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第八話 修行の成果(2)

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   ◆◆◆

 クリスマス当日、彼女は長いあいだ台所に立っていた。
 持ってきた材料の多さから気合が入っていることがわかる。

「……」

 俺はゲームをしながら料理の完成をぼーっと待っていた。
 だがゲームには飽きてしまっている。
 彼女がたてる料理の音のほうが気になるくらいだ。
 既に良いにおいもしてきている。
 だからどうしても彼女のほうに意識が引かれる。

「……」

 そして我慢できなくなった俺は彼女に気付かれないように立ち上がり、忍び足で近寄って様子をうかがった。
 こっそりつまみ食いでも、そんなつもりだった。
 我慢できないくらいお腹がすいてるわけじゃない。ただのイタズラ心だ。
 だが、完成しているものはサラダくらいしか見あたらなかった。
 じゃあしょうがない、戻ってゲームの続きでもしよう、とはならなかった。
 残念ながらイタズラ心はおさまっていなかった。
 だから俺は標的を料理から彼女に変え、

「きゃっ」

 その華奢な体をうしろから抱きしめた。

「ちょっと……もう、びっくりするからやめてよね」

 当然のように文句を言われる。
 しかし身勝手な俺は手を離そうとはしなかった。
 だがこのままだと本気で怒られかねない。
 だから俺は予防線を張ることにした。

「いいだろ? 退屈なんだ。だからきみが作業するのを近くで見ていたいんだ」

 それは、邪魔になるけど許してね、という言葉を都合よく言い換えたものであった。
 そして彼女は、

「……しょーがないなあ」

 許してくれたが、その理由は俺が期待していたものとは違った。

「あとは焼きあがりを待つとか、そんなのばっかりだからいいけど、見ていてもあんまり面白くないと思うよ?」

 ああ、なるほど。だから抱きつかれていても大して邪魔にならないと。そういうことか。
 俺はその言葉にちょっとしょんぼりした。
 しかし直後、沈み始めた俺の期待感を再び持ち上げる言葉が彼女の口から飛び出した。

「あ、ケーキの飾りつけがまだだから、それは手伝ってもらおうかな」
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