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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(4)
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デュラン達は無事に敵の狂気に満ちた猛攻をしのぎ、そして振り切った。
が、
「……マジかよ」
既に同じ狂気に包まれていた街を前に、兵士の一人は絶望の声を漏らした。
自分達が戦っている間に相手は別働隊を回りこませていたのだ。
二階建て以上の物件が所狭しと立ち並ぶ都市といっていいその街からは、あちこちから悲鳴が上がっていた。
その恐怖と混沌を前に、別の兵士は尋ねた。
「……どうする?」
「……っ」
隊長は答えなかった。即答できなかった。
だから兵士達は次々と声を上げた。
「逃げるしかねえだろ!」
「でもどこに?」
「北に戻ってこのことを知らせるべきだろう」
直後、フレディが口を開いた。
「それは必要無い。俺の仲間がもう向かってる」
フレディは「それに」と言葉を繋げた。
「ルイス司令官はこれを予想していた。だから本隊もきっと出陣してる」
おそらく魔王の脱走は部隊を出撃させるための自作自演、フレディはそう確信していたが、その思いは言葉にしなかった。
「「「……」」」
フレディの言葉に兵士達は選択肢を失ったが、
「でも、仮に本隊がこっちに向かってきてるとしても、いつ到着するんだよ?」
言葉に「きっと」をつけたことが仇になった。
逃げたいという気持ちは揺るいでいなかった。
しかし直後、その気持ちに対してデュランが口を開いた。
「……この規模の街でならば、これだけ家屋が密集しているのであれば戦う手段はある」
これに隊長が反応した。
「遮蔽物を利用した接近戦か?」
デュランは頷きを返したが、その頷きに兵士達の多くは賛同できなかった。
そしてそれは隊長も例外では無かった。
なぜなら――単純なその答えを兵士の一人が声に出した。
「俺達だけではどうにもならないだろ、これは」
これにデュランは反論した。
「勝つ必要は無い。いや、これは勝てない。だが、俺達だけでも時間稼ぎはできる」
デュランがそう言った直後、街から違う音が響いた。
それは戦闘音に聞こえた。
気勢のような声も聞こえる。
これに兵士は口を開いた。
「戦ってるやつらがいるぞ!」
「自警団か?」
その戦闘音は悲鳴と比べれば小さなものであったが、直後に響いた新たな声に皆の心は揺れた。
それは明らかに避難誘導であった。
「間違い無い! 住民を逃がしてるやつがいる!」
自分達以外にも戦えるやつらがいる、戦ってるやつらがいる、その事実は直後に勇気に変わった。
隊長はその勇気が揺らぐ前に声を上げた。
「総員近接戦闘準備! 我らも加勢するぞ!」
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