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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第四話 魔王戦(4)
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ゆえに、魔王は既に構えていた。その両手にある杖を眩く輝かせていた。
杖の先端には既に光弾が完成している。
異常な大きさの光弾。
普通ならば既に杖の先端から落ちて離れていなければならない大きさ。
そうならない秘密は魔王の両手の平から伸びている電撃魔法の糸にあった。
右手から伸びた糸が杖に巻きつき、左手から伸びた糸が光弾に巻き付いている。
巻き線から生じる力で杖と弾をお互いに引き合わせているのだ。
あまりの大きさゆえに魔王からはシャロンが見えない。
だが、手に取るようにその動きは感じ取れていた。
そして魔王は狙いを定め、その力を解放した。
直後に生じたのは爆発音。
杖の先端から生じた爆炎と共に光弾が割れる。
すると、中から小さな光弾の群れが飛び出した。包まれていたのだ。
そしてそれは散弾となってシャロンに襲い掛かった。
「!」
やはり速い、そしてなんて数と密度、その事実にシャロンが目を見開きながら鋭く左に床を蹴る。
避けきれない、高速演算が示したその答えに対しシャロンは防御魔法を展開。
だが、その光の盾は数発の弾を受けた瞬間に砕けた。
しかしシャロンはそこまで計算済みであった。
両足でふんばって反動を殺しつつ、残りの直撃弾を針で捌く。
されど、魔王にとってもこれは予想済み。
さらに、ふんばって姿勢を保つシャロンのその動作硬直は、同じ高速演算を行っている魔王にとっては完全静止しているのと同じであった。
魔王はその止まっている的に向かって杖を再び輝かせた。
そしてその先端から生まれた色は白では無く赤。
強烈な炎の奔流。すなわち炎魔法。
赤い大蛇のような太く激しい炎がシャロンを飲み込まんとその口を開く。
これに対し、シャロンは再び防御魔法を展開。
だが、
「っっっ!」
直後、シャロンの顔は苦痛に歪んだ。
盾は炎をとめてくれるが、盾の外側からなだれこんでくる熱波は防ぎようが無いからだ。
全身を包み込むような巨大な防御魔法でも張らない限り、気休めにしかならない。
ゆえにシャロンは再び左に床を蹴り直した。
だが振り切れない。食らいついた赤い大蛇は離れない。
しかしそれでもシャロンはさらに同じ方向へ足を出した。
目指すは、壁際に立ち並んでいる巨大な柱の列。
あれだけ幅がある障害物の後ろに隠れればなんとかなる、シャロンはそう考えていた。
しかしシャロンのそんな考えを魔王は心を読むまでも無く見抜いていた。
ゆえに魔王は直後に攻撃を切り替えた。
杖の輝きは赤から再び白へ。
そして放たれる光弾。
最初の一撃ほど大きくない。
溜めの無い攻撃。ゆえに連射が利く。
そしてやはり、それも常識からかけ離れたものだった。
絶え間の無い凄まじい連射。
狙いはすべてシャロンの下半身。足を止めるための射撃。
さらに背後から敵魔法使いの光弾まで飛んでくる。
それらを足捌きと小さな跳躍で避け続けるシャロン。
着弾によって砕けた床板が走るシャロンの周りを跳ね回る。
だが、
(この程度!)
これくらいの弾幕、どうということは無い! シャロンは心の中で自分を鼓舞しながら柱までの距離を測った。
あと三度、床を大きく蹴れば手が届く距離。
であったが、瞬間、
「!?」
魔王の攻撃意識が変わったのをシャロンは感じ取った。
そして杖の輝きは再び変わった。
白と赤が混ざったような色。
ゆえに直後に放たれたのは薄赤い球。
赤い何かが白いカラで包まれたもの。
その発射と同時にシャロンは両足の中で星を爆発させ、正面の床に頭から突っ込むように跳躍した。
「っ!」
鋭い痛みがシャロンの両足から走る。
その痛みと引き換えに得た加速でシャロンの姿が霞む。
陽炎を纏ったシャロンの影が、偏差射撃で放たれた薄赤い球を通り越す。
直後、
「――っ!」
それはシャロンの背後で文字通り『弾けた』。
俗に『爆発魔法』と呼ばれている代物。
内部で膨張した炎魔法が白いカラを突き破り、爆炎となって広がる。
さらに、砕けた光のカラは散弾となって全方位に散り飛び、
「ぐっ!」
シャロンの背に炸裂した。
杖の先端には既に光弾が完成している。
異常な大きさの光弾。
普通ならば既に杖の先端から落ちて離れていなければならない大きさ。
そうならない秘密は魔王の両手の平から伸びている電撃魔法の糸にあった。
右手から伸びた糸が杖に巻きつき、左手から伸びた糸が光弾に巻き付いている。
巻き線から生じる力で杖と弾をお互いに引き合わせているのだ。
あまりの大きさゆえに魔王からはシャロンが見えない。
だが、手に取るようにその動きは感じ取れていた。
そして魔王は狙いを定め、その力を解放した。
直後に生じたのは爆発音。
杖の先端から生じた爆炎と共に光弾が割れる。
すると、中から小さな光弾の群れが飛び出した。包まれていたのだ。
そしてそれは散弾となってシャロンに襲い掛かった。
「!」
やはり速い、そしてなんて数と密度、その事実にシャロンが目を見開きながら鋭く左に床を蹴る。
避けきれない、高速演算が示したその答えに対しシャロンは防御魔法を展開。
だが、その光の盾は数発の弾を受けた瞬間に砕けた。
しかしシャロンはそこまで計算済みであった。
両足でふんばって反動を殺しつつ、残りの直撃弾を針で捌く。
されど、魔王にとってもこれは予想済み。
さらに、ふんばって姿勢を保つシャロンのその動作硬直は、同じ高速演算を行っている魔王にとっては完全静止しているのと同じであった。
魔王はその止まっている的に向かって杖を再び輝かせた。
そしてその先端から生まれた色は白では無く赤。
強烈な炎の奔流。すなわち炎魔法。
赤い大蛇のような太く激しい炎がシャロンを飲み込まんとその口を開く。
これに対し、シャロンは再び防御魔法を展開。
だが、
「っっっ!」
直後、シャロンの顔は苦痛に歪んだ。
盾は炎をとめてくれるが、盾の外側からなだれこんでくる熱波は防ぎようが無いからだ。
全身を包み込むような巨大な防御魔法でも張らない限り、気休めにしかならない。
ゆえにシャロンは再び左に床を蹴り直した。
だが振り切れない。食らいついた赤い大蛇は離れない。
しかしそれでもシャロンはさらに同じ方向へ足を出した。
目指すは、壁際に立ち並んでいる巨大な柱の列。
あれだけ幅がある障害物の後ろに隠れればなんとかなる、シャロンはそう考えていた。
しかしシャロンのそんな考えを魔王は心を読むまでも無く見抜いていた。
ゆえに魔王は直後に攻撃を切り替えた。
杖の輝きは赤から再び白へ。
そして放たれる光弾。
最初の一撃ほど大きくない。
溜めの無い攻撃。ゆえに連射が利く。
そしてやはり、それも常識からかけ離れたものだった。
絶え間の無い凄まじい連射。
狙いはすべてシャロンの下半身。足を止めるための射撃。
さらに背後から敵魔法使いの光弾まで飛んでくる。
それらを足捌きと小さな跳躍で避け続けるシャロン。
着弾によって砕けた床板が走るシャロンの周りを跳ね回る。
だが、
(この程度!)
これくらいの弾幕、どうということは無い! シャロンは心の中で自分を鼓舞しながら柱までの距離を測った。
あと三度、床を大きく蹴れば手が届く距離。
であったが、瞬間、
「!?」
魔王の攻撃意識が変わったのをシャロンは感じ取った。
そして杖の輝きは再び変わった。
白と赤が混ざったような色。
ゆえに直後に放たれたのは薄赤い球。
赤い何かが白いカラで包まれたもの。
その発射と同時にシャロンは両足の中で星を爆発させ、正面の床に頭から突っ込むように跳躍した。
「っ!」
鋭い痛みがシャロンの両足から走る。
その痛みと引き換えに得た加速でシャロンの姿が霞む。
陽炎を纏ったシャロンの影が、偏差射撃で放たれた薄赤い球を通り越す。
直後、
「――っ!」
それはシャロンの背後で文字通り『弾けた』。
俗に『爆発魔法』と呼ばれている代物。
内部で膨張した炎魔法が白いカラを突き破り、爆炎となって広がる。
さらに、砕けた光のカラは散弾となって全方位に散り飛び、
「ぐっ!」
シャロンの背に炸裂した。
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