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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(15)
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そしてデュランはその場にうずくまるように膝をついた。
背中にはあちこちに穴が開いていた。
感知能力で状態を調べる。
波の反響を利用すれば体内の状態もある程度わかる。
貫通はしていない。全ての弾が体内に残ってる。
幸いなことに、すべて筋肉と骨で止められているようであった。
重要な内蔵は傷ついていない。
しかしこのまま弾を放置しておけば病気になる。
だが、その手術をする時間は無さそうであった。
敵が接近してくるのを感じる。
みな、逃げるのが間に合わずに倒されたか、自分と同じように遮蔽物の陰に隠れたようだ。
せめて簡単な止血だけでも――そう思ったナンティはデュランの体にきつく布を巻きつけた。
ついでに自分の傷も治療する。
もう時間が無い、そう判断したナンティはデュランの腕を掴みながら声を上げた。
「立って! 逃げるぞ!」
しかしデュランは立ち上がろうとせず、口を開いた。
「俺はここまでだ。置いて逃げろ」
デュランは覚悟を決めていたが、ナンティはその覚悟を許さなかった。
「何を言ってる! お前らしくも無い! さっさと立て!」
叫びながらナンティはデュランをひっぱり、力づくで立たせた。
「ほら、走るぞ!」
下手糞な二人三脚のように足を動かし始める。
筋肉質とはいえ、ナンティは女。その走りは子供よりも遅い。
目指すは裏口。
敵が玄関に迫ってきているのが感じ取れる。
間に合わない。明らかに敵のほうが早い。こちらの背中が相手の目に映ってしまう。
だが、ナンティは「きわどいが助かる可能性は高い」と踏んでいた。
なぜなら――その答えは直後に裏口を蹴り開ける音と共に現れた。
「二人共こっちだ!」
ナンティとデュランの窮地を感じ取った仲間達が裏に回ってくれていたからだ。
直後、敵が玄関から姿を現す。
双方共に感知能力者。
ゆえに敵も既に銃を構えていた。
双方の意識が交錯し、二つの銃口が同時に火を吹く。
「っ!」
敵の銃弾がナンティの肩をかすめる。
対し、味方の銃弾は敵の胸に穴を開けていた。
だが、状況はまだ解決していなかった。
直後に次の敵が銃を構えながら現れる。
「くそ!」
装填が間に合わないゆえに、兵士は壁の後ろに身を隠した。
ほぼ同時にぬけたナンティとデュランもころがるように裏口を通り抜ける。
そしてナンティは叫んだ。
「誰か! 手を貸してくれ!」
こっちに十人ほどの仲間が走ってきているのが見えた。
その先頭の兵士に向かってナンティは声を上げた。
「デュランがひどい怪我なんだ! 頼めるか!?」
兵士は頷きを返しをながら駆け寄り、ナンティに代わってデュランの肩を持った。
二人で左右の肩を担ぎ、大男を持ち上げる。
そして二人は走り出そうとしたが、ナンティがついてくる気配を見せないゆえに声をかけた。
「おい、お前は逃げないのか?!」
右腕をやられていることに対しての声であったが、ナンティはまだ己を負傷者だとは認識していなかった。
「私はまだ戦える! できるだけ敵をひきつける!」
背中にはあちこちに穴が開いていた。
感知能力で状態を調べる。
波の反響を利用すれば体内の状態もある程度わかる。
貫通はしていない。全ての弾が体内に残ってる。
幸いなことに、すべて筋肉と骨で止められているようであった。
重要な内蔵は傷ついていない。
しかしこのまま弾を放置しておけば病気になる。
だが、その手術をする時間は無さそうであった。
敵が接近してくるのを感じる。
みな、逃げるのが間に合わずに倒されたか、自分と同じように遮蔽物の陰に隠れたようだ。
せめて簡単な止血だけでも――そう思ったナンティはデュランの体にきつく布を巻きつけた。
ついでに自分の傷も治療する。
もう時間が無い、そう判断したナンティはデュランの腕を掴みながら声を上げた。
「立って! 逃げるぞ!」
しかしデュランは立ち上がろうとせず、口を開いた。
「俺はここまでだ。置いて逃げろ」
デュランは覚悟を決めていたが、ナンティはその覚悟を許さなかった。
「何を言ってる! お前らしくも無い! さっさと立て!」
叫びながらナンティはデュランをひっぱり、力づくで立たせた。
「ほら、走るぞ!」
下手糞な二人三脚のように足を動かし始める。
筋肉質とはいえ、ナンティは女。その走りは子供よりも遅い。
目指すは裏口。
敵が玄関に迫ってきているのが感じ取れる。
間に合わない。明らかに敵のほうが早い。こちらの背中が相手の目に映ってしまう。
だが、ナンティは「きわどいが助かる可能性は高い」と踏んでいた。
なぜなら――その答えは直後に裏口を蹴り開ける音と共に現れた。
「二人共こっちだ!」
ナンティとデュランの窮地を感じ取った仲間達が裏に回ってくれていたからだ。
直後、敵が玄関から姿を現す。
双方共に感知能力者。
ゆえに敵も既に銃を構えていた。
双方の意識が交錯し、二つの銃口が同時に火を吹く。
「っ!」
敵の銃弾がナンティの肩をかすめる。
対し、味方の銃弾は敵の胸に穴を開けていた。
だが、状況はまだ解決していなかった。
直後に次の敵が銃を構えながら現れる。
「くそ!」
装填が間に合わないゆえに、兵士は壁の後ろに身を隠した。
ほぼ同時にぬけたナンティとデュランもころがるように裏口を通り抜ける。
そしてナンティは叫んだ。
「誰か! 手を貸してくれ!」
こっちに十人ほどの仲間が走ってきているのが見えた。
その先頭の兵士に向かってナンティは声を上げた。
「デュランがひどい怪我なんだ! 頼めるか!?」
兵士は頷きを返しをながら駆け寄り、ナンティに代わってデュランの肩を持った。
二人で左右の肩を担ぎ、大男を持ち上げる。
そして二人は走り出そうとしたが、ナンティがついてくる気配を見せないゆえに声をかけた。
「おい、お前は逃げないのか?!」
右腕をやられていることに対しての声であったが、ナンティはまだ己を負傷者だとは認識していなかった。
「私はまだ戦える! できるだけ敵をひきつける!」
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