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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十話 神と精霊使い(10)
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◆◆◆
翌日、目的の木材を受け取ったアルフレッドは昼前には帰路についた。
しかしその帰路は来た道とは違っていた。
普通の道を歩いているわけでは無い。進路はやはり森の中。
そしてその方向は南では無く西。
ついでにちょっと何か狩って帰ろうか、そんな考えで西に進んでいた。
自慢の高速演算と身体能力で枝から枝へ跳びわたりながら、獲物を探す。
途中、小動物を見つけた。
ちょっと小さすぎるな、そう思ったアルフレッドはそれを見逃してさらに西に進んだ。
そしてしばらくして今度は鹿を見つけた。
立派な体格、獲物として不足無い。
が、
「……」
アルフレッドは『根拠無く』これを見逃した。
理由は『見逃した後に』できた。
あれは大きすぎる。持ち帰るのが面倒だ、と。
不自然というほどでは無いが、後付けの理由。
アルフレッドはそれに違和感を抱かず、さらに西に進んだ。
そしてアルフレッドはある場所で足を止めた。
それは小さな池。
アルフレッドはなんとなくその池のほとりに腰を下ろした。
少し休憩しよう、そんな理由。
「……」
そしてアルフレッドは何かを待つようにそこから動かなくなった。
長く座っていなければならないほどに疲れているわけでは無い。
ずっと見ていられるほどに景色が綺麗なわけでも無い。
特に理由の無い休憩。
いや、理由はあった。
本人も気付いていない理由。
いや、『気付けない』と言うほうが正しい。
いまのアルフレッドはそういう風になっていた。
アルフレッドはあるものの到着を待たされていた。
実は、アルフレッドは木材のために外出したわけでは無い。
それは建前。アルフレッドはここに呼ばれたのだ。本人も気付かない形で。
そして気付かぬうちに、それはアルフレッドのそばにまで近寄ってきていた。
それは池から湧き出してきていた。
それは植物のように地面から伸び始めていた。
枝から葉が落ちるように、降り始めていた。
大量の虫の群れ。
だがアルフレッドは気付かない。
そしてそれはアルフレッドを包み込んだ。
「!」
直後、突然走った鋭い頭痛に、アルフレッドは表情を歪めた。
しかしその痛みは一瞬。
痛みはすぐに別のものに変わった。
(……なんだ? すごく眠い)
すさまじい睡魔。
(前にもこんなことがあったような気がする)
まぶたが勝手に落ちてきてしまう。
抗いがたい眠気。
抗う理由も無かった。
だから、
(まあいいか。寝てしまおう)
アルフレッドはすぐに抵抗をやめた。
翌日、目的の木材を受け取ったアルフレッドは昼前には帰路についた。
しかしその帰路は来た道とは違っていた。
普通の道を歩いているわけでは無い。進路はやはり森の中。
そしてその方向は南では無く西。
ついでにちょっと何か狩って帰ろうか、そんな考えで西に進んでいた。
自慢の高速演算と身体能力で枝から枝へ跳びわたりながら、獲物を探す。
途中、小動物を見つけた。
ちょっと小さすぎるな、そう思ったアルフレッドはそれを見逃してさらに西に進んだ。
そしてしばらくして今度は鹿を見つけた。
立派な体格、獲物として不足無い。
が、
「……」
アルフレッドは『根拠無く』これを見逃した。
理由は『見逃した後に』できた。
あれは大きすぎる。持ち帰るのが面倒だ、と。
不自然というほどでは無いが、後付けの理由。
アルフレッドはそれに違和感を抱かず、さらに西に進んだ。
そしてアルフレッドはある場所で足を止めた。
それは小さな池。
アルフレッドはなんとなくその池のほとりに腰を下ろした。
少し休憩しよう、そんな理由。
「……」
そしてアルフレッドは何かを待つようにそこから動かなくなった。
長く座っていなければならないほどに疲れているわけでは無い。
ずっと見ていられるほどに景色が綺麗なわけでも無い。
特に理由の無い休憩。
いや、理由はあった。
本人も気付いていない理由。
いや、『気付けない』と言うほうが正しい。
いまのアルフレッドはそういう風になっていた。
アルフレッドはあるものの到着を待たされていた。
実は、アルフレッドは木材のために外出したわけでは無い。
それは建前。アルフレッドはここに呼ばれたのだ。本人も気付かない形で。
そして気付かぬうちに、それはアルフレッドのそばにまで近寄ってきていた。
それは池から湧き出してきていた。
それは植物のように地面から伸び始めていた。
枝から葉が落ちるように、降り始めていた。
大量の虫の群れ。
だがアルフレッドは気付かない。
そしてそれはアルフレッドを包み込んだ。
「!」
直後、突然走った鋭い頭痛に、アルフレッドは表情を歪めた。
しかしその痛みは一瞬。
痛みはすぐに別のものに変わった。
(……なんだ? すごく眠い)
すさまじい睡魔。
(前にもこんなことがあったような気がする)
まぶたが勝手に落ちてきてしまう。
抗いがたい眠気。
抗う理由も無かった。
だから、
(まあいいか。寝てしまおう)
アルフレッドはすぐに抵抗をやめた。
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