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Ep5 コモリガミ様の章(1)
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◆◆◆
コモリガミ様の章
◆◆◆
「あ、しまった」
何がどうしたのと、あなたが尋ねると、友人は答えた。
「お菓子買ってくるの忘れてた」
別にいらないけど? とあなたが答えると、友人は少し迷う素振りを見せた。
だからあなたはもう一言付け加えた。
この寒いのに、そこまでしなくてもよくない? と。
その言葉で友人は考えを改めた。
「それもそうだな。たしかにめんどくさいな」
そう言って友人はソファーに座り直した。
「じゃあ、どの映画にする?」
あなたが好みのものを選ぶと、友人もそれでいいと答えた。
既に観た事がある映画だが、それでも好きな映画だ。退屈はしないだろう。
派手なオープニングと共にプロローグが流れ、本編が始まる。
うろ覚えの記憶が映像と共に繋がっていく。
ゆえに興奮は無い。
だからあなたは口が寂しいなと思った。
友人にあんなことを言っておいて勝手なものだ。
だが、なにか口に入れるものがあれば、この欠けた興奮の隙間を埋めることができるかもしれないなと、あなたは思った。
そしてその望みは直後に叶った。
「お待たせしました」
オーナーが飲み物を持ってきてくれたのだ。
運ばれてきたトレイの上から、あなたは注文していたものを手に取り、口をつけた。
よく知っている味が口内に染み広がる。
その感覚は欠けた隙間を確実に満たしていった。
それは友人も同じようであった。
友人はその感覚により深く浸りたいと思ったのか、だらしなくソファの上に横になった。
ちょっとちょっと、さすがにそれは気を抜きすぎじゃない? と、あなたがそのだらしなさを指摘すると、友人はふてぶてしく答えた。
「大丈夫だって」
何が大丈夫なのかさっぱりわからなかったあなたは、そのままだと確実に寝てしまうと、至極まっとうな指摘をしたが、これも友人には通じなかった。
「夕食の時間になったら起こしてくれるって。だから寝ても大丈夫。というより寝たい。眠い」
だったら部屋のベッドで横になったほうがいいんじゃ? と、あなたは再び至極まっとうな指摘をしたが、やはり友人には通じなかった。
「いいや、今はソファーがいい。そんな気分なんだ」
ああ言えばこう言う状態だ。まったく意味の無いやり取りになってきている。
だからあなたは会話をやめ、友人と同じように横になった。
実際試してみると、それは案外心地良いものだった。
これは確実に寝ちゃうなあと、あなたは思った。
まぶたが重くなり始めたのを感じながら、いつしかあなたはその眠気に抗うのをやめた。
コモリガミ様の章
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「あ、しまった」
何がどうしたのと、あなたが尋ねると、友人は答えた。
「お菓子買ってくるの忘れてた」
別にいらないけど? とあなたが答えると、友人は少し迷う素振りを見せた。
だからあなたはもう一言付け加えた。
この寒いのに、そこまでしなくてもよくない? と。
その言葉で友人は考えを改めた。
「それもそうだな。たしかにめんどくさいな」
そう言って友人はソファーに座り直した。
「じゃあ、どの映画にする?」
あなたが好みのものを選ぶと、友人もそれでいいと答えた。
既に観た事がある映画だが、それでも好きな映画だ。退屈はしないだろう。
派手なオープニングと共にプロローグが流れ、本編が始まる。
うろ覚えの記憶が映像と共に繋がっていく。
ゆえに興奮は無い。
だからあなたは口が寂しいなと思った。
友人にあんなことを言っておいて勝手なものだ。
だが、なにか口に入れるものがあれば、この欠けた興奮の隙間を埋めることができるかもしれないなと、あなたは思った。
そしてその望みは直後に叶った。
「お待たせしました」
オーナーが飲み物を持ってきてくれたのだ。
運ばれてきたトレイの上から、あなたは注文していたものを手に取り、口をつけた。
よく知っている味が口内に染み広がる。
その感覚は欠けた隙間を確実に満たしていった。
それは友人も同じようであった。
友人はその感覚により深く浸りたいと思ったのか、だらしなくソファの上に横になった。
ちょっとちょっと、さすがにそれは気を抜きすぎじゃない? と、あなたがそのだらしなさを指摘すると、友人はふてぶてしく答えた。
「大丈夫だって」
何が大丈夫なのかさっぱりわからなかったあなたは、そのままだと確実に寝てしまうと、至極まっとうな指摘をしたが、これも友人には通じなかった。
「夕食の時間になったら起こしてくれるって。だから寝ても大丈夫。というより寝たい。眠い」
だったら部屋のベッドで横になったほうがいいんじゃ? と、あなたは再び至極まっとうな指摘をしたが、やはり友人には通じなかった。
「いいや、今はソファーがいい。そんな気分なんだ」
ああ言えばこう言う状態だ。まったく意味の無いやり取りになってきている。
だからあなたは会話をやめ、友人と同じように横になった。
実際試してみると、それは案外心地良いものだった。
これは確実に寝ちゃうなあと、あなたは思った。
まぶたが重くなり始めたのを感じながら、いつしかあなたはその眠気に抗うのをやめた。
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