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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ

第七話 美女と最強の獣(12)

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   ◆◆◆

 目指す場所にシャロンはすぐに辿り着いた。
 追跡は無い。
 シャロンを待っていた男はそれを賞賛した。

「よくぞ無事に帰ってきた、シャロン」

 声の主はルイスだった。
 その声には一連の戦いに対しての賞賛まで含まれていた。
 だからルイスはオレグが言っていたことに対して一言を述べた。

「今回は危なかったな。もし魂まで破壊されていたら一から作り直しだった」

 しかしその「危なかった」に含まれていた危機感は少々ズレたものであった。
 面倒くさいことにならなくて良かった、などという思いを「危なかった」と表現している。

「しかし今回は少し肝が冷えたな」

 だが、ルイスにも本当の危機感はあった。
 ルイスはそれに対してのお礼まで含めて、シャロンの魂に述べた。

「お前達が連中の注意を引いてくれなかったら、ここまで無事に脱出することは出来なかったかもしれない」

 それはまさに言葉通りであった。
 ルイスは他の仲間達全員を囮に使ったのだ。
 しかしルイスはそのことについて後ろめたさも何も無かった。
 いまここで自分は死ぬわけにはいかないという確信があったからだ。
 そしてルイスはキーラがいる方向に顔を向けながら語り始めた。
 キーラがこのあとどうするか、それはシャロンにも分かっていたが、ルイスはあえてそれを言葉にした。

「あの女は魔王の名を引き継ぎ、この戦いの結果まで含めて、大きく宣伝するだろう」

 だから、今後のことはもう決まっていた。

「だから、君には出来る限り早く戻ってもらう。魔王なんて存在は早々にこの世から退場してもらわねば困るからな」

 それは本心からの言葉だった。
 そしてルイスは本心からの言葉を続けた。

「しかしこの展開は本当に予想していなかった。君が殺される可能性は考慮していたが、こうも早くその時が来るとはな」

 だからルイスは次はこうならないようにするための案を述べた。

「君は自己犠牲の精神が強すぎたようだ。次はもう少し総大将らしく自重した立ち回りが出来るように作り直すことにしよう」

 そんな事をつぶやきながらルイスは歩き始めた。
 ルイスは既に『次の彼女』の設計図を完成させつつあった。

 だがルイスは知らない。
 その設計が第三者の手によって狂わされてしまうことを。

   第八話 もっと力を に続く
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