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第五話 ふたりで迎える新年(4)

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 重なっている本をどかしてその表紙を確かめてみると――

「「あ」」

 その時、『それ』を見たわたしが思わず出した声と、ちょうど戻ってきた彼の声が重なった。
『それ』は思春期の男子ならば持っていても不思議では無い、いわゆるそういう雑誌であった。
 それだけならばわたしも驚かない。
 問題はその雑誌のジャンルであった。
 それはいわゆる『お姉さんもの』であった。
 これはそういうことなのだろうかと、わたしは思った。
 しかしそれならば子供の頃にわたしのことを『お姉ちゃん』と呼んでいた理由がアレな感じになってしまう。
 いやいや、さすがにあんなちっちゃな頃にそれはないだろう。そんな目でわたしを見ていなかったはずだ。
 だがそれでも、いまの彼の趣味がこれであることには変わりない。うん、悩ましい。どうリアクションすればいいのかわからない。
 だからわたしは、

「……ええと、ゴメン」

 とりあえず謝っておき、ダンボールのふたを閉めた。
 いくら気心の知れた相手とはいえ勝手にダンボール箱を開けたのは失礼だった、そういう意味の謝罪。
 しかしその謝罪の言葉は彼の意識にちゃんと届いたのかどうか怪しかった。
 なぜなら、両手にコーラを持ったまま突っ立っているからだ。
 その硬直が言い訳を考えていたからであることは直後の言葉で判明した。

「いや、それは友達が忘れていったやつだから」

 なんで友達の忘れ物がダンボール箱の中に入ってるのよ。絶対ウソだ。
 だからわたしは、

「ふうん、そうなんだ」

 と、生返事を返しておいた。
 その生っぽさから、彼は疑われていることを感じ取ったのか、

「せっかく来たんだし、部屋でやれる遊びでもしよう。ゲームなんかどう?」

 彼は突然場を盛り上げ始めた。
 部屋でやれる遊び、そう言われて気になるのは一つしか無かった。
 だから、

「じゃあ、わたしは本でも読んでるよ」

 わたしはダンボールのふたを再び開けようとしたが、

「それはかんべんしてくれ!」

 それは許してくれなかった。
 本当にちょっと興味あるのに、とは言えなかった。

 わたし達はそんな馬鹿なやり取りをしたあと、ゲームをやって時間を潰した。
 普通に楽しかった。
 恋人同士になったからといって肩肘を張る必要は無いんだなと感じた一日だった。
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