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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか

第十七話 地獄の最後尾(30)

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 フレディの目の前で嵐が広がる。
 頼れるのは腰から抜いた一本の剣のみ。
 条件は成立済み。記憶の封印は解けた。あとは実践するのみ。
 期待した通り、女は今回も完璧だった。
 同じ型、同じ魔力制御、すべて機械のよう。
 ゆえに放たれた嵐も同じだった。
 渦巻いて迫る蛇のような波の形、その蛇の位置と個々の大きさ、軌道、すべてが同じ。
 だからフレディは気付いた。ここが通り抜けられそうだ、と。
 誤差はわずか。ゆえに修正の必要も無かった。
 背を低くしながら踏み込み、刃で一匹の蛇を受け止める。
 剣の役目はこれで終わり。
 直後に前転を開始。軽く足を浮かせて足元の蛇を避けながら飛び込む。
 体を丸めて上からの蛇を避けながら前へ。
 道は狭い。誤差もある。ゆえにいくつかの蛇に体を撫でられる。
 しかし子蛇。傷は小さい。
 この程度の被害は想定済み。
 やはり女は完璧だった。
 そしてフレディの計算も最後まで完璧だった。

「!」

 嵐を突破した、どうやって、その答えまで読み取った上で女は驚きの表情を浮かべた。
 この瞬間、女は完璧さを失っていた。思考が止まっていた。
 同じ高速演算の使い手。その停止時間は数瞬。
 それでも天秤は傾いた。フレディは有利を取った。女は思考も構えも受け身になった。
 槍を横に構えたその防御に対し、フレディは、

「えええやああぁっ!」

 くそったれの叫びの続きを気勢に変えて、剣を振り下ろした。
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