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第八話 修行の成果(3)

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 ケーキの飾りつけ、それは単純に楽しそうな響きであった。
 だから俺が「もちろんいいよ」と答えると、彼女は冷蔵庫を指差しながら口を開いた。

「じゃあ、冷蔵庫に寝かせてあるやつがあるから、出してきて」

 ああ、昨日から入れてあるアレがやっぱりそうなのかと、頷きながら俺はそれを取り出した。
 それはチーズケーキに似たホールケーキだった。
 チーズケーキの類なのは間違い無いが、なんか焼いた感がすごい。よく知ってるチーズケーキのようにつやつやでしっとりしてない。
 あとで知ったことだが、それはベイクドチーズケーキというやつだった。
 それを俺が持ってくると、彼女は再び指差しながら口を開いた。

「生クリームもカットフルーツもそこにあるから、好きに飾り付けて」

 その言葉に俺はちょっと緊張した。
 好きに、という部分に反応してしまったのだ。
 まるで自分のセンスをテストされているような感じになってしまう。
 だが、そんな緊張はすぐに消えた。
 彼女相手に緊張する必要など無いからだ。
 自分がおいしそうと感じられるようにやろう、俺はそう思って生クリームから手に取った。
 チューブに入ったそれを搾り出して、ケーキ屋に並んでいるホールケーキと同じようにデコレーションしていく。
 ……ちょっと左右の対象性が微妙な感じだが、まあこんなものだろう。
 俺は気を取り直してフルーツの盛り付けにかかった。
 イチゴを中央に置き、その周囲にキウイとバナナを散りばめ、端っこにオレンジを並べていく。
 ……その作業はキレイに終わったが、半分近いフルーツがあまってしまった。
 どうしようか。さらに上に重ねるのはちょっとなあ。食べにくくなるような気がする。

(! あ、そうだ)

 しかし俺はすぐにひらめいた。
 喫茶店で彼女がケーキを頼んだ時に出てきたアレを真似すればいいんだと、俺は気付いた。
 ホールケーキの周囲に、ケーキを囲むように皿の上にフルーツを並べていく。
 喫茶店のやつはこの上になにかのソースがかけられていたが、この場にそれは無い。
 やっぱりちょっと見た目がさみしいかなあ、そう思った俺は皿の上のフルーツもクリームでデコレーションしていった。
 これは正解だった。
 甘そうな印象が強くなったが、間違いなく見た目は良くなった。
 だから俺は自信満々に、

「できたよ」

 と、彼女に見せた。
 彼女は俺が期待した答えを返してくれた。

「いい感じだね」

 そして彼女は料理を盛り付けた皿を俺に向かって差し出しながら再び口を開いた。

「じゃあ、これをテーブルに置いて待ってて」
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