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第二話 夏だから気前よく大胆に(1)

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   ◆◆◆

  夏だから気前よく大胆に

   ◆◆◆

 部活に慣れた頃、俺はバイトを始めた。
 これは最初から考えていたことだ。金をかせぎまくって遊びまくる、最初はそのつもりだった。
 勢いで部活に入った時はその計画は幻に消えたかと思ったが、うちのテニス部は拘束時間が長く無く、厳しくも無かった。気軽なサークル活動に近い。バイトを理由に休むことが出来る部活だった。ゆえに土日のどちらかはフルタイムで働くことが出来た。
 そして初めての給料を得て分かったことがあった。
 大金を得ると気が大きくなるということだ。
 買おうと思えば買える、その感覚は欲しくても買えないのとは大違いだった。
 俺はその感覚を実行に移した。欲しかったゲームなどの娯楽品を買い漁った。初めての給料だから贅沢をしようと、自分を甘やかした。
 そして消化が間に合わないほどの娯楽品を手に入れた後、俺は思った。
 次の給料はどうしようか、と。
 また娯楽品につぎこむのは良くない、そんな消費の繰り返しは不毛すぎる、そう思った。
 だから俺は自分に投資することにした。
 まずは服を買った。
 中学の時は親と一緒に買い物していたから一人での買い物は新鮮だった。
 そして楽しかった。
 試着室であれやこれやと着替えるたび、新しい自分を見つけられそうな気がした。
 気に入ったものはとりあえず買った。
 買い物でストレス解消をする人の気持ちがわかってしまったような気がした。
 そして服の次にやることは決まっていた。
 それは髪。
 俺は生まれて初めての美容院に挑戦した。
 これは普通に緊張した。
 だが、店員に男性がいたことが幸いした。
 俺が初めてであることも、何を望んでいるのかまでその男性は察してくれた。
 初めて美容院にくるような男が「どんな風にします?」なんていう質問に答えられるわけが無い。
 だから店員は何も聞かず、何も言わずに全部勝手にやってくれた。
 そしてその仕事ぶりには文句のつけようが無かった。
 派手では無いが、ちょっと髪をイジったという感じ。清潔感重視だが、真面目すぎないという感じ。
 しかし、その見事な仕事には整髪料が使われていた。
 俺は整髪料なんて持ってないし、使ったことも無い。風呂から出たらそれで終わりだ。
 だが店員はそこまで分かっていた。だから難しい形にはしなかったのだ。
 店員は俺が自力で髪を整えられるように、整髪料の使い方まで教えてくれた。しかも店で使っているものまでサービスでくれた。
 その瞬間から、その店は俺のお気に入りになった(でも他の男子には教えなかったが)。

 このような自分への投資の結果、俺の見た目は変わった。
 そしてこの変化がどのような影響をもたらしたかというと――
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