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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ

第三話 魔王の城へ(5)

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   ◆◆◆

「左右の伏兵を警戒したまま前進射撃!」

 シャロンが伏兵の出鼻を挫いたことを感じ取ったサイラスはそのように指示を出した。
 この調子ならば城まで押し込めるだろう、サイラスはそう思っていた。
 問題があるとすれば一つだけであったのだが、

「サイラス様!」

 直後にその問題は現実のものとなった。

「何があった?!」

「弾を輸送している補給部隊が襲撃されました! 現在苦戦中で、交戦状態のままこちらに向かっているとのこと!」

 食事と休息さえとればいくらでも戦える魔法使いと違って、こちらの銃と大砲は弾が切れたら終わりだ。
 ならばやるべきことは一つしか無かった。

「救援に向かうぞ!」

   ◆◆◆

 だが、サイラス達は間に合わなかった。
 辿り着いた時には既に終わっていた。
 雪原の上に破壊された馬車が散乱している。

(大砲の弾を運んでいた部隊は全滅か……)

 補給部隊の全てが全滅したわけでは無かった。銃弾を運んでいた一部の部隊は無事に逃げ延びていた。
 そしてサイラスは部下達と共に残骸を調べていた。
 やはり壊された馬車の分の積荷は見当たらない。回収されてしまっている。
 そうしているうちに、サイラスは奇妙な点に気付いた。

(襲撃してきた敵はどこに消えた?)

 敵の死体も散乱しているが、大きな被害には見えない。
 ならば当然、ある疑問が浮かび上がる。

(敵はどうして追撃しなかった?)

 ということだ。

 しかしその答えは見つからなかった。

   ◆◆◆

 サイラス達が戻ってくる頃には、シャロン達は城門前に辿り着いていた。
 シャロンは戻ってきたサイラスに尋ねた。

「どうだった?」

 サイラスはシャロンがすぐに聞きたい答えだけを答えた。

「大砲の弾は全滅だった」

 サイラスが言い終えた直後、大砲の轟音が鳴り響いた。
 しかしそれは一発だけだった。
 その理由をシャロンが直後にため息と共に述べた。

「そう……じゃあ今のが最後の一発ってことね」

 大砲だけで勝負を決したかったという思いがその言葉には滲んでいた。
 城はあちこちに穴が開いていたが崩れる気配は感じられなかった。
 どうやら中の柱は無事のようだ。
 山をくりぬいて作られた強固な城。ゆえに素材はほとんどが石であり、火を放ってもほとんど効果が無い。
 ゆえに穴だらけになってもその威圧感は失われていなかった。
 しかし、城門や城壁は違った。
 なのでシャロンは強気に口を開くことが出来た。

「ならば、直接乗り込んで決着をつけましょう」

 城門は崩れ、一階の壁も穴だらけだ。どこからでも進入できる。
 だが、これにサイラスが尋ねた。

「次の補給部隊を待たないのか? このまま兵糧攻めという手もあると思うが」

 シャロンは首を振り、その理由を答えた。

「補給部隊を襲った連中に背後から挟撃されたくないわ。援軍が来る可能性もある」

 街を包囲されれば我々まで兵糧攻めを受けることになる。
 その答えに納得したサイラスは口を開いた。

「確かに言うとおりだ。ここからは君の判断に任せるとしよう」

 その言葉を聞いたシャロンは笑みを浮かべた。
 そしてシャロンは全員から見えるように大きく手を上げ、

「我々はこれより魔王の首をとりに行く!」

 その手を鋭く城のほうに振り下ろしながら叫んだ。

「全軍突撃!」

   第四話 魔王戦 に続く
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