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Ep2 友人とオーナーの章(2)
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「……」
しばらく車に揺られてから、友人は後悔し始めた。
二人の間に会話が無いからだけでは無い。
思っていたより遠いのだ。
かなり奥まで来ている。既に山を一つ越えたような気がする。
もう何分経った? それを確認するために友人は携帯をポケットから出した。
見ると、出発から既に二十分が経過していた。
これは帰りが遅くなりそうだ、そう思った友人はあなたに一言入れておこうと、携帯を操作した。
だがその指はすぐに止まった。
圏外だからだ。
あなたを心配させるかもしれない、そう思った友人は少し憂鬱になった。
そしてその感情は直後に友人の口から漏れた。
「けっこう遠いんですね。まだですか?」
それは遠まわしの非難であった。
こんなに遠いのなら事前に言っておいてほしかったという文句。
だが、直後に帰ってきたオーナーの答えは、その非難に対しての謝罪では無かった。
「もうすぐそこです。着きましたよ」
その言葉は本当だった。
前方には伐採場らしき施設があった。
オーナーはその敷地に入ったすぐのところで車を止めた。
二人同時に車を降りる。
見ると、その伐採場はあまり使われていないようであった。
伐採された木が積み上げられているが、かなり長く放置されているように見えた。
「すみませんがあれを車のところまで運ぶのを手伝ってください」
あれ、その言葉が指すものをオーナーの目線を追って確認すると、そこには積み上げられた薪の山があった。
思ったとおり重そうだ。
再び憂鬱になりながらその薪の山のほうへと足を進める。
そして友人は歩きながら、ふと沸いた疑問を後ろにいるオーナーに尋ねた。
「何本くらい必要なんです?」
そして背中越しに返ってきた答えはさらに憂鬱なものだった。
「とりあえず持てるだけ運んでください!」
来るんじゃなかった、友人はそう思った。
来るにしても、あなたも一緒に連れてくるべきだったと、友人は思った。
それは正解であることが直後に証明された。
友人の真後ろで、オーナーが斧を振り上げたからだ。
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