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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか

第十七話 地獄の最後尾(3)

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   ◆◆◆

 もっと力を! 『我々』はそう叫び続け、求め続けてきた。
 それは魂に限ったものでは無かった。
 肉の体をより機能的に、かつ効率良く運用するための知識や技術もむさぼるように求めてきた。
 そのために人間の中に溶け込み、観察し調査し続けてきた。
 我々は人間から多くのことを学んだ。
 我々は人間のことが羨ましかった。
 それは人間性と思考力によって作り出される文明社会に限ったものでは無い。
 光差す地上! なんと羨ましきものか!
 いくら求めても太陽は手に入らなかった。擬似的な物の作り方もわからなかった。
 あの眩さ! そして暖かさ! 父に見守られているようなあの感覚! その感覚の中で育まれる色鮮やかな世界! すべてが素晴らしい!
 皮肉なことに、その甘美さを知ったのは人間の体を奪ってからであった。
 我らの肉体には目が無いからだ。
 あるのは力強く発達した顎と腕、そして必要以上にふくらんだ巨体だけ。
 獲物の匂いや体温を検知して捕らえ、食らう。我々の一生はその繰り返し。
 しかし我が一族は特別だった。
 我々は人間が言うところの虫や精霊を生み出すことが出来た。
 それで我々は外の世界のことを知ることが出来た。
 だが、できるのは知ることだけだった。
 我々の体では地上の環境に耐えられないからだ。
 なんと残酷なことか。
 いくら知恵の実をむさぼろうとも、それを活かす手段が無い。我々の肉体と我々が住む世界ではどうしようもない。
 できるのは知ることだけ。
 最初は我慢した。
 だが、知識から生まれる欲求は大きくなり続けた。
 そして我々はついに耐えられなくなった。
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