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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第三話 魔王の城へ(1)
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◆◆◆
魔王の城へ
◆◆◆
魔王、それは魔法使いの王。
炎、雷、冷気、そして光、全ての魔法を操る者。
彼は恐怖で支配し、民から畏れられ、そして神格化されていた。
だが魔王は底無しの強欲であった。
魔王は己の快楽を満たし続けるためにさらなる力を求め続けた。
悪魔はそんな魔王に微笑んだ。
悪魔は魔王に相手の心を読む技を教えた。
さらに、魂を使う術までも彼に教えた。
魂、それは頭の中に住む、理性や本能と並ぶ存在。
第三の人格と呼ぶ者もいる。
理性が最前に立って采配を振るい、本能がそれを補佐し、魂は両者を支援する。
しかし違うのは、魂は外に出ることが出来ること。
第三の目となり、遠方の情報を拾ってきたりすることが出来る。
壊れても問題無い。すぐに脳内で再生される。この世界の魂はその程度の存在だ。唯一無二の生命では無い。
ゆえに、それは魔王にとって素晴らしいオモチャとなった。
彼の愉悦は人体実験にまで及んだ。
彼の心に罪悪感は無かった。さらなる力を、それしか無かった。
だが、魂を扱う術は魔王だけの特別では無い。
魔王よりもはるか高みに至っている者もいる。
◆◆◆
「全軍、退却!」
「全軍、突撃!」
真逆の号令が雪原に響き渡る。
逃げる者達と追う者達がぶつかり合いながら城下街を目指す。
「……」
その様子を、サイラスは肩で息をしながら眺めていた。
「「……」」
隣にいるフレディと大男も同じであった。
何度かの荒い呼吸の後、サイラスが口を開いた。
「……少し、休んだら、我等も行くぞ」
これにフレディと大男は頷きを返した。
「「「……」」」
三人揃って、その場にしゃがんでしまいたい欲求を堪えながら息を整える。
そうしているうちに大事なことを思い出したサイラスは再び口を開いた。
「……ああ、そういえば、」
自分に向けられている言葉だ。それを感じ取った大男が視線を返すと、サイラスは言葉を続けた。
「お前、名前は?」
大男は答えた。
「デュラン」
「配属は?」
「運搬兵」
ただの荷物持ち、それを聞いたサイラスは迷うことなく口を開いた。
「よし、お前は今から私の下につけ。お前の部隊の隊長には後で連絡しておく」
大男が「わかった」と答えると、サイラスは足を前に出し始めた。
フレディと大男もその背後に続いた。
魔王の城へ
◆◆◆
魔王、それは魔法使いの王。
炎、雷、冷気、そして光、全ての魔法を操る者。
彼は恐怖で支配し、民から畏れられ、そして神格化されていた。
だが魔王は底無しの強欲であった。
魔王は己の快楽を満たし続けるためにさらなる力を求め続けた。
悪魔はそんな魔王に微笑んだ。
悪魔は魔王に相手の心を読む技を教えた。
さらに、魂を使う術までも彼に教えた。
魂、それは頭の中に住む、理性や本能と並ぶ存在。
第三の人格と呼ぶ者もいる。
理性が最前に立って采配を振るい、本能がそれを補佐し、魂は両者を支援する。
しかし違うのは、魂は外に出ることが出来ること。
第三の目となり、遠方の情報を拾ってきたりすることが出来る。
壊れても問題無い。すぐに脳内で再生される。この世界の魂はその程度の存在だ。唯一無二の生命では無い。
ゆえに、それは魔王にとって素晴らしいオモチャとなった。
彼の愉悦は人体実験にまで及んだ。
彼の心に罪悪感は無かった。さらなる力を、それしか無かった。
だが、魂を扱う術は魔王だけの特別では無い。
魔王よりもはるか高みに至っている者もいる。
◆◆◆
「全軍、退却!」
「全軍、突撃!」
真逆の号令が雪原に響き渡る。
逃げる者達と追う者達がぶつかり合いながら城下街を目指す。
「……」
その様子を、サイラスは肩で息をしながら眺めていた。
「「……」」
隣にいるフレディと大男も同じであった。
何度かの荒い呼吸の後、サイラスが口を開いた。
「……少し、休んだら、我等も行くぞ」
これにフレディと大男は頷きを返した。
「「「……」」」
三人揃って、その場にしゃがんでしまいたい欲求を堪えながら息を整える。
そうしているうちに大事なことを思い出したサイラスは再び口を開いた。
「……ああ、そういえば、」
自分に向けられている言葉だ。それを感じ取った大男が視線を返すと、サイラスは言葉を続けた。
「お前、名前は?」
大男は答えた。
「デュラン」
「配属は?」
「運搬兵」
ただの荷物持ち、それを聞いたサイラスは迷うことなく口を開いた。
「よし、お前は今から私の下につけ。お前の部隊の隊長には後で連絡しておく」
大男が「わかった」と答えると、サイラスは足を前に出し始めた。
フレディと大男もその背後に続いた。
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