が散る。
かのように思えたが、
(! 軽い?!)
まるで引き込まれるかのような手ごたえの軽さに、フレディは姿勢を崩した。
受け流された、それに気付いた直後に、いや、ほぼ同時に、
「ぁぐっ!」
槍の底部、石突きと呼ばれる部位がフレディの顔面に横殴りに叩きつけられた。
中ほどに持った握り手を支点にして槍を回転させ、受け流しつつ同時に反撃する返し技。
それを食らったことを理解しながら、フレディは姿勢を戻しつつ再び前に踏み込んだ。
が、地を蹴った瞬間、
「ぐぇっ!」
待ち構えていたように、突き出された石突きがフレディの腹に打ちこまれた。
腹の中のものすべてが逆流するかのような感覚。
であったが、フレディはその感覚をすべて無視した。
嗚咽を気力でねじ伏せながら、石突きを左手で掴む。
距離を取り直されたら終わり、離れたら終わり、そんな意識がフレディをそうさせていた。
とにかく密着して剣を振る、フレディにある選択肢はそれだけであり、フレディはそうしようとしたが、
「がっ!?」
その選択肢は冷たく否定された。
女の左手から展開された防御魔法、それがフレディの選択肢を完全に拒絶していた。
光の壁に突き飛ばされながらフレディは思い出した。魔法使いにはこれがあることを。
接近戦を拒否できる簡単な選択肢。
これがあるから魔法使いは強い。これが突破できなければ手も足も出ない。
銃があれば突破できる。だから自分は調子に乗っていた。
でも今は弾が無い。簡単に突破する手段が無い。
しかも押し返された。少し距離を取られた。
その事実は絶望となってフレディの心を覆ったが、
「ぅお雄雄っ!」
フレディの足は勝手に前に地を蹴っていた。
絶望の霧を晴らす手段なんて思いついていない。
しかし女は展開した防御魔法を利用した嵐の体勢に入り始めている。
何かしないと死ぬ、止まっていたら死ぬ、その意識だけでフレディの足は動いていた。
かのように思えたが、
(! 軽い?!)
まるで引き込まれるかのような手ごたえの軽さに、フレディは姿勢を崩した。
受け流された、それに気付いた直後に、いや、ほぼ同時に、
「ぁぐっ!」
槍の底部、石突きと呼ばれる部位がフレディの顔面に横殴りに叩きつけられた。
中ほどに持った握り手を支点にして槍を回転させ、受け流しつつ同時に反撃する返し技。
それを食らったことを理解しながら、フレディは姿勢を戻しつつ再び前に踏み込んだ。
が、地を蹴った瞬間、
「ぐぇっ!」
待ち構えていたように、突き出された石突きがフレディの腹に打ちこまれた。
腹の中のものすべてが逆流するかのような感覚。
であったが、フレディはその感覚をすべて無視した。
嗚咽を気力でねじ伏せながら、石突きを左手で掴む。
距離を取り直されたら終わり、離れたら終わり、そんな意識がフレディをそうさせていた。
とにかく密着して剣を振る、フレディにある選択肢はそれだけであり、フレディはそうしようとしたが、
「がっ!?」
その選択肢は冷たく否定された。
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でも今は弾が無い。簡単に突破する手段が無い。
しかも押し返された。少し距離を取られた。
その事実は絶望となってフレディの心を覆ったが、
「ぅお雄雄っ!」
フレディの足は勝手に前に地を蹴っていた。
絶望の霧を晴らす手段なんて思いついていない。
しかし女は展開した防御魔法を利用した嵐の体勢に入り始めている。
何かしないと死ぬ、止まっていたら死ぬ、その意識だけでフレディの足は動いていた。
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