雪山のペンションで、あなたひとり

Ep2 友人とオーナーの章(4)

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（くそ！）

　車でペンションに戻ってきたオーナーは心の中で悪態を吐いた。
　友人を逃がしてしまったことに対する焦りがオーナーの心の中で煮えたぎっていた。
　しかしこれ以上の追跡は無理だ。日は完全に沈んでおり、しかも吹雪いている。こんな状況で山をうろついたら確実に遭難してしまう。
　そうだ、遭難してしまう。だからあいつは助からない、そうに違いない、オーナーはそう思い込むことで自分を落ち着けようとした。
　しかし出来なかった。
　なぜならもう一人いるからだ。
　夕食の時間はとっくに過ぎている。
　警察に捜索の連絡を入れられていてもおかしくない。
　ならば、ペンションには入らず、このまま山を降りて逃げるべきなのではないだろうか？
　そしてその跡は警察の手から逃げ続ける逃亡生活が始まるのだろう。
　それは間違いなく、クソみたいな生活だ。

「……っ」

　ゆえに思わず、オーナーはハンドルに頭突きをかました。
　しかし得られたのは痛みだけ。
　その痛みがさらなる苛立ちを生んだだけだった。
　その苛立ちはオーナーが過去に経験した様々な苦い記憶と結びついた。
　だから呪った。
　どうして自分の人生はこうなんだ、と。
　どうして肝心な時にツキに見放されるんだ、と。
　あの時もそうだった。
　あの時も、そしてあの女も！

（くそ！）

　そしてオーナーは再び心の中で悪態を叫びながら、車を殴った。
　しかし今度は痛いだけでは無かった。
　激しく怒り、そして放出したからか、オーナーの心は平静さを取り戻し始めた。
　そしてクリアになった思考でオーナーは一つの答えを出した。

（とりあえず、ペンションの中の様子をうかがってみよう。結論を出すのはそれからでもいい）