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Ep1 あなたひとりの章(14)

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   ◆◆◆

 広間に戻ってきたあなたは映画を選びなおすことにした。
 とにかく明るいもので気分を紛らわせよう、そう思った。
 ゆえに選んだのはコメディ映画だった。
 普段よりも音量を高くし、ソファーの上に体を横たえる。
 このまま眠れたらいいのにと、あなたは思った。
 そして何事も無く朝が来ればいいのに、と。
 しかし眠気が来る気配は無かった。
 ずっと窓がガタガタとうるさい、そのせいだ、そう思い込もうとしていた。
 本当は分かっていた。不気味なのだ。本当は怖いのだ。
 その恐怖のせいで映画の内容がまったく頭に入ってこない。
 だから余計なことをあなたは考えてしまった。
 この異常事態は祟りによるものなのだろうか? と。
 馬鹿な、ありえない、あなたは理性で即座に否定した。
 なぜなら、罰当たりなことをしたのは目覚めたあとだからだ。
 だからこの異常事態は関係無い。
 そのはずだ。
 そう、そのはずだ。
 あなたはその言葉を何度も心の中で唱えた。
 自分を落ち着かせるために。
 そしてそれは効果を発揮した。

「……」

 ため息に見せかけた深呼吸でさらに気を紛らわせる。
 が、直後、

「!」

 耳に届いた異変の音に、あなたはソファーから跳ね起きた。
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