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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第七話 美女と最強の獣(10)
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シャロンのその思考はオレグには読むまでもなかった。
そしてシャロンの手に銃はもう無い。
だからオレグは遠慮なく、盾を正面からずらして左手を前に突き出すことが出来た。
その手が発光し、光弾が発射される。
「!」
瞬間、シャロンの中でオレグに対しての評価が上書きされた。
背後から飛んできた光弾を半身ずらして避ける。
凄まじい速度。
しかもそれだけでは無かった。
もう次弾が背後に迫っている。
そのさらに次の弾がもう発射されかけている。
凄まじい連射力。
こいつはただの筋肉の化け物では無かったのだ。こいつはキーラのように多芸では無いが、魔法使いとしても一流なのだ。
そしてその連射の多くはシャロンの下半身を狙ったものであった。
オレグの狙いも同じなのだ。
だが、それだけでは無かった。もう一つあった。
それは直後に明らかになった。
「っ!」
瞬間、手に走った衝撃と視界を染めた閃光に、シャロンは目を細めた。
展開した防御魔法が即座に破壊されたのだ。
だからシャロンは即座に手を変えた。
電撃魔法の網を放つ。
その網はオレグを屋根ごと包み込むように広がったが、
「!?」
その大きさの網を、オレグは一振りで払った。
オレグの大盾も大きくなっていた。眩しいほどに光り輝いていた。
盾から前方に魔力を押し出して防御魔法を重ねたのとは違う。
魔力を前面に押し出すのでは無く、盾の内部に充満させ、ふちから垂れ流しにしているのだ。それによって強度では無く、防御範囲を広げたのだ。
だがこの状態ではオレグも光弾を撃てない。
やむを得ずオレグは即座に解除。
それを見たシャロンも再び網を放つ。
そしてオレグも再び大盾を発光させた。
が、オレグには子供じみた繰り返しに付き合うつもりは無かった。
「むんっ!」
気勢と共に大盾を豪快に振るう。
瞬間、オレグは振りながら大盾に魔力を勢いよく流し込んだ。
押し出された魔力が光の突風となって眼前の網を押し払う。
そして即座に反撃の光弾を連射。
針を使ってそれらを突き払うシャロン。
その動きには慣れが見えた。
だからオレグは思った。
この連射では駄目だ。もっと数と密度がある弾幕でなければ――
瞬間、ひらめいたオレグはその思いつきを試すことにした。
勢いよく大盾を屋根に突き刺す。
その動きはまるで盾をシャベルがわりに、屋根をすくいあげようとしているかのようであった。シャロンにはそう見えた。
「せぇや!」
そしてオレグは気勢と共に大盾を発光させ、豪快に振りあげた。
「!」
シャロンの見立ては正解だった。
気勢と共に放たれたのは屋根そのもの。
屋根瓦や木材が密度のある散弾となって迫ってくる。
人間が通れる隙間が無い。数個突き払う程度では無駄。それほどの数と密度。
ゆえにシャロンは防御魔法を展開。
その光の盾は数個の残骸を受け止めたが、
「ぐっ!」
直後に盾は破れ、硬い散弾がシャロンの柔肌に食い込んだ。
これはやはり有効、そう判断したオレグがすぐに次の動作に入る。
それを見たシャロンの思考に焦りの色が滲む。
受けるのも避けるのも困難。
(ならば――)
安全策はこれしか無いと、シャロンは左手から光る盾を展開した。
受けるのも避けるのも難しいのであれば、
(撃ち落とす!)
と、シャロンは心の中で叫びながら光る嵐を放った。
白蛇の群れが瓦礫(がれき)の散弾とぶつかり合い、食い散らす。
だが、数個落としそこねる。
それをシャロンは針で受け流した。
正確には受け流してしまった。
防御に針を使ったせいで次の初動が遅れてしまったのだ。
オレグはもう次の動作に入っている。
間に合うか、そんな思いが脳裏に走ると同時に、オレグの盾から瓦礫の散弾が放たれる。
防御魔法を展開し、中心に狙いを定める。
しかしこの時すでに散弾は目の前。
針を突き出し始めるのと同時に、瓦礫が光の盾にぶつかり始める。
いびつな音と共に盾がゆがむ。
もちこたえて、シャロンはそう叫びながら針を突き刺した。
そして光があふれたのと、盾が限界をむかえたのは同時だった。
「っ!」
数個の破片が体に食い込む痛みと共に、蛇が食い荒らす音が耳に響く。
そしてこの時、シャロンの背後にはもう次の屋根は無かった。
そこには住宅街の終わりを示す景色が広がっていた。
だからシャロンは重力に身を任せた。
吸い込まれるようにシャロンの姿が屋根の下に消える。
そしてその背が白い絨毯と触れ合う直前、
「ふっ!」
シャロンは鋭く息を吐きながら体を回転させ、足から綺麗に着地した。
即座に雪を蹴ってその場から離れる。
直後、直前までシャロンがいた場所に降りてきたオレグの大盾が炸裂した。
雪しぶきが激しく巻き上がる。
その雪のカーテンを引き裂きながら、オレグはシャロンの背を追って飛び出した。
そしてシャロンの手に銃はもう無い。
だからオレグは遠慮なく、盾を正面からずらして左手を前に突き出すことが出来た。
その手が発光し、光弾が発射される。
「!」
瞬間、シャロンの中でオレグに対しての評価が上書きされた。
背後から飛んできた光弾を半身ずらして避ける。
凄まじい速度。
しかもそれだけでは無かった。
もう次弾が背後に迫っている。
そのさらに次の弾がもう発射されかけている。
凄まじい連射力。
こいつはただの筋肉の化け物では無かったのだ。こいつはキーラのように多芸では無いが、魔法使いとしても一流なのだ。
そしてその連射の多くはシャロンの下半身を狙ったものであった。
オレグの狙いも同じなのだ。
だが、それだけでは無かった。もう一つあった。
それは直後に明らかになった。
「っ!」
瞬間、手に走った衝撃と視界を染めた閃光に、シャロンは目を細めた。
展開した防御魔法が即座に破壊されたのだ。
だからシャロンは即座に手を変えた。
電撃魔法の網を放つ。
その網はオレグを屋根ごと包み込むように広がったが、
「!?」
その大きさの網を、オレグは一振りで払った。
オレグの大盾も大きくなっていた。眩しいほどに光り輝いていた。
盾から前方に魔力を押し出して防御魔法を重ねたのとは違う。
魔力を前面に押し出すのでは無く、盾の内部に充満させ、ふちから垂れ流しにしているのだ。それによって強度では無く、防御範囲を広げたのだ。
だがこの状態ではオレグも光弾を撃てない。
やむを得ずオレグは即座に解除。
それを見たシャロンも再び網を放つ。
そしてオレグも再び大盾を発光させた。
が、オレグには子供じみた繰り返しに付き合うつもりは無かった。
「むんっ!」
気勢と共に大盾を豪快に振るう。
瞬間、オレグは振りながら大盾に魔力を勢いよく流し込んだ。
押し出された魔力が光の突風となって眼前の網を押し払う。
そして即座に反撃の光弾を連射。
針を使ってそれらを突き払うシャロン。
その動きには慣れが見えた。
だからオレグは思った。
この連射では駄目だ。もっと数と密度がある弾幕でなければ――
瞬間、ひらめいたオレグはその思いつきを試すことにした。
勢いよく大盾を屋根に突き刺す。
その動きはまるで盾をシャベルがわりに、屋根をすくいあげようとしているかのようであった。シャロンにはそう見えた。
「せぇや!」
そしてオレグは気勢と共に大盾を発光させ、豪快に振りあげた。
「!」
シャロンの見立ては正解だった。
気勢と共に放たれたのは屋根そのもの。
屋根瓦や木材が密度のある散弾となって迫ってくる。
人間が通れる隙間が無い。数個突き払う程度では無駄。それほどの数と密度。
ゆえにシャロンは防御魔法を展開。
その光の盾は数個の残骸を受け止めたが、
「ぐっ!」
直後に盾は破れ、硬い散弾がシャロンの柔肌に食い込んだ。
これはやはり有効、そう判断したオレグがすぐに次の動作に入る。
それを見たシャロンの思考に焦りの色が滲む。
受けるのも避けるのも困難。
(ならば――)
安全策はこれしか無いと、シャロンは左手から光る盾を展開した。
受けるのも避けるのも難しいのであれば、
(撃ち落とす!)
と、シャロンは心の中で叫びながら光る嵐を放った。
白蛇の群れが瓦礫(がれき)の散弾とぶつかり合い、食い散らす。
だが、数個落としそこねる。
それをシャロンは針で受け流した。
正確には受け流してしまった。
防御に針を使ったせいで次の初動が遅れてしまったのだ。
オレグはもう次の動作に入っている。
間に合うか、そんな思いが脳裏に走ると同時に、オレグの盾から瓦礫の散弾が放たれる。
防御魔法を展開し、中心に狙いを定める。
しかしこの時すでに散弾は目の前。
針を突き出し始めるのと同時に、瓦礫が光の盾にぶつかり始める。
いびつな音と共に盾がゆがむ。
もちこたえて、シャロンはそう叫びながら針を突き刺した。
そして光があふれたのと、盾が限界をむかえたのは同時だった。
「っ!」
数個の破片が体に食い込む痛みと共に、蛇が食い荒らす音が耳に響く。
そしてこの時、シャロンの背後にはもう次の屋根は無かった。
そこには住宅街の終わりを示す景色が広がっていた。
だからシャロンは重力に身を任せた。
吸い込まれるようにシャロンの姿が屋根の下に消える。
そしてその背が白い絨毯と触れ合う直前、
「ふっ!」
シャロンは鋭く息を吐きながら体を回転させ、足から綺麗に着地した。
即座に雪を蹴ってその場から離れる。
直後、直前までシャロンがいた場所に降りてきたオレグの大盾が炸裂した。
雪しぶきが激しく巻き上がる。
その雪のカーテンを引き裂きながら、オレグはシャロンの背を追って飛び出した。
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