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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(9)
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(向こうも始まったか)
開戦の発砲音はフレディの耳にも届いていた。
だから思った。
(こっちも急がないとな)
なにを急ぐのか、それはフレディの眼下に広がっていた。
フレディは高い屋根の上から感知能力を研ぎ澄ませ、隠れている人の捜索を行っていた。
正常な人と狂人では脳波が違うゆえに、識別は簡単であった。
さらに、正常な人間は恐怖の感情ばかり発しているゆえになおさらであった。
フレディはその情報を隊長達に心の声で送っていた。
(正面突き当たりの家に数人隠れています)
大きな声を、大きな脳波を発すれば敵の感知能力者に気付かれてしまうが、今はその心配は無いだろうとフレディは踏んでいた。
フレディは経験で知っていた。敵の狂人達は感知能力者かそうでないかによって行動パターンが違うことを。
感知能力者達は群れを作り、軍隊のような連携を取る。こいつらの戦い方は普通の人間と大差無い。
しかしそうでない者はまさに言葉通りの狂人のような動きをする。無謀な突撃を平然とやってくる。
現に今もそうであった。
フレディはそのことを隊長に知らせた。
(右から敵が二人来ます)
隊長達が突き当たりの家に到着した直後、右方向からそれが走ってくるのが隊長達の視界に入った。
数の差は歴然だが、狂人達は足を止めない。
そして戦いは十秒ほどで予想通りの結果に終わった。
それを感じ取りながらフレディは思った。
やはりぜんぜん違うと。
ここに来る前の、デュラン達と合流した時の戦いとはぜんぜん違う。
あいつらはちゃんと連携を取っていた。
この街にも感知能力者はいたはずだ。
感知能力者は事前に危険を察知できる。だからみな先に逃げたとも考えられるが、さすがに一人もいないのは変だ。
感知能力者だけどこかに移動させたのだろうか? ここにいるやつらはただの時間稼ぎ?
いや、時間稼ぎならなおさら感知能力者を使ったほうがいい。こいつらはまるで使い捨てのコマのような扱いだ。
どういうことなのか?
(……)
いくら考えてもフレディにはその答えは見出せなかった。
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