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Ep5 コモリガミ様の章(4)
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瞬間、
「……っ!」
友人の顔はさらなる焦りの色に染まった。
なぜか。その理由となる友人の言葉をあなたは思い出した。
“地方にはこの手の話を本気で信じていて、神経質な人がいるから気をつけろよ?”
だから、あなたはオーナーの顔色をうかがった。
が、
「……」
オーナーの表情や様子に変化は無かった。
何も言わず、しゃがんでちり取りを構えている。
数秒後、オーナーはようやく友人のほうきが動かなくなったことに気付き、その理由も先ほどの音から同時に察した。
そしてオーナーは立ち上がり始めた。
やっぱり怒られるのか?! そう思ったあなたと友人が心の中で身構える。
が、恐れていたようなことにはならなかった。
「ああ、神棚のことなら気にしてませんよ!」
言いながら、オーナーは神棚を見上げた。
その視線の動きに、あなたの目も釣られた。
見ると、神棚の扉は少し開いてしまっていた。
そしてあなたはその中の壁に妙な染みがついているのを見つけた。
その染みの色は赤黒く、まるで――
「少し扉が開いてしまってますね!」
あなたはそれを心の中で言葉にしようとしたが、その思考はオーナーが放った妙に大きな声によって中断された。
そしてオーナーは立ち上がった時とはまったく違う機敏な動きで手を伸ばし、神棚の扉を閉め、
「でもこれくらいなら大丈夫! コモリガミ様もきっと気にしていませんよ!」
勝手に神の言葉を代弁した。
オーナーは無茶苦茶言っていることに自分自身気付いていた。
しかしそれでもオーナーは口を止めなかった。止められなかった。あれを見られたかもしれないという不安を誤魔化すために。
「そんなことよりも、お二人とも早く食堂へどうぞ!」
え、でもそれは、と、友人は責任感を示そうとしたが、
「早くしないと冷めてしまいますよ! ここは私がやっておきますので、ご安心を!」
オーナーはそう言いながらあなたと友人の肩を掴み、やや強引に食堂のほうへ引っ張り始めた。
意地でも逆らう理由は無かったため、あなたと友人はその強引さを奇妙に思いつつも、素直に従った。
「……っ!」
友人の顔はさらなる焦りの色に染まった。
なぜか。その理由となる友人の言葉をあなたは思い出した。
“地方にはこの手の話を本気で信じていて、神経質な人がいるから気をつけろよ?”
だから、あなたはオーナーの顔色をうかがった。
が、
「……」
オーナーの表情や様子に変化は無かった。
何も言わず、しゃがんでちり取りを構えている。
数秒後、オーナーはようやく友人のほうきが動かなくなったことに気付き、その理由も先ほどの音から同時に察した。
そしてオーナーは立ち上がり始めた。
やっぱり怒られるのか?! そう思ったあなたと友人が心の中で身構える。
が、恐れていたようなことにはならなかった。
「ああ、神棚のことなら気にしてませんよ!」
言いながら、オーナーは神棚を見上げた。
その視線の動きに、あなたの目も釣られた。
見ると、神棚の扉は少し開いてしまっていた。
そしてあなたはその中の壁に妙な染みがついているのを見つけた。
その染みの色は赤黒く、まるで――
「少し扉が開いてしまってますね!」
あなたはそれを心の中で言葉にしようとしたが、その思考はオーナーが放った妙に大きな声によって中断された。
そしてオーナーは立ち上がった時とはまったく違う機敏な動きで手を伸ばし、神棚の扉を閉め、
「でもこれくらいなら大丈夫! コモリガミ様もきっと気にしていませんよ!」
勝手に神の言葉を代弁した。
オーナーは無茶苦茶言っていることに自分自身気付いていた。
しかしそれでもオーナーは口を止めなかった。止められなかった。あれを見られたかもしれないという不安を誤魔化すために。
「そんなことよりも、お二人とも早く食堂へどうぞ!」
え、でもそれは、と、友人は責任感を示そうとしたが、
「早くしないと冷めてしまいますよ! ここは私がやっておきますので、ご安心を!」
オーナーはそう言いながらあなたと友人の肩を掴み、やや強引に食堂のほうへ引っ張り始めた。
意地でも逆らう理由は無かったため、あなたと友人はその強引さを奇妙に思いつつも、素直に従った。
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