上 下
9 / 48

第二話 夏だから気前よく大胆に(3)

しおりを挟む

   ◆◆◆

「え?」

 部活が休みだったある日の朝、突然家にやってきた彼が言った言葉に、わたしは思わず聞き返した。
 彼は恥ずかしがりもせずに、もう一度言った。

「遊びに行こう」

 正直困った。驚いた。
 だから、

「遊びにって……どこに?」

 わたしは時間稼ぎのような質問を返した。
 これにも彼ははっきりと、そして薄い笑みと共に答えた。

「どこでもいいよ。映画でもいいし、軽く何か食べに行くのでもいい」

 彼がそう言った直後、わたしの背後から声が響いた。

「いいじゃない。一緒になにか食べてきたら」

 それは母の声だった。
 どうやら盗み聞きしていたようだ。
 母は彼の前に姿を見せ、私の真後ろに立ちながら再び口を開いた。

「そのほうがわたしも助かるもの」

 そして母は「はいこれ」と言って、わたしの手にお金を握らせた。

「……」

 わたしは何も言えなかった。
 応援されている、それが丸分かりだったゆえに恥ずかしくなったからだ。

   ◆◆◆

 そして俺は彼女をあちこちに連れ回した。
 ゲームセンターで遊んだり、マンガ喫茶で時間を潰したり、喫茶店でケーキを食べたり、映画を見たり、とにかく色々やった。
 お金はほとんど俺が払った。
 彼女がバイトをやっていないことを知っているからだ。高校生の小遣いだけではこのような派手な遊びは難しい。それに、金目当てで付き合うような女の子じゃないことも分かっているからだ。
 だが、夏らしい遊びは、プールや海へのお誘いははっきりと断られてしまった。
 恥ずかしいからイヤ、彼女の答えはそれだけだった。
 だが、俺はあきらめなかった。
 同じ夏の遊びでも露出が低いものならば通る、その可能性に賭けることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R-18】17歳の寄り道

六楓(Clarice)
恋愛
はじめての恋とセックス。禁断の関係。 多感な時期の恋愛模様と、大人の事情、17歳たちの軌跡と、その後を描きます。 移り気で一途な、少女たちの足あと。 ◇◇◇◇◇ *R-18要素があるのでご注意ください。 *他サイト様にて、Clarice名義で掲載しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...