上 下
27 / 545
第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ

第四話 魔王戦(9)

しおりを挟む
 言われるまでも無くシャロンは動いていた。
 全てを撒き散らさんと、光の嵐を放つ。
 だが、予想出来ていたことだが、それは叶わなかった。
 犬はすべて嵐で切り刻んだが、鳥は三羽討ち漏らした。
 機動力がありすぎる。左右に大きく飛び逃げられたら、扇状に広がる嵐では全てを飲み込めない。
 しかしそれでも目的は達した、シャロンはそう思っていた。
 電源である魔王の手と繋がっている線は切れたからだ。
 これで魔王の手からの起爆は出来ないはず、シャロンはそう確信しており、それは確かにその通りであったのだが、

「!」

 一つ見落としていたことにシャロンは気付いた。
 魔王は電源との接続を切られることなど読んでいたのだ。
 だから魔王はもう一つの機能を付け加えていた。
 それは、

(時限式!?)

 一定時間の経過で自動的に爆発する機能であった。
 左右にばらけて嵐を避けた鳥達が弧を描くように旋回し、シャロン達のほうに向き直る。
 間を置かずにシャロンが嵐を放つ。
 だがやはり全ては撃ち落とせない。
 そして鳥が内蔵する赤い球はシャロン達に接近するにつれて膨張し、

「うわあぁっ!」「きゃあぁっ!」

 シャロン達の前で炸裂した。

「次々と来るぞ!」

 大盾で衝撃波をやりすごしたデュランが叫ぶ。
 柱の陰から続々と、糸で編まれた鳥達が飛び立つ。
 されど、唯一対処出来るシャロンは先の爆発で吹き飛ばされ、まだ立ち上がっていない。
 なす術も無く、鳥達の特攻が炸裂する。

「ぐおおっ!?」「がっは!」

 まるで絨毯爆撃。
 炸裂音が連鎖し、鳴り止まない。
 手数を重視しているためか、一つ一つの威力はそれほどでも無い。
 が、

「ぐぁっ!」「いやぁっ!」

 こうもお手玉のように吹き飛ばされ続けていたら時間の問題だ。
 重量があり、大盾を持っているデュランだけがその地獄のような爆撃の嵐の中で踏みとどまれている。
 ゆえに、鳥達の攻撃は自然とデュランに集中し始めた。
 デュランの近くで次々と炸裂する。

「ぬおおおぉっ!」

 気迫でその猛攻を耐えるデュラン。
 だが、

(マズい!)

 直後、サイラスの理性が警鐘を鳴らした。
 鳥が身を寄せ合うように集まり始めたからだ。
 いくら一つ一つが弱くとも、あれだけの数を同時にぶつけられたら――
 サイラスの理性がそんな警告を映像という形で脳裏に映した直後、

「「「!」」」

 響いた一発の銃声と共に、鳥の群れはその動きを止めた。
 いつの間にか壁側に移動していたフレディが魔王を狙撃したのだ。

「糞!」

 されどフレディはその功績に対して舌打ちした。
 心臓を狙った。だが、外したのだ。
 わき腹に穴が開いただけ。
 ゆえに、

「貴様!」

 魔王は怒りとともに反撃の光弾をフレディに放った。
 しかしこれをフレディは柱の陰に隠れて回避。
 同時に次弾の装填を開始する。
 それを感じ取った魔王は攻撃を炎と爆撃に切り替えようとしたが、

「っ!」

 直後、今度は複数の銃撃が魔王に対して鳴り響いた。
 その痛みで魔王はようやく気付いた。
 配下の部下達の数が少なくなっているのだ。
 もう全滅寸前だ。
 だから手の空いた者達が目標をこちらに切り替えたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...