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Ep1 あなたひとりの章(7)
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どうせやんわりと断られるに決まってる、そんな思いであなたは友人と一緒に部屋を出た。
ゆえに足取りは重い。めんどくさい。
それに少し恥ずかしい。非常識だ。変な人だと思われる可能性がある。
オーナーやもう一組の客とは二度と会うことは無いかもしれない。しかしそれでも避けられる恥は避けたかった。
しかし友人の心の中にはそんな気持ちは微塵も無いようであった。
軽快な足取りで廊下を渡り、階段を下りていく。
あなたは対照的に重い足取りのまま、階段に足を下ろした。
気のせいか、先よりも軋みの音が大きくなっているような気がする。
そしてあなたの足の動きが緩慢であるゆえに、それは余計に目に付いた。
吹き抜けであるためにどうしても視界に入る。
だからあなたは独り言を呟くように言った。
それにしても、立派な神棚だなあ、と。
その呟きに対し、先に階段を降りた友人はあなたを見上げながら口を開いた。
「これはコモリガミ様をまつっているものだな」
コモリガミ様? 興味を抱いたあなたが尋ねると、友人は答えた。
「留守番している人を守る神様だよ。コモリっていうのは子供のお守り(おもり)っていうほうじゃなくて、引き篭もりっていう意味のほうだ」
テーブルの上に映画のケースを置きながらそう言う友人に対し、聞いた事無い神様だなあ、という素直な感想を述べると、友人はそれは当然だという理由を述べた。
「この神様は特定地域だけで信仰されている、いわゆる土地神というやつだからな。違う地方の人間は知らなくて当たり前さ」
神棚を見上げながらそう説明する友人の隣に立ちながら、あなたは「ふうん、そうなんだ」という味気無い感想を返した。
それが少し気に入らなかったのか、友人はあなたの興味を煽るためだけに、話す必要の無いことを喋り始めた。
「でもな、実はこの神様はちょっとした『いわく付き』なんだよ」
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