64 / 545
第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第七話 美女と最強の獣(12)
しおりを挟む
◆◆◆
目指す場所にシャロンはすぐに辿り着いた。
追跡は無い。
シャロンを待っていた男はそれを賞賛した。
「よくぞ無事に帰ってきた、シャロン」
声の主はルイスだった。
その声には一連の戦いに対しての賞賛まで含まれていた。
だからルイスはオレグが言っていたことに対して一言を述べた。
「今回は危なかったな。もし魂まで破壊されていたら一から作り直しだった」
しかしその「危なかった」に含まれていた危機感は少々ズレたものであった。
面倒くさいことにならなくて良かった、などという思いを「危なかった」と表現している。
「しかし今回は少し肝が冷えたな」
だが、ルイスにも本当の危機感はあった。
ルイスはそれに対してのお礼まで含めて、シャロンの魂に述べた。
「お前達が連中の注意を引いてくれなかったら、ここまで無事に脱出することは出来なかったかもしれない」
それはまさに言葉通りであった。
ルイスは他の仲間達全員を囮に使ったのだ。
しかしルイスはそのことについて後ろめたさも何も無かった。
いまここで自分は死ぬわけにはいかないという確信があったからだ。
そしてルイスはキーラがいる方向に顔を向けながら語り始めた。
キーラがこのあとどうするか、それはシャロンにも分かっていたが、ルイスはあえてそれを言葉にした。
「あの女は魔王の名を引き継ぎ、この戦いの結果まで含めて、大きく宣伝するだろう」
だから、今後のことはもう決まっていた。
「だから、君には出来る限り早く戻ってもらう。魔王なんて存在は早々にこの世から退場してもらわねば困るからな」
それは本心からの言葉だった。
そしてルイスは本心からの言葉を続けた。
「しかしこの展開は本当に予想していなかった。君が殺される可能性は考慮していたが、こうも早くその時が来るとはな」
だからルイスは次はこうならないようにするための案を述べた。
「君は自己犠牲の精神が強すぎたようだ。次はもう少し総大将らしく自重した立ち回りが出来るように作り直すことにしよう」
そんな事をつぶやきながらルイスは歩き始めた。
ルイスは既に『次の彼女』の設計図を完成させつつあった。
だがルイスは知らない。
その設計が第三者の手によって狂わされてしまうことを。
第八話 もっと力を に続く
目指す場所にシャロンはすぐに辿り着いた。
追跡は無い。
シャロンを待っていた男はそれを賞賛した。
「よくぞ無事に帰ってきた、シャロン」
声の主はルイスだった。
その声には一連の戦いに対しての賞賛まで含まれていた。
だからルイスはオレグが言っていたことに対して一言を述べた。
「今回は危なかったな。もし魂まで破壊されていたら一から作り直しだった」
しかしその「危なかった」に含まれていた危機感は少々ズレたものであった。
面倒くさいことにならなくて良かった、などという思いを「危なかった」と表現している。
「しかし今回は少し肝が冷えたな」
だが、ルイスにも本当の危機感はあった。
ルイスはそれに対してのお礼まで含めて、シャロンの魂に述べた。
「お前達が連中の注意を引いてくれなかったら、ここまで無事に脱出することは出来なかったかもしれない」
それはまさに言葉通りであった。
ルイスは他の仲間達全員を囮に使ったのだ。
しかしルイスはそのことについて後ろめたさも何も無かった。
いまここで自分は死ぬわけにはいかないという確信があったからだ。
そしてルイスはキーラがいる方向に顔を向けながら語り始めた。
キーラがこのあとどうするか、それはシャロンにも分かっていたが、ルイスはあえてそれを言葉にした。
「あの女は魔王の名を引き継ぎ、この戦いの結果まで含めて、大きく宣伝するだろう」
だから、今後のことはもう決まっていた。
「だから、君には出来る限り早く戻ってもらう。魔王なんて存在は早々にこの世から退場してもらわねば困るからな」
それは本心からの言葉だった。
そしてルイスは本心からの言葉を続けた。
「しかしこの展開は本当に予想していなかった。君が殺される可能性は考慮していたが、こうも早くその時が来るとはな」
だからルイスは次はこうならないようにするための案を述べた。
「君は自己犠牲の精神が強すぎたようだ。次はもう少し総大将らしく自重した立ち回りが出来るように作り直すことにしよう」
そんな事をつぶやきながらルイスは歩き始めた。
ルイスは既に『次の彼女』の設計図を完成させつつあった。
だがルイスは知らない。
その設計が第三者の手によって狂わされてしまうことを。
第八話 もっと力を に続く
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる