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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第五話 最後の晩餐?(3)
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◆◆◆
ルイスは早速頼まれごとを終わらせに向かった。
サイラスは兵士達と共に外で作業を行っていた。そばにはフレディの姿もある。
鉄条網を張り巡らせたり、雪を積んで土嚢がわりの障害物を作ったり、防衛陣地の再構築を行っていた。
他人には「休め」と言っておきながら、サイラスはそれとは真逆のことをやっていた。
そしてその行動に共感した何名かの兵士が自主的にその作業を手伝っていた。
真面目なことだ、それを見たルイスはそう思った。
同時に哀れだとも思った。
おそらく、残り少ない時間でどれだけ作業をこなそうとも結果は変わらない。被害が多少減るだけ、ルイスはそう思っていた。
ルイスはそんな思いを隠しながらサイラスに声をかけた。
「サイラス」
接近に気付いていたサイラスは即座に振り返って用件を尋ねた。
「なんだ?」
「交代だ。君は城で休め。ここの指示は私が引き継ぐ」
それは素直にありがたい申し出だった。
だが、サイラスはその場から離れようとしなかった。
「ありがたい申し出だが、何かしていないと落ち着かなくてな」
連戦による極度の疲労と緊張がサイラスの神経を張り詰めさせていた。
だからルイスは少々強引にいくことにした。
「ダメだ。私はちゃんと寝ているが、君は違うだろう? 君はいつ倒れてもおかしくない」
そしてルイスはサイラスの腕を力強く握り、言った。
「休むんだ。従わないなら、力ずくでそうさせる」
◆◆◆
そしてルイスは言葉通りに実行した。
ルイスはサイラスの腕を引っ張り、強引に城の中にある一室へと連れてきた。
そのまま力任せに柔らかなベッドの上に座らせる。
直後、サイラスは何度目かになる不満を漏らした。
「私には両足がちゃんとついてる。そんなに引っ張らなくとも、言われれば自分の足でここまで来たさ」
疲れているからか、その不満の言葉には力が無い。
さらにその言葉が嘘であることを感じ取ったルイスはその不満を無視して口を開いた。
「横になれ。少しの間でもいい。ちゃんと意識を落とせ」
「……」
だが、サイラスはすぐにその言葉に従おうとはしなかった。
だからルイスはさらに言葉を付け加えた。
「言っておくが、君がちゃんと眠りにつくまで見張っているからな? それでも意地を張って寝ないつもりなら、私は君を締め落とすつもりだ」
そう言われては従うしか無かった。
「……わかった、じゃあ、少しだけ。少し寝たら、すぐに……」
言いながら、しぶしぶとサイラスはベッドの上に横になった。
「……」
そして直後にサイラスの意識は落ちた。
やはりサイラスの疲労は極限に達していた。
ルイスはサイラスの意識が完全に活動を止めたのを確認してから、部屋を出て行った。
◆◆◆
「ありがとうございます、ルイスの旦那」
部屋を出て間も無く、ルイスは待ち構えていたフレディに礼を言われた。
フレディはその礼の理由を続けて述べた。
「大将は無理が過ぎるところがありまして……あっしが休んでくれと言っても聞きませんでしたから。とにかく、これで一安心です」
フレディの言葉は本物の感情から生まれたものだった。
それを感じ取ったルイスはそれを利用しようと思った。
「じゃあ、一つ頼みごとをしていいか?」
フレディが「出来ることなら」と答えると、ルイスは笑顔でそれを述べた。
「サイラスがやっていたことを引き継いでくれ。指揮権も何もかも、君にゆだねる」
これにフレディは「え、それはちょっと」と、拒否の意思を見せようとしたが、ルイスはそれを許さなかった。
「じゃあ、後は任せたぞ」
そうしてルイスはフレディに仕事を押し付け、その場から去った。
ルイスは早速頼まれごとを終わらせに向かった。
サイラスは兵士達と共に外で作業を行っていた。そばにはフレディの姿もある。
鉄条網を張り巡らせたり、雪を積んで土嚢がわりの障害物を作ったり、防衛陣地の再構築を行っていた。
他人には「休め」と言っておきながら、サイラスはそれとは真逆のことをやっていた。
そしてその行動に共感した何名かの兵士が自主的にその作業を手伝っていた。
真面目なことだ、それを見たルイスはそう思った。
同時に哀れだとも思った。
おそらく、残り少ない時間でどれだけ作業をこなそうとも結果は変わらない。被害が多少減るだけ、ルイスはそう思っていた。
ルイスはそんな思いを隠しながらサイラスに声をかけた。
「サイラス」
接近に気付いていたサイラスは即座に振り返って用件を尋ねた。
「なんだ?」
「交代だ。君は城で休め。ここの指示は私が引き継ぐ」
それは素直にありがたい申し出だった。
だが、サイラスはその場から離れようとしなかった。
「ありがたい申し出だが、何かしていないと落ち着かなくてな」
連戦による極度の疲労と緊張がサイラスの神経を張り詰めさせていた。
だからルイスは少々強引にいくことにした。
「ダメだ。私はちゃんと寝ているが、君は違うだろう? 君はいつ倒れてもおかしくない」
そしてルイスはサイラスの腕を力強く握り、言った。
「休むんだ。従わないなら、力ずくでそうさせる」
◆◆◆
そしてルイスは言葉通りに実行した。
ルイスはサイラスの腕を引っ張り、強引に城の中にある一室へと連れてきた。
そのまま力任せに柔らかなベッドの上に座らせる。
直後、サイラスは何度目かになる不満を漏らした。
「私には両足がちゃんとついてる。そんなに引っ張らなくとも、言われれば自分の足でここまで来たさ」
疲れているからか、その不満の言葉には力が無い。
さらにその言葉が嘘であることを感じ取ったルイスはその不満を無視して口を開いた。
「横になれ。少しの間でもいい。ちゃんと意識を落とせ」
「……」
だが、サイラスはすぐにその言葉に従おうとはしなかった。
だからルイスはさらに言葉を付け加えた。
「言っておくが、君がちゃんと眠りにつくまで見張っているからな? それでも意地を張って寝ないつもりなら、私は君を締め落とすつもりだ」
そう言われては従うしか無かった。
「……わかった、じゃあ、少しだけ。少し寝たら、すぐに……」
言いながら、しぶしぶとサイラスはベッドの上に横になった。
「……」
そして直後にサイラスの意識は落ちた。
やはりサイラスの疲労は極限に達していた。
ルイスはサイラスの意識が完全に活動を止めたのを確認してから、部屋を出て行った。
◆◆◆
「ありがとうございます、ルイスの旦那」
部屋を出て間も無く、ルイスは待ち構えていたフレディに礼を言われた。
フレディはその礼の理由を続けて述べた。
「大将は無理が過ぎるところがありまして……あっしが休んでくれと言っても聞きませんでしたから。とにかく、これで一安心です」
フレディの言葉は本物の感情から生まれたものだった。
それを感じ取ったルイスはそれを利用しようと思った。
「じゃあ、一つ頼みごとをしていいか?」
フレディが「出来ることなら」と答えると、ルイスは笑顔でそれを述べた。
「サイラスがやっていたことを引き継いでくれ。指揮権も何もかも、君にゆだねる」
これにフレディは「え、それはちょっと」と、拒否の意思を見せようとしたが、ルイスはそれを許さなかった。
「じゃあ、後は任せたぞ」
そうしてルイスはフレディに仕事を押し付け、その場から去った。
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