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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十三話 女王再臨(3)
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そんなある夜――
工房での作業を終えたルイスは自室では無く、新しい司令室のほうに足を運んだ。
司令室には十名ほどの男女がテーブルについてルイスを待っていた。
そのうちの一人はサイラスであった。
入室したルイスはその顔ぶれを一瞥したあと、
「全員時間どおりだな。では始めよう」
秘密の会議の始まりを宣言した。
しかしこれに一人の男が口を開いた。
「話し合いの人数はこれだけなのか?」
将軍の立場である男が不安の色が混じった声でそう尋ねると、ルイスは答えた。
「いつどこで心を読まれるかわからない以上、大勢が集まるのは危険だと判断した」
そしてルイスは司令部を見回しながら言葉を続けた。
「新生魔王軍が誕生して以降、我々はひたすらに足場の強化と備蓄、そして戦力の隠蔽に力を入れ続けてきた。司令部をここに移したのもそのためだ」
このセリフは半分本当で半分ウソという感じだったが、それは今はどうでもいいことだった。
しかし次の言葉は全て本当だった。
「前線の兵士達の一部を一度下げたのもそうだ。あれは陽動だ。無意味な移動に敵のスパイを張り付かせて、我々や見られたくないものから遠ざけるためだ。そのような陽動の影で、職人や工房の一部を前線側に移動させておいた」
職人という一言から、隠蔽しているものについては察しがついた。
それがなんなのかについて、直接言葉にしてほしいところであったが、
「そして職人達の作業は順調に進んでいる。だから君達をここに呼んだというわけだ」
ルイスはやはり何も言わなかった。
そしてルイスはそれが将軍達を場に呼んだ理由だと言った。
これに、将軍の男が「ということは、つまり――」とその意を尋ねると、ルイスは頷きを返して答えた。
「そうだ。決戦の時は近い」
直後、ルイスは将軍達が感じていたことを言葉にした。
「先に言っておくと、主役は君達では無い。敵もすぐにそれに気づいて動くはずだ。君達にはその時に主力部隊を守る仕事をしてもらうことになるだろう」
ルイスが言っている「職人達の作業」とはなんなのか。
それがこの場で明かされることは無かった。
サイラスはルイスの心を読んでそれを探ろうとしたが、複雑に暗号化されているルイスの心は読み解くのはやはり難しかった。
だが、それでも少しだけは掴むことができた。
それは「新しい銃」と「大きな何か」であった。
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