40 / 48
第八話 修行の成果(3)
しおりを挟む
ケーキの飾りつけ、それは単純に楽しそうな響きであった。
だから俺が「もちろんいいよ」と答えると、彼女は冷蔵庫を指差しながら口を開いた。
「じゃあ、冷蔵庫に寝かせてあるやつがあるから、出してきて」
ああ、昨日から入れてあるアレがやっぱりそうなのかと、頷きながら俺はそれを取り出した。
それはチーズケーキに似たホールケーキだった。
チーズケーキの類なのは間違い無いが、なんか焼いた感がすごい。よく知ってるチーズケーキのようにつやつやでしっとりしてない。
あとで知ったことだが、それはベイクドチーズケーキというやつだった。
それを俺が持ってくると、彼女は再び指差しながら口を開いた。
「生クリームもカットフルーツもそこにあるから、好きに飾り付けて」
その言葉に俺はちょっと緊張した。
好きに、という部分に反応してしまったのだ。
まるで自分のセンスをテストされているような感じになってしまう。
だが、そんな緊張はすぐに消えた。
彼女相手に緊張する必要など無いからだ。
自分がおいしそうと感じられるようにやろう、俺はそう思って生クリームから手に取った。
チューブに入ったそれを搾り出して、ケーキ屋に並んでいるホールケーキと同じようにデコレーションしていく。
……ちょっと左右の対象性が微妙な感じだが、まあこんなものだろう。
俺は気を取り直してフルーツの盛り付けにかかった。
イチゴを中央に置き、その周囲にキウイとバナナを散りばめ、端っこにオレンジを並べていく。
……その作業はキレイに終わったが、半分近いフルーツがあまってしまった。
どうしようか。さらに上に重ねるのはちょっとなあ。食べにくくなるような気がする。
(! あ、そうだ)
しかし俺はすぐにひらめいた。
喫茶店で彼女がケーキを頼んだ時に出てきたアレを真似すればいいんだと、俺は気付いた。
ホールケーキの周囲に、ケーキを囲むように皿の上にフルーツを並べていく。
喫茶店のやつはこの上になにかのソースがかけられていたが、この場にそれは無い。
やっぱりちょっと見た目がさみしいかなあ、そう思った俺は皿の上のフルーツもクリームでデコレーションしていった。
これは正解だった。
甘そうな印象が強くなったが、間違いなく見た目は良くなった。
だから俺は自信満々に、
「できたよ」
と、彼女に見せた。
彼女は俺が期待した答えを返してくれた。
「いい感じだね」
そして彼女は料理を盛り付けた皿を俺に向かって差し出しながら再び口を開いた。
「じゃあ、これをテーブルに置いて待ってて」
だから俺が「もちろんいいよ」と答えると、彼女は冷蔵庫を指差しながら口を開いた。
「じゃあ、冷蔵庫に寝かせてあるやつがあるから、出してきて」
ああ、昨日から入れてあるアレがやっぱりそうなのかと、頷きながら俺はそれを取り出した。
それはチーズケーキに似たホールケーキだった。
チーズケーキの類なのは間違い無いが、なんか焼いた感がすごい。よく知ってるチーズケーキのようにつやつやでしっとりしてない。
あとで知ったことだが、それはベイクドチーズケーキというやつだった。
それを俺が持ってくると、彼女は再び指差しながら口を開いた。
「生クリームもカットフルーツもそこにあるから、好きに飾り付けて」
その言葉に俺はちょっと緊張した。
好きに、という部分に反応してしまったのだ。
まるで自分のセンスをテストされているような感じになってしまう。
だが、そんな緊張はすぐに消えた。
彼女相手に緊張する必要など無いからだ。
自分がおいしそうと感じられるようにやろう、俺はそう思って生クリームから手に取った。
チューブに入ったそれを搾り出して、ケーキ屋に並んでいるホールケーキと同じようにデコレーションしていく。
……ちょっと左右の対象性が微妙な感じだが、まあこんなものだろう。
俺は気を取り直してフルーツの盛り付けにかかった。
イチゴを中央に置き、その周囲にキウイとバナナを散りばめ、端っこにオレンジを並べていく。
……その作業はキレイに終わったが、半分近いフルーツがあまってしまった。
どうしようか。さらに上に重ねるのはちょっとなあ。食べにくくなるような気がする。
(! あ、そうだ)
しかし俺はすぐにひらめいた。
喫茶店で彼女がケーキを頼んだ時に出てきたアレを真似すればいいんだと、俺は気付いた。
ホールケーキの周囲に、ケーキを囲むように皿の上にフルーツを並べていく。
喫茶店のやつはこの上になにかのソースがかけられていたが、この場にそれは無い。
やっぱりちょっと見た目がさみしいかなあ、そう思った俺は皿の上のフルーツもクリームでデコレーションしていった。
これは正解だった。
甘そうな印象が強くなったが、間違いなく見た目は良くなった。
だから俺は自信満々に、
「できたよ」
と、彼女に見せた。
彼女は俺が期待した答えを返してくれた。
「いい感じだね」
そして彼女は料理を盛り付けた皿を俺に向かって差し出しながら再び口を開いた。
「じゃあ、これをテーブルに置いて待ってて」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
Promise Ring
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。
下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。
若くして独立し、業績も上々。
しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。
なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる