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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十五話 一つの象徴の終わり(6)
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◆◆◆
その感覚ははるか後方の、街のそとで待機しているシャロンにまで響いていた。
「……っ」
ゆえに、シャロンの体は「ぞくり」と、高揚感に震えた。
原因はもう一つあった。
それはやはりルイスの凄まじさであった。
こんなに熱い彼は今まで見たことが無い。
おそらく、これが本当の彼の姿なのだろう。
灰のような人、それがルイスの第一印象だった。
しかし彼の心は燃え尽きてはいなかった。
その灰は赤く鈍く光っていた。
そんな荒涼とした心の中から、時々ほのかな火柱が立つことがあった。
悪い魔法使いを見聞きした時だ。
同時に彼の記憶が漏れ出すことがあった。
それは明らかに時代が違っていた。太古の時代の映像のように見えた。
私も長生きをしているが、それでもルイスがどれほど長い時間を歩んできたのか想像もつかない。
その古い映像と共にあふれ出す感情はいつも同じだった。
とても大きな喪失感と、敗北の苦汁。
きっと、彼は悪い魔法使いにとても酷い目に遭わされたのだろう。
だからなのだろう、彼はいつも魔法が使えない体を選んでいる。彼は心の底から魔法使いが嫌いなのだ。
魔王使いを憎むあまり、不利であることが明らかな弱い体を選んで立ち向かう、はっきり言って狂人だ。
しかしそんな狂人だからこそ、私に力を貸してくれたのだろう。
魔王に敗れた私は国を奪われ、ほぼすべてを失った。
だけどルイスはそんな私に二つ返事で全面的な協力を約束してくれた。
絶望的な戦力差とか、そんな数字のことはまるで気にもしていなかった。
それから長い時間をかけて私達は再びここまで這い上がってきた。
しかしその狂おしき関係もこの戦いを最後に終わってしまうのかもしれない。
「……」
シャロンはその感覚を噛み締めた。
感慨深いと同時に、喪失感のようなものも少し混じっていた。
が、直後、
「!?」
シャロンは何か大きなものが動き出したのを感じ取った。
その感覚ははるか後方の、街のそとで待機しているシャロンにまで響いていた。
「……っ」
ゆえに、シャロンの体は「ぞくり」と、高揚感に震えた。
原因はもう一つあった。
それはやはりルイスの凄まじさであった。
こんなに熱い彼は今まで見たことが無い。
おそらく、これが本当の彼の姿なのだろう。
灰のような人、それがルイスの第一印象だった。
しかし彼の心は燃え尽きてはいなかった。
その灰は赤く鈍く光っていた。
そんな荒涼とした心の中から、時々ほのかな火柱が立つことがあった。
悪い魔法使いを見聞きした時だ。
同時に彼の記憶が漏れ出すことがあった。
それは明らかに時代が違っていた。太古の時代の映像のように見えた。
私も長生きをしているが、それでもルイスがどれほど長い時間を歩んできたのか想像もつかない。
その古い映像と共にあふれ出す感情はいつも同じだった。
とても大きな喪失感と、敗北の苦汁。
きっと、彼は悪い魔法使いにとても酷い目に遭わされたのだろう。
だからなのだろう、彼はいつも魔法が使えない体を選んでいる。彼は心の底から魔法使いが嫌いなのだ。
魔王使いを憎むあまり、不利であることが明らかな弱い体を選んで立ち向かう、はっきり言って狂人だ。
しかしそんな狂人だからこそ、私に力を貸してくれたのだろう。
魔王に敗れた私は国を奪われ、ほぼすべてを失った。
だけどルイスはそんな私に二つ返事で全面的な協力を約束してくれた。
絶望的な戦力差とか、そんな数字のことはまるで気にもしていなかった。
それから長い時間をかけて私達は再びここまで這い上がってきた。
しかしその狂おしき関係もこの戦いを最後に終わってしまうのかもしれない。
「……」
シャロンはその感覚を噛み締めた。
感慨深いと同時に、喪失感のようなものも少し混じっていた。
が、直後、
「!?」
シャロンは何か大きなものが動き出したのを感じ取った。
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