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第三話 素直じゃないお礼(2)
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結局、わたしはその案を実行した。
「……」
だが、最後の勇気がなかなか出せなかった。
「zzz」
わたしの目の前で彼が寝息を立てている。
ここは彼の部屋。
時刻は早朝。
まだ余裕があるが、そろそろ起きないとゆとりある朝は失われてしまう。
「zzz」
しかし彼が自力で起きる気配は無かった。
朝はあいかわらず弱いようだ。
しょうがない、わたしはそう自分に言い聞かせながら、勇気を出して彼に手を伸ばした。
「朝だよ、起きて」
ゆさゆさ
「……zzz」
揺さぶってみたが起きる気配は無い。
ならばこれでどうだ。
「起きてってば!」
ゆさゆさゆさ!
「……ん~?」
そしてこれだけの労力をもってようやく、彼はぼーっとした声と共に目を覚ました。
「……あれ? なんで?」
そして彼の目覚めの第一声は、わたしがいることに対しての当然の疑問だった。
わたしはまだ眠そうな彼のその顔の目の前に、目的のものを突き出した。
「はいこれ」
「なにこれ?」
「お弁当」
「え? あ、うん、ありがとう」
「じゃあ、わたし学校行くから」
そしてわたしは足早に彼の部屋から出て行った。
いま思い返してみても、ひどいと思う。
色気がさっぱり無いことじゃ無い。
これじゃあ何のためのお弁当なのかが、さっぱり分からない。奢られたことに対してのお礼であることが彼に伝わらないからだ。
しかし残念ながら、この時のわたしは恥ずかしくてこれ以上のことは何も出来なかった。これが精一杯だったのだ。
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