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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第六話 豹と熊(7)
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「待ち構えているぞ!」
別の兵士が続けて声に出す。
どのように待ち受けているのか、それは街を出た直後にみなの目に明らかになった。
その形はサイラスが予想した通りであり、感じ取った通りであった。
街から出てきた兵士達を包み込むような、円状の包囲陣形。
全火力を街から脱出してきた先頭集団に対して即座に叩き込むことが出来る形。
これはマズい、そんな声がサイラスの心の中に響いた。
下手をすると全滅する、目を背けたくなるそんな可能性まで提示される。
直後、嫌だ、と、まるで子供のような言葉が小さく響いた。
もう負けるのは嫌だ、そんな思いがサイラスの心の片隅にあった。
心の端っこに、棘のように刺さっていた。
それは小さいものであったが、鋭い痛みを放っていた。
あの時もそうだったからだ。
あの時も善戦した。いいところまではいった。
魔法使いの総大将の部隊の前にまでは辿り着けたんだ。
だけどそこで挟撃された。
そして奴隷達は全滅し、師は命を落とした。
今の状況はあの時に似ている。
だからサイラスは思った。
またか、またなのか、と。
しかしサイラスの心の中にある何かは直後に叫んだ。
(否!)と。
今回は同じ結末にはしない。変えてみせる、と。
その思いを込めてサイラスは突撃の合図を出そうとしたが、
「待て、サイラス!」
その思いにデュランが割り込んだ。
こんな時になんだと、サイラスが非難の目を向けると、デュランはそれに負けぬほどの強い眼差しで尋ねた。
「城の前で、お前は本当は別のなにかをやろうとしていただろう?! それはなんだ!?」
サイラスは答えた。
「出来なかったんだ! 私は光魔法が使えない!」
これに、デュランは「どうしてもっと早くそれを言わないんだ!」という、サイラスと同じ非難の眼差しを返しながら叫んだ。
「ならば俺を使えばいいだろう! お前ほど感は良くないが、光魔法なら使える!」
「……!」
その言葉にサイラスは雷に打たれたような気がした。
どうしてそんな簡単なことに気がつかなかったのか、と。
その答えはすぐに浮かんだ。
自分が仲間のことを心の底では信用していないからだ。
そうだ、あの時もそうだった。
自分は師匠の戦いに直接手を貸していたわけでは無かった。
心の底から応援はしていたが、自分の身だけは常に安全な位置に置いていた。
心のどこかでは負ける可能性が高いと判断していた。だから一緒に戦場で戦えなかった。死にたくなかった。
そしてそれはあの時だけじゃない。思い返せば、今まで自分はずっとそうだった。
安全なところから、裏から手を引く、そんなのばっかりだ。
もしかしたら、自分はフレディのことも心の底では信用していないのかもしれない。
「……」
デュランに言われて始めてサイラスはそう思った。ようやく気付けた。
だからサイラスの心は雷に打たれ、その思考は止まってしまった。
そしてその指揮官の思考停止による統率の乱れを敵が見逃すはずが無かった。
「撃ってくるぞ!」
兵士の一人が警告を発する。
それは大盾兵に向けたものだった。
だが、その声に反応して前に出てきた大盾兵は簡単に数えられるほどしかいなかった。
他の大盾兵達はまだここに到着していなかった。
みな、ここまでがむしゃらに走ってきただけなのだ。隊列なんてものが機能しているわけが無い!
ゆえに、
「「「ぅあああああぁっ!?」」」
放たれた光弾の一斉射撃に、兵士達は悲鳴を上げることしか出来なかった。
その地獄の中でデュランは声を上げた。
「何をぼけっとしている、サイラスッ! 早く教えろっ!」
これに、サイラスの意識はようやく覚醒した。
「フレディ、お前の剣を貸せ!」
受け取った剣と長剣の二本をデュランに投げ渡す。
「両方に光を通せ!」
別の兵士が続けて声に出す。
どのように待ち受けているのか、それは街を出た直後にみなの目に明らかになった。
その形はサイラスが予想した通りであり、感じ取った通りであった。
街から出てきた兵士達を包み込むような、円状の包囲陣形。
全火力を街から脱出してきた先頭集団に対して即座に叩き込むことが出来る形。
これはマズい、そんな声がサイラスの心の中に響いた。
下手をすると全滅する、目を背けたくなるそんな可能性まで提示される。
直後、嫌だ、と、まるで子供のような言葉が小さく響いた。
もう負けるのは嫌だ、そんな思いがサイラスの心の片隅にあった。
心の端っこに、棘のように刺さっていた。
それは小さいものであったが、鋭い痛みを放っていた。
あの時もそうだったからだ。
あの時も善戦した。いいところまではいった。
魔法使いの総大将の部隊の前にまでは辿り着けたんだ。
だけどそこで挟撃された。
そして奴隷達は全滅し、師は命を落とした。
今の状況はあの時に似ている。
だからサイラスは思った。
またか、またなのか、と。
しかしサイラスの心の中にある何かは直後に叫んだ。
(否!)と。
今回は同じ結末にはしない。変えてみせる、と。
その思いを込めてサイラスは突撃の合図を出そうとしたが、
「待て、サイラス!」
その思いにデュランが割り込んだ。
こんな時になんだと、サイラスが非難の目を向けると、デュランはそれに負けぬほどの強い眼差しで尋ねた。
「城の前で、お前は本当は別のなにかをやろうとしていただろう?! それはなんだ!?」
サイラスは答えた。
「出来なかったんだ! 私は光魔法が使えない!」
これに、デュランは「どうしてもっと早くそれを言わないんだ!」という、サイラスと同じ非難の眼差しを返しながら叫んだ。
「ならば俺を使えばいいだろう! お前ほど感は良くないが、光魔法なら使える!」
「……!」
その言葉にサイラスは雷に打たれたような気がした。
どうしてそんな簡単なことに気がつかなかったのか、と。
その答えはすぐに浮かんだ。
自分が仲間のことを心の底では信用していないからだ。
そうだ、あの時もそうだった。
自分は師匠の戦いに直接手を貸していたわけでは無かった。
心の底から応援はしていたが、自分の身だけは常に安全な位置に置いていた。
心のどこかでは負ける可能性が高いと判断していた。だから一緒に戦場で戦えなかった。死にたくなかった。
そしてそれはあの時だけじゃない。思い返せば、今まで自分はずっとそうだった。
安全なところから、裏から手を引く、そんなのばっかりだ。
もしかしたら、自分はフレディのことも心の底では信用していないのかもしれない。
「……」
デュランに言われて始めてサイラスはそう思った。ようやく気付けた。
だからサイラスの心は雷に打たれ、その思考は止まってしまった。
そしてその指揮官の思考停止による統率の乱れを敵が見逃すはずが無かった。
「撃ってくるぞ!」
兵士の一人が警告を発する。
それは大盾兵に向けたものだった。
だが、その声に反応して前に出てきた大盾兵は簡単に数えられるほどしかいなかった。
他の大盾兵達はまだここに到着していなかった。
みな、ここまでがむしゃらに走ってきただけなのだ。隊列なんてものが機能しているわけが無い!
ゆえに、
「「「ぅあああああぁっ!?」」」
放たれた光弾の一斉射撃に、兵士達は悲鳴を上げることしか出来なかった。
その地獄の中でデュランは声を上げた。
「何をぼけっとしている、サイラスッ! 早く教えろっ!」
これに、サイラスの意識はようやく覚醒した。
「フレディ、お前の剣を貸せ!」
受け取った剣と長剣の二本をデュランに投げ渡す。
「両方に光を通せ!」
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