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Ep1 あなたひとりの章(19)

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 が、直後、

「?!」

 状況は再び変化した。
 それは二階からだった。
 携帯の着信音が鳴り響き始めたのだ。
 そしてそれは友人からのものだと、あなたは一瞬で判断できた。
 かけてきた相手によって着信音を変えているからだ。
 友人は無事なのか?! あなたはそう思った。
 こちらを心配して逆にかけてきてくれたのだろうか、そう思った。

「……」

 その思考が勇気になったのか、あなたは自然と移動を開始した。
 階段に足を乗せ、ゆっくりと体重をかける。
 軋みを足裏で感じる。
 だが、その音は小さい。狙い通り窓の音にまぎれてくれている。かすかに自分の耳に聞こえるほどだ。
 これならいける、そう思ったあなたは次の足を出した。

「っ!」

 瞬間、ギシリ、という音にあなたの意識は硬直した。
 先と同じようにゆっくりと体重をかけたのに、こいつは大きな音を出した。
 当たり前だ。全ての段の質が同じであるわけがない。
 だが、そう分かっていても、あなたは心の中で「もうやめてほしい」と願った。
 祈りながら次の足を出す。
 今度は成功。
 そして次の段へ、
 五段目、六段目と進んでいく。
 その進みはまるで牛歩のよう。
 二階が恐ろしく遠くに感じる。神経がすりへるのを感じる。
 それでもあなたは先の一回以外に目立った失敗をせず、登りきった。
 体が汗をかいているのを感じる。たったこれだけのことでだ。
 あなたはその汗が背中の上を流れていくのを感じながら、突きあたりにある自分の客室にゆっくりと向かった。
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