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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第八話 もっと力を(17)
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◆◆◆
そして交渉通り、フレディ達は二十丁の銃を失い、代わりに三頭の羊と数日の屋根を手に入れた。
だが、受け取る荷物はそれだけでは終わらなかった。
それは翌日に訪れた。
「え……すまん、なんだって? もう一回言ってくれ」
フレディは思わず聞き返した。
押しかけてきたその者が言った言葉が、あまりにも面倒すぎる要求だったからだ。
タチの悪い冗談か一時の気の迷い、そうであってほしいと思ったからだ。
だがその者は、長老の隣にいた若者はもう一度同じ言葉を吐いた。
「お前達と同行させてほしい」
本当に本気か? そう思ったフレディは確認するように尋ねた。
「それはつまり、俺達の仲間になりたいってことか?」
これに若者は頷きを返した。
その頷きに対し、フレディはさらに確認するように重ねて尋ねた。
「俺達の仲間になるってことは、魔王軍とやり合うってことなんだぞ?」
これにも若者は頷きを返し、口を開いた。
「足手まといにはならない。相手の心も読めるし、魔法も使える」
そして若者はもう仲間になったかのような口調で、
「ナンティだ。よろしく頼む」
簡単な自己紹介を済ませ、
「では早速、銃の使い方を教えてくれ。村の連中も一緒にだ」
仲間としての頼みごとをしてきたのであった。
◆◆◆
「あとは引き金を引くだけだ。それで弾丸が発射される」
フレディはすぐに村人達を集め、頼まれた仕事を終えた。
使い方の教授は当たり前のことだからだ。といっても、今回に限ってはフレディは言われるまでやらないつもりだったが。
そして村人達は個人で教えられたことの反復練習をやり始めた。
ナンティもその一人だった。
フレディは教えられた動作を繰り返すナンティに話しかけた。
「なあ、一つ聞きたいんだが」
ナンティが「なんだ?」と反応したのを確認してから、フレディは口を再び開いた。
「どうして俺達の仲間になりたいと思ったんだ? ちゃんとした理由が聞きたい」
「……」
ナンティはすぐには答えなかった。
答えは決まっていた。
ただ、浮かんだ言葉が軽そうに思えたからだ。
もっとふさわしい言葉は無いか、ナンティはそれを探した。
しかしすぐに面倒になった。
素直に、飾り気の無い言葉のほうがむしろ良い、そう考え直した。
そしてナンティは銃の練習を一回終えたあと、口を開いた。
「お前達と同じだよ。魔王に一矢報いたいだけだ。こんな森の中に逃げ隠れていたわたし達でも、意地は消えなかったということさ」
結局、ここの連中も同じだったのだ。
腹の中に炎をためこんでいる者達だったのだ。
そしてこの出会いから新たな縁が広がっていくことになるのであった。
第九話 ヘルハルトという男 に続く
そして交渉通り、フレディ達は二十丁の銃を失い、代わりに三頭の羊と数日の屋根を手に入れた。
だが、受け取る荷物はそれだけでは終わらなかった。
それは翌日に訪れた。
「え……すまん、なんだって? もう一回言ってくれ」
フレディは思わず聞き返した。
押しかけてきたその者が言った言葉が、あまりにも面倒すぎる要求だったからだ。
タチの悪い冗談か一時の気の迷い、そうであってほしいと思ったからだ。
だがその者は、長老の隣にいた若者はもう一度同じ言葉を吐いた。
「お前達と同行させてほしい」
本当に本気か? そう思ったフレディは確認するように尋ねた。
「それはつまり、俺達の仲間になりたいってことか?」
これに若者は頷きを返した。
その頷きに対し、フレディはさらに確認するように重ねて尋ねた。
「俺達の仲間になるってことは、魔王軍とやり合うってことなんだぞ?」
これにも若者は頷きを返し、口を開いた。
「足手まといにはならない。相手の心も読めるし、魔法も使える」
そして若者はもう仲間になったかのような口調で、
「ナンティだ。よろしく頼む」
簡単な自己紹介を済ませ、
「では早速、銃の使い方を教えてくれ。村の連中も一緒にだ」
仲間としての頼みごとをしてきたのであった。
◆◆◆
「あとは引き金を引くだけだ。それで弾丸が発射される」
フレディはすぐに村人達を集め、頼まれた仕事を終えた。
使い方の教授は当たり前のことだからだ。といっても、今回に限ってはフレディは言われるまでやらないつもりだったが。
そして村人達は個人で教えられたことの反復練習をやり始めた。
ナンティもその一人だった。
フレディは教えられた動作を繰り返すナンティに話しかけた。
「なあ、一つ聞きたいんだが」
ナンティが「なんだ?」と反応したのを確認してから、フレディは口を再び開いた。
「どうして俺達の仲間になりたいと思ったんだ? ちゃんとした理由が聞きたい」
「……」
ナンティはすぐには答えなかった。
答えは決まっていた。
ただ、浮かんだ言葉が軽そうに思えたからだ。
もっとふさわしい言葉は無いか、ナンティはそれを探した。
しかしすぐに面倒になった。
素直に、飾り気の無い言葉のほうがむしろ良い、そう考え直した。
そしてナンティは銃の練習を一回終えたあと、口を開いた。
「お前達と同じだよ。魔王に一矢報いたいだけだ。こんな森の中に逃げ隠れていたわたし達でも、意地は消えなかったということさ」
結局、ここの連中も同じだったのだ。
腹の中に炎をためこんでいる者達だったのだ。
そしてこの出会いから新たな縁が広がっていくことになるのであった。
第九話 ヘルハルトという男 に続く
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