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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十一話 森の中の舞踏会(15)
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試験内容は直後に目に明らかになった。
凄まじい光弾の連射。
急所などの特定の部位を狙った弾幕では無い。アルフレッドの動きを止めることを重視した攻撃。
足元への攻撃も多い。
視界が白く染まりそうなほどの光の弾幕。
しかし精霊を最大展開している今のアルフレッドにはさしたる攻撃では無い。
軌道を瞬時に読み、最適な回避行動を選択する。
隙間を縫いながら刃と足による反撃を行う。
だからアルフレッドは「この程度ならば」という思いを響かせた。
直後、試験の様相は変わった。
弾幕の中に爆発魔法が混じるようになったのだ。
「っ!」
背後で起きた爆発に、アルフレッドの表情が歪む。
衝撃波に体があおられ、姿勢が強制的に変えられる。
しかしそれ自体は歪みの原因では無かった。
この程度ならばまだ姿勢制御できる。回避行動を取れる。
問題は精霊が吹き飛ばされたこと。
この爆発魔法は精霊を狙った攻撃だったのだ。
精霊を維持するのと、一から作り直すのでは脳にかかる負荷が違う。
そして短時間とはいえ、解析能力が低下する。
「~っ!」
直後、アルフレッドの表情がさらに歪んだ。
爆発音が生じる周期が早くなっている。弾幕の中に爆発魔法が混じる頻度は増してきている。
爆風に体が煽られ、千鳥足になる。
しかしそれでもアルフレッドは倒れず、弾幕を避け続けていたが、
「ぐっ!」
ある爆発音と同時にアルフレッドは悲鳴を漏らした。
これまでのどれよりも近距離での爆発。
防御魔法で受けたがその光の盾は瞬時に破れ、アルフレッドの両足は地面から離れた。
真右方向にふきとばされるアルフレッド。
そこへ待ち受けていたかのように光弾が飛来。
「疾ッ!」
左の刃を振り下ろして叩き落す。
その勢いのまま刃を地面に突き刺し、ふきとびの勢いを殺す。
刃と地面の削り合いが終わると同時に、グレイブディガーの準備を開始。
同時に左手を支点にして逆立ちしながら、体を正面に回転。
その回転の勢いを利用して右の刃で三日月を放ち、次の光弾を撃墜。
逆立ちしたまま姿勢を制御し、回避行動を取る。
そして迫る次の光弾群の軌道から体が外れた瞬間、
「せぇやっ!」
アルフレッドは左の刃を振り上げ、グレイブディガーを放った。
土を押し上げるその反動を利用して後方に小さく跳び、体勢を逆立ちから戻す。
直後、放たれた嵐が爆発魔法とぶつかり合った。
「!」
瞬間、アルフレッドは感じ取った。
全ての爆発魔法を撃墜できなかったのを。
刃を切り返して撃墜する? いや、二本の三日月では足りない。十字に交差させて嵐に変えられるほどの時間的余裕も無い。
だからアルフレッドは斜め後方に鋭く地を蹴った。
同時に左の刃を振るい、右手の刃を逆手持ちに切り替えながら防御魔法を展開。
直後、アルフレッドの眼前でそれらは同時に爆裂した。
「がっは!」
防御魔法が一瞬で破れ、肺から押し出された空気が悲鳴に変わる。
だが、アルフレッドは悲鳴を漏らしながら、受身の動作に入った。
まずは体勢を立て直して、それから――受身の次へ思考を進ませた瞬間、アルフレッドは気付いた。
(!? マズ――っ!)
先の爆風でかなりの精霊が一時的な機能停止に陥ったことに。
次の動作のための情報収集を自身の感知能力では無く、精霊に頼っていた。
しかしその情報伝達が停止してしまった!
しまった、アルフレッドがそんな思いを響かせた直後、アリスの声が響いた。
(いいえ、マズくないわ! これは反撃の好機よ!)
アリスは既にアルフレッドが次に取るべき動きを計算していた。
アルフレッドは即座にその情報を受け取り、従った。
吹き飛ばされながら宙返りし、あおむけの姿勢をひっくり返す。
だがまだ地面に手はつかない。まだ早い。
アルフレッドはアリスを信じて指示を待った。
そして、
(今よ!)
声が響いたと同時にアルフレッドは二本の刃を地面に突き立てた。
二本の刃と地面が削り合い、吹き飛びの勢いが消え始める。
そしてその勢いが完全に消える直前、アルフレッドの足裏は支えとなるものをとらえた。
しかしそれは地面では無かった。
それは木だった。
アルフレッドは木の幹を足裏で掴んだまま、突き立てている二本の刃から地中に魔力を流し込んだ。
前方からは次の弾幕が迫ってきている。
しかし慌てる必要は無い、十分に間に合う、アルフレッドはアリスのその言葉を信じた。
地中の中で魔力が蓄積されていくのが手に伝わる。
その手ごたえが十分なものになった瞬間、
「でぇやぁっ!」
アルフレッドは裂帛の気合と共にそれを開放した。
同時にアルフレッドは木を力強く蹴り、前に飛び出した。
放った石の弾幕と光の嵐を追いかけながら二刀を振るう。
「雄雄雄ォッ!」
後ろから嵐を重ねるように、ひたすら十文字を放ち続ける。
前方で爆発音が次々と響き始める。
瞬間、アルフレッドは感じ取った。
爆発によって嵐が削られていくのを。
補充を続けても嵐が突破されるのは時間の問題。
だからそれまでに出来るだけ距離を詰める。
この機を逃したら次はいつ接近できるかわからない。
だから、
(もう少し……!)
押し負け始めた嵐に対してもう少し粘ってくれと願いながら、アルフレッドは足を前に出した。
そしてその願いから二歩進んだところでアリスが声を上げた。
(限界よ!)
その声と同時にアルフレッドは二刀を逆手持ちに切り替え、振り下ろした。
アルフレッドは地面に突き立てた刃から地中に魔力を流し込みながら願った。
好機を利用したこの最大の一撃も通じなければ絶望的だ、だから効いてくれ、アルフレッドはそんな願いをこめて、
「「グレイブディガー!」」
アリスと共にその思いを解き放った。
凄まじい光弾の連射。
急所などの特定の部位を狙った弾幕では無い。アルフレッドの動きを止めることを重視した攻撃。
足元への攻撃も多い。
視界が白く染まりそうなほどの光の弾幕。
しかし精霊を最大展開している今のアルフレッドにはさしたる攻撃では無い。
軌道を瞬時に読み、最適な回避行動を選択する。
隙間を縫いながら刃と足による反撃を行う。
だからアルフレッドは「この程度ならば」という思いを響かせた。
直後、試験の様相は変わった。
弾幕の中に爆発魔法が混じるようになったのだ。
「っ!」
背後で起きた爆発に、アルフレッドの表情が歪む。
衝撃波に体があおられ、姿勢が強制的に変えられる。
しかしそれ自体は歪みの原因では無かった。
この程度ならばまだ姿勢制御できる。回避行動を取れる。
問題は精霊が吹き飛ばされたこと。
この爆発魔法は精霊を狙った攻撃だったのだ。
精霊を維持するのと、一から作り直すのでは脳にかかる負荷が違う。
そして短時間とはいえ、解析能力が低下する。
「~っ!」
直後、アルフレッドの表情がさらに歪んだ。
爆発音が生じる周期が早くなっている。弾幕の中に爆発魔法が混じる頻度は増してきている。
爆風に体が煽られ、千鳥足になる。
しかしそれでもアルフレッドは倒れず、弾幕を避け続けていたが、
「ぐっ!」
ある爆発音と同時にアルフレッドは悲鳴を漏らした。
これまでのどれよりも近距離での爆発。
防御魔法で受けたがその光の盾は瞬時に破れ、アルフレッドの両足は地面から離れた。
真右方向にふきとばされるアルフレッド。
そこへ待ち受けていたかのように光弾が飛来。
「疾ッ!」
左の刃を振り下ろして叩き落す。
その勢いのまま刃を地面に突き刺し、ふきとびの勢いを殺す。
刃と地面の削り合いが終わると同時に、グレイブディガーの準備を開始。
同時に左手を支点にして逆立ちしながら、体を正面に回転。
その回転の勢いを利用して右の刃で三日月を放ち、次の光弾を撃墜。
逆立ちしたまま姿勢を制御し、回避行動を取る。
そして迫る次の光弾群の軌道から体が外れた瞬間、
「せぇやっ!」
アルフレッドは左の刃を振り上げ、グレイブディガーを放った。
土を押し上げるその反動を利用して後方に小さく跳び、体勢を逆立ちから戻す。
直後、放たれた嵐が爆発魔法とぶつかり合った。
「!」
瞬間、アルフレッドは感じ取った。
全ての爆発魔法を撃墜できなかったのを。
刃を切り返して撃墜する? いや、二本の三日月では足りない。十字に交差させて嵐に変えられるほどの時間的余裕も無い。
だからアルフレッドは斜め後方に鋭く地を蹴った。
同時に左の刃を振るい、右手の刃を逆手持ちに切り替えながら防御魔法を展開。
直後、アルフレッドの眼前でそれらは同時に爆裂した。
「がっは!」
防御魔法が一瞬で破れ、肺から押し出された空気が悲鳴に変わる。
だが、アルフレッドは悲鳴を漏らしながら、受身の動作に入った。
まずは体勢を立て直して、それから――受身の次へ思考を進ませた瞬間、アルフレッドは気付いた。
(!? マズ――っ!)
先の爆風でかなりの精霊が一時的な機能停止に陥ったことに。
次の動作のための情報収集を自身の感知能力では無く、精霊に頼っていた。
しかしその情報伝達が停止してしまった!
しまった、アルフレッドがそんな思いを響かせた直後、アリスの声が響いた。
(いいえ、マズくないわ! これは反撃の好機よ!)
アリスは既にアルフレッドが次に取るべき動きを計算していた。
アルフレッドは即座にその情報を受け取り、従った。
吹き飛ばされながら宙返りし、あおむけの姿勢をひっくり返す。
だがまだ地面に手はつかない。まだ早い。
アルフレッドはアリスを信じて指示を待った。
そして、
(今よ!)
声が響いたと同時にアルフレッドは二本の刃を地面に突き立てた。
二本の刃と地面が削り合い、吹き飛びの勢いが消え始める。
そしてその勢いが完全に消える直前、アルフレッドの足裏は支えとなるものをとらえた。
しかしそれは地面では無かった。
それは木だった。
アルフレッドは木の幹を足裏で掴んだまま、突き立てている二本の刃から地中に魔力を流し込んだ。
前方からは次の弾幕が迫ってきている。
しかし慌てる必要は無い、十分に間に合う、アルフレッドはアリスのその言葉を信じた。
地中の中で魔力が蓄積されていくのが手に伝わる。
その手ごたえが十分なものになった瞬間、
「でぇやぁっ!」
アルフレッドは裂帛の気合と共にそれを開放した。
同時にアルフレッドは木を力強く蹴り、前に飛び出した。
放った石の弾幕と光の嵐を追いかけながら二刀を振るう。
「雄雄雄ォッ!」
後ろから嵐を重ねるように、ひたすら十文字を放ち続ける。
前方で爆発音が次々と響き始める。
瞬間、アルフレッドは感じ取った。
爆発によって嵐が削られていくのを。
補充を続けても嵐が突破されるのは時間の問題。
だからそれまでに出来るだけ距離を詰める。
この機を逃したら次はいつ接近できるかわからない。
だから、
(もう少し……!)
押し負け始めた嵐に対してもう少し粘ってくれと願いながら、アルフレッドは足を前に出した。
そしてその願いから二歩進んだところでアリスが声を上げた。
(限界よ!)
その声と同時にアルフレッドは二刀を逆手持ちに切り替え、振り下ろした。
アルフレッドは地面に突き立てた刃から地中に魔力を流し込みながら願った。
好機を利用したこの最大の一撃も通じなければ絶望的だ、だから効いてくれ、アルフレッドはそんな願いをこめて、
「「グレイブディガー!」」
アリスと共にその思いを解き放った。
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