上 下
23 / 55

Ep2 友人とオーナーの章(2)

しおりを挟む

   ◆◆◆

「……」

 しばらく車に揺られてから、友人は後悔し始めた。
 二人の間に会話が無いからだけでは無い。
 思っていたより遠いのだ。
 かなり奥まで来ている。既に山を一つ越えたような気がする。
 もう何分経った? それを確認するために友人は携帯をポケットから出した。
 見ると、出発から既に二十分が経過していた。
 これは帰りが遅くなりそうだ、そう思った友人はあなたに一言入れておこうと、携帯を操作した。
 だがその指はすぐに止まった。
 圏外だからだ。
 あなたを心配させるかもしれない、そう思った友人は少し憂鬱になった。
 そしてその感情は直後に友人の口から漏れた。

「けっこう遠いんですね。まだですか?」

 それは遠まわしの非難であった。
 こんなに遠いのなら事前に言っておいてほしかったという文句。
 だが、直後に帰ってきたオーナーの答えは、その非難に対しての謝罪では無かった。

「もうすぐそこです。着きましたよ」

 その言葉は本当だった。
 前方には伐採場らしき施設があった。
 オーナーはその敷地に入ったすぐのところで車を止めた。
 二人同時に車を降りる。
 見ると、その伐採場はあまり使われていないようであった。
 伐採された木が積み上げられているが、かなり長く放置されているように見えた。

「すみませんがあれを車のところまで運ぶのを手伝ってください」

 あれ、その言葉が指すものをオーナーの目線を追って確認すると、そこには積み上げられた薪の山があった。
 思ったとおり重そうだ。
 再び憂鬱になりながらその薪の山のほうへと足を進める。
 そして友人は歩きながら、ふと沸いた疑問を後ろにいるオーナーに尋ねた。

「何本くらい必要なんです?」

 そして背中越しに返ってきた答えはさらに憂鬱なものだった。

「とりあえず持てるだけ運んでください!」

 来るんじゃなかった、友人はそう思った。
 来るにしても、あなたも一緒に連れてくるべきだったと、友人は思った。
 それは正解であることが直後に証明された。
 友人の真後ろで、オーナーが斧を振り上げたからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

呪詛人形

斉木 京
ホラー
大学生のユウコは意中のタイチに近づくため、親友のミナに仲を取り持つように頼んだ。 だが皮肉にも、その事でタイチとミナは付き合う事になってしまう。 逆恨みしたユウコはインターネットのあるサイトで、贈った相手を確実に破滅させるという人形を偶然見つける。 ユウコは人形を購入し、ミナに送り付けるが・・・

狙われた女

ツヨシ
ホラー
私は誰かに狙われている

催眠アプリを手に入れたエロガキの末路

夜光虫
ホラー
タイトルそのまんまです 微エロ注意

友達アプリ

せいら
ホラー
絶対に友達を断ってはいけない。友達に断られてはいけない。 【これは友達を作るアプリです。ダウンロードしますか?→YES NO】

Please Love Me

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ホラー
それは宇宙で愛を叫び続けていた。与え続け、求め続けていた。 そしてそれはついにヒトと出会った。 ヒトは彼女が求め続けていたものをすべて持っていた。 しかし彼女はヒトとはあまりにかけ離れた存在であった。 これはそんな彼女と一人の男から始まる物語であり、残酷であるが切ない、そんなお話である。 (宇宙を舞台にしたSFホラーです。内臓が飛び散るようなグロはありません。また、画像は配布サイトの規約に従って使用しています)

マネキンの首

ツヨシ
ホラー
どこかの会社の倉庫にマネキンがあった。

村の愛玩動物

ツヨシ
ホラー
営業で走り回っていると小さな村に着いた。

猫屋敷

ツヨシ
ホラー
私の家は猫屋敷になりました。

処理中です...