8 / 545
第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第二話 魔王軍主力戦(4)
しおりを挟む
「「「――っ!」」」
影達の悲鳴が銃声の中に掻き消え、蜂の巣になった体から血しぶきが派手に舞い散る。
そして影達は全身を赤く染めながら、鉄条網の上に寝るように倒れた。
「!」
瞬間、それを後ろから見ていたある影はひらめき、再び走り出した。
さらにそのひらめきは伝染した。他の影達も感じ取り、走り出した。
何をひらめいたのか、サイラスはそれが読み取れたゆえに、
「全員、抜剣しろ!」
叫んだ。
接近戦になるという警告を含んだ命令。
その指示が全体に伝わった直後、サイラスの感知は的中した。
次の影達は鉄条網に引っ掛からなかったのだ。
飛び越えたわけでは無い。
鉄条網の上に倒れた仲間の死体を足場にして踏み越えたのだ。
そして影達は最前に並ぶ大盾兵達に対し、
「「「破ッ!」」」
気勢と共に輝く手の平を、掌底打ちを叩き込んだ。
体重が乗っている分、光弾よりもはるかに強烈なその一撃に、
「「「っ!」」」
大盾兵の列は崩れた。
そして生じた隙間から、影達は鋭く隊列の中に飛び込み、
「疾ッ!」
大盾兵達に守られていた銃兵に対し、踏み込みの勢いを乗せた一撃を繰り出した。
「あがっ!?」
輝く爪が銃兵の胸元に突き刺さり、喉下まで突き上げられる。
噴出した血しぶきを身に纏いながら、影は次の標的へ。
陽炎を纏いながら兵士達の斬撃をかわし、輝く爪を振るう。
「ぐえっ!」「ぎゃっ!」
シャロンの部隊の各所から悲鳴が響き始める。
瞬間、その声の中に影達の心の声が混じった。
やはり、と。
こいつらは接近戦は弱い、と。
確かにそれは事実であったが、直後、
「がぁっ!?」
悲鳴の中に、影の誰かのものが混じった。
誰がやられた? と、悲鳴がした方向へ、ある影が視線を流す。
瞬間、
「!?」
その方向から突進してくるシャロンと目が合った。
そしてシャロンはその勢いのまま、
「鋭ぃっや!」
右手にある得物を突き出した。
それは兵士と同じ剣では無かった。
「刺突剣」と呼ばれる代物。
見た目はただの巨大な針。
その形状を最大限に活かした突進突きを、影は同じ速度で後退しつつ、輝く左手で左に叩き払った。
しかしシャロンの攻勢は止まらず。
体当たりするような勢いで続けて繰り出されたのは輝く左手。
掌底打ち、それはそのように思えた。
ゆえに影は同じ形で、右掌底打ちで迎え打った。
輝く双方の手の平がぶつかり合う。
瞬間、
「!」
影は目を見開いた。
ぶつかり合った両手から生じた閃光と音が、光魔法のそれでは無かったからだ。
電撃魔法特有の青白い閃光と炸裂音。
ゆえに、影は判断を誤ったことに気付いた。
魔力消費が大きくとも、ここは防御魔法を選択すべきだったのだ。
しかしその後悔が生まれるよりも早く、
「ぐぅぅっ!?」
影の体は紫電に包まれた。
シャロンの左手から網のように伸びた糸が繭(まゆ)のように影の体を包みこみ、その身に電流を流し込む。
糸の形状を取る電撃魔法ならではの攻め。
そして、その紫電によって相手の動きを完全に封じたことを、悲鳴を漏らすことすら出来なくなったのを確認したシャロンは、
「――っ!」
とどめという形でその苦しみを終わらせてやった。
が、直後、
「蛇ッ!」
その隙を背後から別の影が奇襲した。
気勢の文字通り、蛇のような緩い弧を描く一撃。
だがシャロンは感じ取れていた。この奇襲を予想出来ていた。
ゆえに、シャロンは刺した得物を抜くと同時に振り返り、その勢いを乗せた回転の一撃を放った。
しかし影もただ者では無かった。
影もこの迎撃を読めていた。自分の奇襲が間に合わないことを計算出来ていた。
ゆえに踏み込みは浅め。
なぜなら、それは普通の迎撃では無いからだ。
針に糸が纏わり付いている。
ゆえに影は蛇の型を選んだのだ。
光る糸を纏った針と、輝く牙を持つ蛇がぶつかり合う。
蛇の牙が糸を切り裂き、切断部から青白い火花が散る。
弧を描く蛇の型を選んだのはこのため。
電撃魔法の糸を切断しながら引きちぎるため。さらに針とのぶつかり合いで不利にならないようにするためだ。
そして、爪と針本体との衝突により生じた赤い火花が先の青色と混ざり合い、それは美しい花火となって二人を照らした。
金属の衝突音と共に、二人の体が硬直する。
このぶつかり合いは五分、影はそう思った。
が、瞬間、
(いいえ、あなたが不利よ)
と、シャロンの声が影の心に響いた。
「!?」
直後、その理由が影の目に映った。
切断し、引きちぎった糸が瞬く間に伸び、再生したのだ。
切っても意味が無い?! そう判断した影は焦りと共に後方に地を蹴った。
(逃がさない)
その声と共に、シャロンが突きを繰り出す。
その一撃を背をそらして回避する影。
が、
「!」
瞬間、針にまとわりついていた糸がほどけ、網となって影に襲い掛かった。
これに対し、この影は判断を誤らなかった。
防御魔法を最大に展開して網を防ぐ。
しかし、
「っ!?」
網はさらに、防御魔法ごと飲み込む勢いで広がった。
避けるためにさらに後方に地を蹴る影。
だが、もう後が無い。
後ろでは影の逃げ道を塞ぐように、三人の兵士が剣を構えていた。
そして三人は近づいてくる影の背中に向かって、
「「「ぅ雄ぉっ!」」」
同時に三本の剣を突き出した。
影達の悲鳴が銃声の中に掻き消え、蜂の巣になった体から血しぶきが派手に舞い散る。
そして影達は全身を赤く染めながら、鉄条網の上に寝るように倒れた。
「!」
瞬間、それを後ろから見ていたある影はひらめき、再び走り出した。
さらにそのひらめきは伝染した。他の影達も感じ取り、走り出した。
何をひらめいたのか、サイラスはそれが読み取れたゆえに、
「全員、抜剣しろ!」
叫んだ。
接近戦になるという警告を含んだ命令。
その指示が全体に伝わった直後、サイラスの感知は的中した。
次の影達は鉄条網に引っ掛からなかったのだ。
飛び越えたわけでは無い。
鉄条網の上に倒れた仲間の死体を足場にして踏み越えたのだ。
そして影達は最前に並ぶ大盾兵達に対し、
「「「破ッ!」」」
気勢と共に輝く手の平を、掌底打ちを叩き込んだ。
体重が乗っている分、光弾よりもはるかに強烈なその一撃に、
「「「っ!」」」
大盾兵の列は崩れた。
そして生じた隙間から、影達は鋭く隊列の中に飛び込み、
「疾ッ!」
大盾兵達に守られていた銃兵に対し、踏み込みの勢いを乗せた一撃を繰り出した。
「あがっ!?」
輝く爪が銃兵の胸元に突き刺さり、喉下まで突き上げられる。
噴出した血しぶきを身に纏いながら、影は次の標的へ。
陽炎を纏いながら兵士達の斬撃をかわし、輝く爪を振るう。
「ぐえっ!」「ぎゃっ!」
シャロンの部隊の各所から悲鳴が響き始める。
瞬間、その声の中に影達の心の声が混じった。
やはり、と。
こいつらは接近戦は弱い、と。
確かにそれは事実であったが、直後、
「がぁっ!?」
悲鳴の中に、影の誰かのものが混じった。
誰がやられた? と、悲鳴がした方向へ、ある影が視線を流す。
瞬間、
「!?」
その方向から突進してくるシャロンと目が合った。
そしてシャロンはその勢いのまま、
「鋭ぃっや!」
右手にある得物を突き出した。
それは兵士と同じ剣では無かった。
「刺突剣」と呼ばれる代物。
見た目はただの巨大な針。
その形状を最大限に活かした突進突きを、影は同じ速度で後退しつつ、輝く左手で左に叩き払った。
しかしシャロンの攻勢は止まらず。
体当たりするような勢いで続けて繰り出されたのは輝く左手。
掌底打ち、それはそのように思えた。
ゆえに影は同じ形で、右掌底打ちで迎え打った。
輝く双方の手の平がぶつかり合う。
瞬間、
「!」
影は目を見開いた。
ぶつかり合った両手から生じた閃光と音が、光魔法のそれでは無かったからだ。
電撃魔法特有の青白い閃光と炸裂音。
ゆえに、影は判断を誤ったことに気付いた。
魔力消費が大きくとも、ここは防御魔法を選択すべきだったのだ。
しかしその後悔が生まれるよりも早く、
「ぐぅぅっ!?」
影の体は紫電に包まれた。
シャロンの左手から網のように伸びた糸が繭(まゆ)のように影の体を包みこみ、その身に電流を流し込む。
糸の形状を取る電撃魔法ならではの攻め。
そして、その紫電によって相手の動きを完全に封じたことを、悲鳴を漏らすことすら出来なくなったのを確認したシャロンは、
「――っ!」
とどめという形でその苦しみを終わらせてやった。
が、直後、
「蛇ッ!」
その隙を背後から別の影が奇襲した。
気勢の文字通り、蛇のような緩い弧を描く一撃。
だがシャロンは感じ取れていた。この奇襲を予想出来ていた。
ゆえに、シャロンは刺した得物を抜くと同時に振り返り、その勢いを乗せた回転の一撃を放った。
しかし影もただ者では無かった。
影もこの迎撃を読めていた。自分の奇襲が間に合わないことを計算出来ていた。
ゆえに踏み込みは浅め。
なぜなら、それは普通の迎撃では無いからだ。
針に糸が纏わり付いている。
ゆえに影は蛇の型を選んだのだ。
光る糸を纏った針と、輝く牙を持つ蛇がぶつかり合う。
蛇の牙が糸を切り裂き、切断部から青白い火花が散る。
弧を描く蛇の型を選んだのはこのため。
電撃魔法の糸を切断しながら引きちぎるため。さらに針とのぶつかり合いで不利にならないようにするためだ。
そして、爪と針本体との衝突により生じた赤い火花が先の青色と混ざり合い、それは美しい花火となって二人を照らした。
金属の衝突音と共に、二人の体が硬直する。
このぶつかり合いは五分、影はそう思った。
が、瞬間、
(いいえ、あなたが不利よ)
と、シャロンの声が影の心に響いた。
「!?」
直後、その理由が影の目に映った。
切断し、引きちぎった糸が瞬く間に伸び、再生したのだ。
切っても意味が無い?! そう判断した影は焦りと共に後方に地を蹴った。
(逃がさない)
その声と共に、シャロンが突きを繰り出す。
その一撃を背をそらして回避する影。
が、
「!」
瞬間、針にまとわりついていた糸がほどけ、網となって影に襲い掛かった。
これに対し、この影は判断を誤らなかった。
防御魔法を最大に展開して網を防ぐ。
しかし、
「っ!?」
網はさらに、防御魔法ごと飲み込む勢いで広がった。
避けるためにさらに後方に地を蹴る影。
だが、もう後が無い。
後ろでは影の逃げ道を塞ぐように、三人の兵士が剣を構えていた。
そして三人は近づいてくる影の背中に向かって、
「「「ぅ雄ぉっ!」」」
同時に三本の剣を突き出した。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
月額ダンジョン~才能ナシからの最強~
山椒
ファンタジー
世界各地にダンジョンが出現して約三年。ダンジョンに一歩入ればステータスが与えられ冒険者の資格を与えられる。
だがその中にも能力を与えられる人がいた。与えられたものを才能アリと称され、何も与えられなかったものを才能ナシと呼ばれていた。
才能ナシでレベルアップのために必要な経験値すら膨大な男が飽きずに千体目のスライムを倒したことでダンジョン都市のカギを手に入れた。
面白いことが好きな男とダンジョン都市のシステムが噛み合ったことで最強になるお話。
ゾンビパウダー
ろぶすた
ファンタジー
【第一部】
研究員である東雲は死別により参ってしまった人達の精神的な療養のために常世から幽世に一時的に臨死体験を行える新薬【ゾンビパウダー】の開発を行なった。
東雲達は幽世の世界を旅するがさまざまな問題に直面していく。
神々の思惑が蠢くこの世界、東雲達はどう切り抜けていくのか。
【第二部】
東雲が考えていた本来のその目的とは別の目的で【ゾンビパウダー】は利用され始め、常世と幽世の双方の思惑が動き出し、神々の陰謀に巻き込まれていく…。
※一部のみカクヨムにも投稿
次は幸せな結婚が出来るかな?
キルア犬
ファンタジー
バレンド王国の第2王女に転生していた相川絵美は5歳の時に毒を盛られ、死にかけたことで前世を思い出した。
だが、、今度は良い男をついでに魔法の世界だから魔法もと考えたのだが、、、解放の日に鑑定した結果は使い勝手が良くない威力だった。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
【完結】虚無の王
邦幸恵紀
キャラ文芸
【現代ファンタジー/クトゥルー神話/這い寄る混沌×大学生】
大学生・沼田恭司は、ラヴクラフト以外の人間によって歪められた今の「クトゥルー神話」を正し、自分たちを自由に動けるようにしろと「クトゥルー神話」中の邪神の一柱ナイアーラトテップに迫られる。しかし、それはあくまで建前だった。
◆『偽神伝』のパラレルです。そのため、内容がかなり被っています。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる